表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第五幕 反撃編~対四天王~後編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

205/208

第205話:黄金の奇跡

空が割れ、大地が砕ける轟音が、絶え間なく世界を揺らしている。

剥き出しになった次元の狭間から、無に還るための灰色の風が吹き荒れていた。


「……もう、受け入れるしかないのか」


黒焦げになった左腕を庇いながら、アドルは自嘲気味に呟いた。


これまで、数え切れないほどの絶望を錬金術で覆してきた。

だが、世界そのものの寿命と構造の崩壊ばかりは、どう足掻いても抗いようがない。

自分たちが良かれと思って招いてしまった、あまりにも残酷な結末。


「ミーシャ……すまなかった」

「アドルさん……」


ミーシャは静かに首を振り、残された時間を少しでも分かち合うように、アドルの右手を両手で強く握りしめた。


その傍らで、ルルは自分を包むエメラルド色のオーラに、必死に語りかけていた。


(すらたん……もう、本当に諦めるしかないなの?)



(………………)



(ん……なんで答えてくれないなの? いつも即答で『できる』『できない』って言ってくれる、すらたんなのに)



(マスター…………)



(何かあるなら言って欲しいなの。このままほっといても、世界がなくなるだけなの!)



ルルの悲痛な呼びかけに、オーラはしばらく沈黙していたが、やがて、覚悟を決めたような声が脳内に響いた。


(……わかりました。少し、時間をください)



その直後だった。

ルルの身体を覆っていたエメラルド色のオーラが突如として分離し、彼女の目の前で一つのスライムの形を形成した。

スライムはぶくぶくと形を変え、やがて一人の女性の「人型」を形作り、神々しい金色のオーラを放ち始めた。



「え、うそでしょ……このオーラは、まさか」



空中に浮かんでいたリーネが、信じられないものを見るように目を見開いた。


「この力を顕現するのは、何千年ぶりかしら」


金色のオーラを纏った女性が、艶やかな声で静かに呟く。


「なんだ……何が起こっている!?」


「アドルさん……」


アドルが驚愕の声を上げ、ミーシャはアドルの手を強く握りしめたまま、その神秘的な存在を静かに見守った。


「本当に……生きていたの? 姉さん」


リーネの震える声に、その女性――ルーネは、優しく微笑みかけた。


「あなたも私も、死んでるようなものじゃない。久しぶりね、リーネ」


「姉さん……この世界ができた直後に、消滅してしまったと思っていたわ」


「ねぇ、すらたんはどこなの?」


戸惑うルルに、ルーネは振り返って深く頭を下げた。


「マスター。すみません、ずっと正体を隠していました」


「あなたが……すらたんなの!?」


「そうですね。そこにいるリーネの姉です」


ルーネは言葉を区切り、崩壊しゆく空を見上げた。


「感動の再会をしている時間はありませんね。……少し、リーネと念話で話させてください」



ルーネの意識が、直接リーネの脳内へと繋がる。


(リーネ。世界の崩壊を止める方法、一つだけあるわよ)


(え、どういうこと? もう無理だと思っていたのだけれど……)


(まぁそうよね。私も出来れば、この手は使いたくなかった)


(どうすれば世界の崩壊が止められるの?)


(まず核となるのは……マスター。つまり、そこにいるルルよ)


(どういうことなの?)


ルーネはルルを見つめながら、真実を明かした。


(マスターを見つけた時、まさかと思ってからずっと傍で彼女を支え、近くで見続けながら解析していたわ)


(それで、何がわかったの?)


(彼女は、この世界で唯一無二なのよ。何か分かる?)


(……全然わからないわ)


(人間とエラー魔族の間に生まれたのよ。超異端児。通常ではあり得ない存在なのよ)


(!?……そういうことか!)


リーネの頭の中で、すべてのピースが繋がる。


(リーネも気づいたかしら。元々この世界は、エラーが発生し続けていた不安定な世界。でも、人間とエラー、両方を体内に宿している唯一無二の存在……それがマスターよ)


(マスターがすべてをエネルギーに変えて、且つ私とあなたが消滅覚悟でマスターに力を貸せば……人間とエラーの架け橋である彼女であれば、この世界の崩壊を繋ぎ止めることができるわ。ずっと一緒にいて見てきた。間違いないわ)


(でも、それって……!)


(そうよ。私たちはもちろんのことながら、マスターも消滅してしまう。その代わりに、世界が救える可能性が高い)


ルーネの冷徹な、しかし決意に満ちた言葉。


(私は全然いいけど、姉さんはそれでいいの?)


(私も全然いいわよ。そのためにマスターに仕えていたまであるのだから。……ただ、マスターは受け入れてくれるかしら)


(姉さん、あまり時間が無いわ。ルルに確認をとってちょうだい)


(わかったわ。気が重いけど、やるわ)



ルーネは再び、ルルへと念話を繋いだ。


(マスター、お待たせしました。聞こえますか)


(うん、聞こえてるなの)


(非常に申し上げにくいのですが、世界を救う方法が一つだけあります)


(どうしたらいいなの!? なんでもするなの!)


(……私とリーネとマスターが、すべての力を注げば、崩壊が止められるかもしれません)


(すべての力って、どう注げばいいなの?)


(ここでの『すべて』というのは、文字通りすべてなのですよ? それを実行したら……マスターも、私も、リーネも、消滅します)


絶句するほどの残酷な宣告。


だが、ルルの答えは、ルーネの予想をはるかに裏切るものだった。


(なんだ、そういうことなの。全然いいなの。早くやりましょ)


(え!?)


ルーネは驚愕した。


(そんなにあっさりと!? マスターは、それでいいんですか!?)


(私、幸せだったの。アドルさん、ミーシャさん、カミラさん、エナちゃん……みんなとワイワイしながら過ごせて。最後には探していたお父さん、お母さんにも会えた。……十分なの)


ルルの声には、微塵の後悔もなかった。


(世界を維持して、みんなが笑って暮らせる世界が保たれるのなら、私は死んでもいいなの)


(マスター……)


(時間が無いなの! どうしたらいいなの?)


ルーネは胸の奥が熱くなるのを感じながら、手順を伝えた。


(私とリーネがあなたの中に入り込み、全精力を注ぎ込みます。そしてマスターは地面に手を当て、あとは私たちの誘導に身を任せて魔力を放ち続けてください)


(わかったなの。早速やりましょ)



ルルは念話を終えると、少しだけ離れた場所にいるアドルを振り返った。


「アドルさん」


「ん?」


「あたし、世界の崩壊を止める方法、すらたんに教えて貰えたからやってみるなの」


「え、そんなことが可能なのか!?」



「可能です……」と、ルーネが静かに補足する。



「アドルさんは遠くで見ててなの! ルル、やってくる! すらたん、少し離れたところでやるなの!」



ルルはアドルの間近でそれを行う勇気はなかった。

顔を見れば、決意が揺らいでしまうかもしれないから。


彼女はアドルに背中を向け、ひび割れた大地を駆け出した。


「おいまて! ルル! それ大丈夫なのか!? 世界の崩壊は魔王でも止められなかったんだぞ!?」


「大丈夫なの! あたしだって……アドルさんの役に立つなの」


ルルは振り返らずに叫んだ。

泣きそうになるのを、必死にこらえる。

でも抑えきれず、大粒の涙が頬を伝い、泥だらけの地面に落ちた。


「おい、ルル……おまえ、まさか」


背中から伝わる異様なまでの決死の覚悟。


アドルがそれに気づき、駆け寄ろうとする。



「こないでなの!!!」



ルルの張り裂けるような叫びが、アドルを縫い留めた。


「見ててなの。あたし、いつもドジで何してもダメで……でも、そんなあたしを変な目で見ずに、仲間として受け入れてくれた。アドルさん、ミーシャさん、ありがとう。……本当に、幸せだったなの」



ルルはそう言って、大地に両手を力強く押し当てた。



瞬間、ルルの小さな身体が、太陽のような黄金の光を放ち始める。



「ルル……まて、俺はそんなやり方、望んじゃいない!」



「アドルさんはいつも優しいなの。でも、カミラさんもエナちゃんも、みんな待ってるなの。あたしはもう、十分幸せを貰ったなの!」



その時、黒焦げになったアレンが、執念で地を這いずりながらルルの傍へと辿り着いた。


「俺も……もう長くない。最後くらい、父親をさせてくれ」


アレンはそう言うと、ルルの小さな背中に自らの手を当て、残された魔王としての全精力を注ぎ込み始めた。


「姉さん、いくわよ。……アドル、世界をよろしく頼むわよ」


リーネが微笑み、光となってルルの内側へと溶け込んでいく。


「アドルさん。マスターといつも一緒でしたが、迷宮とか意外と楽しかったですよ。シルヴァにもよろしくです」


ルーネもまた、金色の光の粒子となってルルの身体へと還っていった。


三つの強大な魂と、ルルの中に眠るイザベラの力が、唯一無二の存在であるルルの内側で一つに重なり合う。



「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



ルルが限界を超えて絶叫する。

全身から放たれる眩い光の奔流が、空の亀裂を埋め、大地の傷跡を縫い合わせていく。



「…………」

「ルルちゃん!!!」


アドルは声も出せず、ミーシャは涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、その光景を魂に刻みつけていた。



「いけえええええええっ!! ディスティニーインタラクト!!!」



ルルの両手から放たれた極限のエネルギーが、世界そのものを書き換える巨大な光の柱となって天を貫いた。


「ルル……ルルーーーーーーーー!!」

「うぅぅ…………ルルちゃん……っ」

アドルが血を吐くように叫ぶ。

ミーシャの視界は、もう涙で何も見えなかった。


極光に包まれる中、ルルは最後に一度だけ、アドルとミーシャの方を振り返った。



その顔は、涙でぐしゃぐしゃだったけれど、これまでの旅の中で一番の、とびきりの笑顔だった。



パァァァァァァァァァァッ!!



全世界が、すべてを白く染め上げるほどの眩い光に包み込まれた。



その光の中で、アレン、リーネ、ルーネ、そしてルルは、微かな光の粉を残して、跡形もなく消え去った。



光が収まった後。




「……嘘だろ……」



アドルは膝から崩れ落ち、ただその場に座り込んだ。


空を切り裂いていた無数の空間の歪みは、跡形もなく消え去っている。


大地を揺らしていた地響きも完全に止み、信じられないほどの、穏やかで優しい静寂だけが、王都の平野に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ここまで読んでいただきありがとうございます! もし「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、 【ブックマーク】や【評価(★↓のポイント)】で応援していただけると、とても励みになります! 一つ一つの反応が、更新のモチベーションに直結しています。リアクションも大歓迎です! 引き続き、アドルたちの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ