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【完結済】異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第五幕 反撃編~対四天王~後編

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第199話:魔女と召喚士の意地

平野を揺るがした四重螺旋の閃光が、ようやく夜空から消え去った。


遅れて押し寄せた衝撃波が大地を軋ませ、焼け焦げた土砂を巻き上げる。


第一の将ヴァンダル――消滅。


その事実だけが、戦場に残された唯一の現実だった。


「ルル……!」


アドルは炭化しかけた左腕を引きずりながら、血に濡れた地面を這う。


指先が土を掴むたび、焼け爛れた神経が激痛を撒き散らした。


それでも止まれない。


隣ではミーシャが、空になった魔力回路を無理やり叩き起こそうとしていた。

だが、震える脚は一歩たりとも前へ出ない。

限界など、とうに超えている。


呼吸するだけで肺が焼ける。


それでも二人は、高台で戦う少女から目を逸らせなかった。


高台の上。

第二の将イザベラと、ルルが激突していた。

――いや。

激突、などという言葉では生温い。


そこにあったのは、絶望的なまでの“格の差”だった。


「いっけえええええええっ!!」


ルルが咆哮する。

地面が爆ぜた。

小さな身体が砲弾のように前へ弾け飛ぶ。


彼女は後方から魔法を放つタイプの召喚士ではない。


己の肉体そのものを凶器へ変える、超接近型の戦闘特化召喚士だ。


「ムーブスピード! アタックブースト!」


すらたんのオーラがルルの全身へ流れ込み、筋肉が限界以上に強制駆動される。


瞬間。

彼女の姿が掻き消えた。

次の瞬間には、イザベラの懐。


グローブへ刻み込んだ魔石スロットが激しく明滅する。


右拳に灼熱。

左拳に極寒。


相反する属性魔力が、拳の内部で限界まで圧縮され、空気そのものを悲鳴のように震わせた。


「爆炎と氷牙の、連撃なのっ!!」


轟音。


炎と氷を纏った拳が暴風のような連打となって炸裂する。


赤熱した拳圧が空気を焼き、氷撃が白い霧を撒き散らしながらイザベラへ襲い掛かった。


さらに。


ルルの背後の空間が裂ける。


漆黒の瘴気を纏った巨大な召喚陣から、デュラハンの召喚獣アーサーが出現した。


両手で構えた巨大剣が、空気を押し潰しながら振り下ろされる。


ルルの超高速ラッシュ。

アーサーの超重量斬撃。

旅の中で積み上げ続けた、完璧な連携攻撃。


普通の相手なら、それだけで肉片すら残らない。


――だが。


「ふあぁ……。退屈で欠伸が出ますわ」


イザベラは欠伸混じりに扇子で口元を隠した。

その声音には、緊張感の欠片すらない。


そして。

彼女は、もう片方の手で空間を“軽く撫でた”。

たった、それだけ。


直後。


空間そのものが歪んだ。


重い。

あまりにも重い。


目には見えない超重力が周囲一帯を押し潰し、ルルの拳も、アーサーの斬撃も、途中でぐにゃりと捻じ曲がる。


まるで粘土。

いや、飴細工だ。


圧縮された炎は弾け飛び、氷撃は砕け散り、超重量の斬撃ですら空中で押し潰され、霧のように消滅していく。


「なっ……!」


ルルの顔が凍りつく。


「まだなのっ! プロテクション最大! あたしの魔力、全部ぶち込んでやるなのっ!!」


それでも止まらない。

いや、止まれない。

ルルは歯を食いしばり、魔石属性を切り替えながら再び突っ込む。


炎。

氷。

雷。

風。


拳と蹴りを織り交ぜた超高速の波状攻撃。


押しては引き、死角へ潜り込み、空中から軌道を変え、再び殴る。


しかし。

イザベラは微笑んでいた。


冷たく。


どこまでも冷たく。



まるで子供の遊びを見るような目で、指先一つでその全てを弾き返していく。


「健気なことですけれど、本当に目障りですわね」


イザベラの笑みが、ゆっくりと深くなる。


「少しは身の程というものを教えて差し上げましょうか」


扇子が、横へ滑った。

次の瞬間。

地面が爆発した。


「きゃあああっ!?」


紫色の毒茨が無数の槍のように噴き上がり、ルルの四肢へ容赦なく叩きつけられる。


衝撃で小さな身体が宙へ跳ね上がった。


プロテクションが砕ける音。


服が裂ける音。


肉を抉る音。


血飛沫。


ルルはそのまま地面へ激突し、何度も跳ねながら転がった。


「ルルッ!!」


ミーシャが叫ぶ。

残された最後の魔力を振り絞り、光弾を放つ。

アドルも右腕だけで無理やり錬成陣を描き、イザベラの足元から土槍を生成した。


「アドルさん、私の魔力じゃ、届かない……っ!」


「くそっ……! これっぽっちの錬成じゃ、防壁すら破れないか……!」


だが。

「……鬱陶しい小虫が」


イザベラが視線を向ける。

それだけだった。


光弾は音もなく霧散し、土槍は砂へ還る。

圧倒的。


あまりにも圧倒的。

今の二人には、もう戦局を変える力など残されていなかった。


イザベラは興味を失ったようにルルから視線を外し、遠く平野を見下ろした。

そこではガラハドたちが、魔王軍残党と死闘を繰り広げている。


「ヴァンダルも死に、軍勢も手間取っているようですね」


深いため息。


「……ええい。本当に使えない駒ばかり」


彼女が空へ手をかざす。

巨大な紫の魔法陣が、夜空を覆い尽くした。

空気が腐る。

毒の臭気が平野全体へ広がっていく。


「降り注げ。死の驟雨(デッドリー・レイン)


次の瞬間。

紫の豪雨が降り注いだ。


「ぐあぁぁぁっ!?」

「上空からの広範囲魔法など……っ!」


騎士たちの絶叫が平野に響き渡る。

毒雨が鎧を溶かし、皮膚を焼き、肉を腐食させる。


ガラハドが大剣を振るい雨を弾く。


だが、防ぎ切れるはずがない。


次々と騎士たちが倒れていく。


五百。

いや、それ以上。


命が、一瞬で消えていく。


「あ……ああっ……」


ルルの瞳が震えた。

自分が止められないせいで。

自分が勝てないせいで。

仲間たちが死んでいく。

その現実が、胸を引き裂くようにルルを責め立てる。


「ふふっ。素晴らしい悲鳴ですわ」


イザベラが恍惚と笑う。


「さて、次はそのうるさい剣士ごと――」


「ふざけるな……!!」


ルルが、血を吐きながら立ち上がった。


「ふざけるななのっ!!」


その瞬間。

すらたんのオーラが激しく明滅する。


「マスター、ダメです! 魔力残量はすでにレッドゾーン! これ以上の戦闘継続は生命維持に深刻な損傷を――!」


脳内へ直接響く警告。

だがルルは止まらない。

「それに私の計算では、マスターが全生命力を代償に特攻を仕掛けたとしても、あの防壁を突破できる確率は〇・〇〇一パーセント以下――!」


冷酷な現実。

絶望的な数値。

それでも。

ルルは、唇を噛み破った。


血が滴る。


「……すらたん。あたしはバカだから、難しい計算はわかんないなの」

「マスター……」

「でも――」

ルルの拳が震える。

悔しさで。

怒りで。


守れない自分への憎しみで。


「ここで逃げたら……!」


瞳が燃え上がる。


「あいつをぶっ飛ばさなかったら……!!」


限界を超えた魔力が、彼女の全身から噴き出した。


空気が震える。


地面が軋む。


両拳へ莫大な魔力が収束し、周囲の大気すら歪ませていく。


「あたしは一生、あたしを許せないなのおおおおおおっ!!」


咆哮。


命そのものを燃料に変えながら、ルルは突撃した。


たとえこの身が砕けようとも。

たった一撃。

あの女の顔面へ、拳を叩き込むために。

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