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【完結済】異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第五幕 反撃編~対四天王~後編

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第200話:受け継がれる命

高台の頂上で、異次元の魔力激突が続いていた。


砕けた大地。吹き荒れる衝撃波。空気そのものが悲鳴を上げている。


その中心で、ルルは肩で息をしていた。

ボロボロだった。


身体強化はとうに限界を超え、筋肉は裂け、骨は軋み、全身が焼けるように痛む。

呼吸をするだけで肺が悲鳴を上げ、視界も何度も白く霞む。


それでも――ルルの瞳の火だけは、消えていなかった。


「おおおおおおおおっ!!」


咆哮。

ルルは最後の力を振り絞り、地面を砕きながらイザベラへと突撃した。


全身全霊の一撃。

右拳に残されたすべてを込め、ルルは一直線にイザベラへと肉薄する。


突風が吹き荒れた。



ボロボロになった服が大きく裂け、ルルの腹部が露わになる。




その瞬間だった。




イザベラの瞳が、止まった。




「――っ」




視界に飛び込んできたもの。

それは、ルルの腹部に刻まれた大きな火傷の痕だった。




イザベラの呼吸が止まる。




揺るがぬはずの魔力が、ぶれた。

冷酷な魔女の仮面が、音もなく崩れ落ちていく。

震える瞳で、イザベラはその火傷痕を見つめた。



忘れるはずがなかった。




忘れられるわけがなかった。




赤ん坊だったあの子を抱きしめながら、何度も何度も泣いた。

まだ小さな身体。

泣き叫ぶ声。

自分の不注意で負わせてしまった火傷。





「……イリーナ?」





イザベラの声が、震えた。

その瞬間。


彼女を包んでいた絶対防御の魔力が、霧のように消え去った。



ルルは知らない。

目の前の女が、何を見たのか。

何故、防御を解いたのか。

ただ、もう止まれなかった。



「はああああああああっ!!」



全力の拳が、イザベラの胸へと突き刺さる。


ドォォォォォォォォンッ!!


鈍い衝撃音。

小さな腕が、華奢な胸を深く貫いた。



そして。



静寂が訪れた。




「……え?」



ルルの口から、呆然とした声が漏れる。

確かな手応え。

なのに、おかしかった。

あれほど鉄壁だった防御が、まるで最初から存在していなかったかのように消えていた。



ぽたりと血が落ちる。

赤い雫が、ルルの腕を伝い、地面を濡らした。

イザベラの口から鮮血が溢れ、ルルの頬へ飛び散る。


ルルのオーラと同化しているすらたんが、脳内で愕然と叫んだ。


「マスター、そんな……! 計算上、あり得ません! 確率〇・〇〇一パーセント……! 何故、イザベラは防御を――」


最後まで言葉は続かなかった。

イザベラが、微笑んだからだ。


胸を貫かれながら。

苦痛に顔を歪めながら。

それでも彼女は、優しく、優しく笑っていた。

先ほどまでの冷酷な魔女ではない。



そこにいたのは――ただ、一人の母親だった。



「……大きく、なりましたね」



「……え?」



ルルの思考が止まる。

理解できない。

何を言われたのか、わからない。

混乱したまま、ルルは反射的に腕を引き抜いた。



大量の血が溢れる。



崩れ落ちそうになったイザベラは、それでも愛おしそうにルルを見つめていた。



「イリーナ……」



「な、に……?」



「私の……愛する娘……」



「――っ」



ルルの呼吸が止まった。

何を言われているのかわからない。

なのに。


胸の奥が、ぐちゃぐちゃに掻き乱される。


イザベラが震える手を伸ばす。


その血塗れの指が、そっとルルの頭を抱き寄せた。


「っ……!」


瞬間。

ルルの脳裏に、光景が弾けた。

温かい腕。

優しい匂い。

頭を撫でる柔らかな手。

眠る自分を抱きしめる声。




『イリーナ』




遠い、遠い記憶。

忘れていたはずの温もり。



「……あ……」



ルルの瞳が、大きく揺れる。



「おか……あさん……?」



ぽろり、と。

大粒の涙が零れ落ちた。



「無事で……良かった……」



イザベラは涙混じりに笑う。



「ずっと……心配して……いたの……」



「ちが……う……」



ルルが震える。



「こんなの……ちがう……」



「こんな母親で……ごめんなさいね……」



「いや……」



「でも……生きていて……くれて……良かった……」



「いや、いやなの……」



ルルは首を振る。

子供みたいに。

壊れたように。



「やだ……」



涙が止まらない。



「やだよぉ……」



ようやく理解してしまった。

自分が。

自分の手で。

母親を殺したのだと。



「おかあさん……!」



ルルが泣き崩れる。

イザベラは最期の力を振り絞り、そっと額をルルの額へ重ねた。


血の匂い。



震える吐息。



けれど、その温もりだけは、どうしようもなく優しかった。



「強く……生きるのよ……イリーナ……」



次の瞬間。

イザベラの身体が、淡い光に包まれた。

彼女が持つすべて。

膨大な魔力。

精力。

そして強大な召喚スキル。

そのすべてが、光の奔流となってルルへ流れ込んでいく。


眩い光が、高台全体を包み込む。

ルルは必死にイザベラを抱き締めた。


消えないように。

いなくならないように。



だが。



光の中で、イザベラの身体は少しずつ崩れていく。


「まって……!」


ルルが叫ぶ。


「いかないで……!」


伸ばした指先が、空を掴む。

温もりが、消えていく。



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



悲痛な絶叫が、高台に響き渡った。

やがて光が消えた時。

そこに立っていたのは、ただ一人。

泣き崩れるルルだけだった。

第二の将イザベラは、一陣の風と共に静かに消滅した。





遠く離れた場所で。

アドルとミーシャは、その光景を呆然と見つめていた。


「一体……何が起きているんだ……?」


アドルが、炭化した左腕の痛みすら忘れたように呟く。


「遠くてよく見えないわ……でも……」


ミーシャの声が震える。


「ルルが……泣いてる……」


戦場を支配していた巨大な魔力が、一つ消えた。

一万の軍勢も。

四天王も。

もはや、どこにもいない。

残るはただ一人。

王城の奥に座す、魔王アレン・クロフォードのみ。


けれど。


その場に残り続けたのは、勝利の歓声ではなかった。


ただ。

母を失った少女の、壊れるような慟哭だけだった。

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