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【完結済】異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第五幕 反撃編~対四天王~後編

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第196話:四極の死闘

アリアとレオンハルト、両陣営の象徴が倒れ伏したことで、王都城門前の平野は一時的な静寂に包まれたのも束の間、すぐに未曾有の大混戦へと突入した。


戦場は今、大きく四つの局面に分断され、それぞれが極限の死闘を繰り広げている。


王都の空は、完全に二つの色に分かたれていた。

白銀の吹雪と、紅蓮の炎。


『おおおおおっ! 燃え尽きろ、白銀!』


上空で咆哮を上げるフレイムアルティメットドラゴンが、口から太陽のような超高熱の火球を連射する。


大気が焦げ、地上の水分が一瞬で蒸発していく。


『フン、その程度の火種で我が冷気を打ち払えると思ったか!』


対するシルヴァは、巨大な白銀の竜の姿で空を舞い、絶対零度のブレスで火球を真っ向から相殺した。


炎と氷が衝突し、凄まじい水蒸気爆発が上空で連続して引き起こされる。


極端な温度差と膨大な水蒸気。


二体の伝説の竜が放つ規格外のエネルギーの衝突は、王都上空の気象そのものを急激に狂わせ始めていた。


「シルヴァの奴、派手にやっているな……」


地上の戦場を駆け抜けながら、アドルは上空で広がり始めた分厚い暗雲を見上げていた。



彼の視線の先には、一万の魔王軍の真っ只中で、たった一人で血路を切り開く男の姿がある。


「はああああっ!」


聖なる光を纏った大剣が閃き、一度の斬撃で十数人の重装魔族が宙を舞う。

剣士、ガラハドだ。


彼は一切の盾を持たない。

敵の攻撃を受けるのではなく、すべて剣で弾き、躱し、あるいは攻撃が届く前に両断する。


己の剣技と肉体のみを頼りに、怒涛の波のように押し寄せる敵兵の真っ只中で舞い続けていた。


しかし、一万という数は絶対的な暴力だ。


倒しても倒しても、黒い鎧の波は途切れることがない。

ガラハドの息は荒く、その強靭な肉体にも徐々に疲労が蓄積し始めていた。


「ガラハド! 無理に押し込むな、押し引きで時間を稼ぐと言ったはずだ!」


アドルは足元の土を隆起させて石壁を錬成し、ガラハドの死角から迫っていた槍兵たちを分断した。


「アドル殿! わかってはいるのだが、奴ら、我が主君の凶報に勢いづいており、手を止めれば騎士団の陣形が飲まれる!」


ガラハドが大剣を振り抜きながら叫ぶ。


アドルは脳内で凄まじい速度で戦局を計算していた。

ポケットの素材や足元の土を使うだけの錬成では、この一万の軍勢を足止めするには出力が足りない。

もっと広範囲で、敵の軍勢を一網打尽にするほどの巨大な環境触媒が必要だ。


アドルは再び空を見上げた。


炎と氷の竜の激突により、空は黒い雲に覆われ、湿度が異常なまでに上昇している。大気中には静電気が帯び始めていた。


(……来る。あともう少しで、俺が環境錬成で戦局をひっくり返せる『最高の素材』が完成する。それまで持ち堪えてくれ)



一方、少し離れた平野のクレーターの中心。


「はははははっ! どうした小娘、逃げ回ってばかりではないか!」


第一の将ヴァンダルが、巨大な戦斧を軽々と振り回しながら高笑いしていた。斧が地面に叩きつけられるたびに、大地震のような衝撃波が走り、周囲の岩が粉々に砕け散る。


ミーシャは空間跳躍を駆使して、その致命的な物理攻撃を間一髪で躱し続けていた。


「くっ……!」


ミーシャは息を乱しながら、瞬時に片手で術式を構築する。


「詠唱……二重螺旋!」


青い極光の柱がヴァンダルを直撃する。


だが、土煙が晴れた後、そこには筋肉を隆起させ、わずかな焦げ跡をつけただけのヴァンダルが立っていた。


「痒いな。お前の魔法は手品としては綺麗だが、俺の闘気と筋肉を貫くには少々細すぎるぞ!」


「馬鹿な……二重螺旋を、純粋な魔力防御と肉体の強度だけで耐え切るなんて……」


ヴァンダルの防御力は、ミーシャの想定を遥かに超えていた。


通常の魔法では傷一つつけられない。

リーネから授かった最大の切り札『四重螺旋』を叩き込むしかないが、それには両手で緻密な並列構築を行うため、ほんのわずかな隙が必要だった。


だが、歴戦の猛将であるヴァンダルは、巨体に似合わぬ異常な速度でミーシャに張り付き、その隙を一切与えてくれない。


(アドルさんがこっちに来るまで、私がここでアイツを抑え込まないと……!)


ミーシャは奥歯を噛み締め、決死の覚悟で再び空間跳躍を繰り返した。



そして、戦場を見下ろす高台。


ルルは、第二の将イザベラが放つ圧倒的な魔力の圧力の前に、防戦一方に追い込まれていた。


「ふふっ、どうしましたの? その程度ですか?」


イザベラの指先から、猛毒を帯びた紫の茨が幾本も這い出し、生き物のようにルルへと襲い掛かる。


「マスター、右斜め後ろへ二歩後退! 同時にプロテクションで防壁を!」


ルルを包み込むすらたんのオーラが、脳内で瞬時に最適解を計算し、警告を発する。


ルルはその指示通りにステップを踏み、黄金の壁を構築した。


だが、イザベラの茨はその風の壁を腐食させながら、易々と突き破ってきた。


「きゃあっ!」


ルルの頬を茨が掠め、赤い血が滲む。


「あらあら、痛々しい。ブリザードドラゴンを奪われたあなたなんて、ただの非力な子供ですわね。他人の力に頼るだけの、惨めで空っぽなお人形」


イザベラは扇子で口元を隠し、冷酷に目を細めた。


その言葉、その冷たい見下ろすような視線。それはルルの胸の奥深くに、理由のわからない激しい苛立ちと、どこか懐かしいような奇妙な痛みを引き起こした。


「……うるさいなの。あたしは空っぽじゃないなのっ!」


「ふふ、反抗的な目つきですわね。」


イザベラの唇の端が、歪に吊り上がる。


彼女の背後で、さらに巨大な紫の魔方陣がいくつも展開され始めた。

ルルとすらたんは、それが回避不能の広範囲殲滅魔法であることを悟る。


「マスター、このままでは押し切られます! 迎撃の魔力が足りません!」


「わかってるなの……でも、あたしは絶対にあいつをぶっ飛ばすなのっ!」


四つの極地で繰り広げられる死闘。


アリアとレオンハルトの悲劇的な結末を越え、戦場の熱気は限界点に達しようとしていた。


その時、王都の上空に立ち込めた分厚い暗雲から、ポツリ、と大粒の冷たい雨が落ちてきた。

ゴロゴロと、低い雷鳴が大気を震わせる。


竜たちの激突が生み出した嵐が、ついに王都に降り注いだのだ。

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