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発情した北の英雄

「……あなたは……私を、助けに来てくれたの……?」


 氷の床にへたり込んだまま、青髪の女騎士が熱に浮かされたような声で俺を見上げていた。

 顔は異常なほど真っ赤で、肩でハァハァと荒い息を繰り返している。


(助けに? いや、ドロップアイテム目当てで来たらボスが勝手に自爆しただけなんだけど……)


 俺がどう誤魔化すか考えていた、その時だった。


「あぁっ……もう、だめ……っ♡」

 女騎士が突然、俺に向かって縋り付くように飛び込んできたのだ。


「うおっと!?」

 俺は咄嗟に彼女の肩を支えた。

 すごい熱だ。鎧越しでも分かるほど体が尋常じゃなく火照っており、甘い匂いが鼻を突く。

 彼女は俺の灰色のマントをギュッと掴み、顔を俺の胸元に擦り寄せてきた。


(なんだこいつ、熱でもあるのか? さっきのボスの攻撃で状態異常デバフでも食らったのか?)


 俺は怪訝に思い、真紅の左目(パッシブ:弱点看破)で彼女の体を観察した。

 すると、彼女の『下腹部』のあたりに、ソフトボール大の異常に肥大化した『赤い点(発情した瘴気のコア)』がグツグツと煮えたぎっているのが見えた。


(うわ、なんだこの赤いシミみたいなの。ここから変な熱が出てるぞ。これが原因か)

 俺は完全に『ゲームの毒ステータス』だと勘違いし、ため息をついた。


「おいおい、しっかりしろよ。……ほら、この厄介な赤いヤツ、消してやるから」


 俺は全くの無防備かつ無意識のまま、黒い手袋を外した左手を、彼女の下腹部――鎧の隙間から覗く素肌へピタリと当てた。

 そして、あの『青いスライムの魔法(生命転化)』を流し込んだ。


 ――その瞬間である。


「んひぃぃぃぃぃぃッッッッ!!?!?♡♡♡」


 病棟中に、女騎士の鼓膜を破るような、とんでもなく高い嬌声が響き渡った。


「うおっ!? なんだ!?」

 俺がビクッとして手を離そうとしたが、遅かった。


 彼女の体内を巡っていた『魅了毒フェロモン』と『暴走したマナ』が、俺の流し込んだ純度100%の『青い瘴気ミアスマ』によって一瞬で強制浄化アップグレードされたのだ。

 それは彼女の肉体にとって、致死量の快感をもたらすオーバードーズに等しかった。


「あ、あ、あああああぁぁぁぁぁっっ!! 凄いの、入ってぇぇぇっ♡」


 ビクンッ! ビクンッ! と、女騎士の体が弓なりに反り返る。

 彼女は俺の腕の中で目を白黒させ、口からだらしない涎を垂らしながら、全身をガクガクと激しく痙攣させた。


 そして。

 ――ビシャァァァッ!


 彼女の太ももから、浄化された不要なマナが『大量の透明な液体』となって激しく噴き出し、俺の灰色のマントの裾を思いっきり濡らした。


「はぁっ……あぁ……神様ぁ……♡」

 女騎士は最高にだらしない至福の笑顔を浮かべたまま、ガクッと首を垂れて完全に気絶(完全なる絶頂による失神)してしまった。


「…………え?」

 俺は、ぐったりとした女騎士を抱えたまま、完全にフリーズした。


(は!? いやいやいや! なんで気絶した!? 毒を消してやっただけだぞ!?)

 俺は大パニックに陥った。

 周囲を見渡す。そこには、氷の結界の中で凍りついている異形の化け物たちと、俺の腕の中で白目を剥いて気絶している(しかもなんか下半身がびしょ濡れの)王国トップクラスの騎士様。


(ヤバいヤバいヤバい! これ、後から王国の警備兵が来たら、絶対に俺が『騎士様を襲って気絶させた変態悪党』にされるやつだろ!!)


 俺の脳内で最悪のシナリオがマッハで再生された。

 捕まれば間違いなく死刑だ。逃げなければ。


「くそっ、とにかくここから離れるぞ!」

 俺は気絶した女騎士を、まるで米俵のようにドスッと肩に担ぎ上げた。


 窓から飛び出そうとした俺だったが、ふと、氷の中で固まっている数体の怪物たちが目に入った。


(こいつらを残しておいたら、氷が溶けた後にまた暴れ出すかもしれないな……EXPはゼロだが、面倒事は潰しておくか)


 俺は女騎士を右肩に担いだまま、左手で氷の隙間から怪物たちの頭を次々とポンポンとタッチし、『生命転化』の魔力を流し込んでいった。


 すると――。


「ひゃあぁぁんッ♡」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!♡♡」

「はあぁぁぁぁんっ!!♡♡♡」


 タッチするたびに、恐ろしい姿の怪物たちが一斉にビクンビクンと跳ね回り、地獄の亡者のような野太い声と、メスの喘ぎ声が混ざったような不気味な絶叫を上げながら溶け落ちていった。


「…………うわぁ」

 俺はドン引きして、顔を引きつらせた。


(なんなんだよこいつら……触っただけで喘ぎながら溶けるとか、どんだけ恐ろしい性癖フェティッシュしてんだよ……。マジでキモいな……)


 まさか自分が流し込んでいる魔法が原因だとは夢にも思わず、俺は怪物たちの性癖を心の中でボロクソに批判した。


「もう知らん。さっさと帰って寝よう」

 俺は深いため息をつき、極上の快感の余韻で「えへへ……♡」と肩の上でヨダレを垂らす女騎士を担いだまま、粉砕された壁の穴からアエレンデルの夜の闇へと飛び出した。


 静まり返った病棟の跡地には、ただ、ビクビクと痙攣する全裸の女性たち(元怪物)が、幸せそうな顔で大量の白濁液の海に沈んでいるという、とてつもなくカオスな光景だけが残されたのだった。


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