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【完結済】異世界複製錬金術師~所有した物を無限コピーするチート錬金で武器も罠も量産無双~  作者: あくす
第五幕 反撃編~対四天王~後編

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第180話:繋がれた手

「……アルベルト殿下。少し、動かないでください」


俺はアルベルトの細い首に嵌められた、赤黒い魔力を放つ鉄の首輪にそっと手を触れた。


脳内で錬金術のプロセスを起動し、物質の構造と魔力の編み目を読み取る。



「解析(アナライズ)」



その瞬間、俺の視界に信じられないほど複雑な魔力の術式がぶわりと展開された。


何百、何千という呪いの糸が幾重にも絡み合い、アルベルトの生命線と直結している。


物理的に破壊すれば即座に彼の首を跳ね飛ばし、魔力的に解除しようとすれば術者に逆流して脳を焼き切る。


極めて悪辣で、かつてないほど高度な術式だ。


そして次の瞬間、俺の手のひらから凄まじい勢いで自身の魔力が吸い上げられ始めた。


「ぐっ……!?」


全身の血液が沸騰し、そのまま指先から抜き取られていくような激しい悪寒と目眩が俺を襲う。


「こうなることも想定済みなのか……!? イザベラめ……!」


俺の魔力に反応し、首輪の防衛機構が作動したのだ。俺の魔力を根こそぎ奪い、解析を強制終了させようとしている。


「もうやめてください! あなた、死んでしまいますよ!」


アルベルトが悲痛な声を上げ、俺を突き飛ばそうとした。


「俺の事はもういいんです! だから、手を離して!」


「……アドルさん、大丈夫!? 顔色がすごく良くないわ」


見かねたミーシャが駆け寄り、俺の右手をギュッと握りしめた。


その途端、ミーシャの表情が驚愕に凍りつく。


「えっ……?」


ミーシャが手を握ったことで、俺を介して彼女の膨大な魔力までもが、凄い勢いで首輪へと吸い取られ始めたのだ。


「くっ……そういうこと……。やってやろうじゃないの……!」


ミーシャは手を離すどころか、逆に両手で俺の右手を強く握りしめた。


彼女から流れ込んでくる温かく力強い魔力が、俺の枯渇しかけた魔力回路を強引に満たしていく。


「ん……体が楽に……。まさかミーシャ……お前の魔力まで吸われてるのか!?」


「気にしないでアドルさん! このまま解析を続けて!」


ミーシャは俺の顔を真っ直ぐに見つめ、それからルルへと鋭く叫んだ。


「ルルちゃん! アドルさんの反対の手を握って!」


「了解なの!」


ルルが俺の左手に飛びつき、小さな両手でしっかりと握りしめる。


「んっ……なんなんなんなのこれ! うわぁ、気持ち悪い! すっごい吸い込まれるなの!」


「私たちが魔力の囮になるわ! 今のうちに解析を終わらせて、アドルさん!」


ミーシャは空いた手でパチンと指を鳴らし、異空間保存から高濃縮のマナポーションを数本取り出した。


「ルルちゃん、適当にこれを飲んで! イザベラの呪いと魔力勝負よ!」


「わ、わかったなの! ごくごく……ぷはぁっ、なの!」


「君たちは一体何をしているんだ!? そんな無茶はやめるんだ、吸い取られて死んでしまうぞ!」


アルベルトが恐怖と混乱の入り混じった顔で叫ぶ。


だが、ミーシャとルルは一歩も引かない。


「一刻も早く解析を終わらせる……! んんんんんぐぐぁぁぁ……はぁはぁ、はぁはぁっ……!」


俺は二人の手から流れ込んでくる莫大な魔力を推進力に変え、イザベラの複雑怪奇な呪いの深淵へと意識を潜らせていく。


絡み合った糸を一本ずつ解きほぐし、核となる術式を特定する。


「私、魔力総量には自信があるのよ! ルルちゃんは無理しないでね!」


「大丈夫なの! すらたんもいるし、これしきの魔力、ふんす、なの!」

(マスター。私が魔力流出のバイパスを最適化します。マスターの負担を最小限に抑えます)


ルルの意識の底で、すらたんが静かに、しかし強力な演算サポートを開始しているのが伝わってきた。

仲間たちの無尽蔵の魔力供給と支え。


それさえあれば、俺の錬金術に解き明かせない構造はない。


「……見えた。もう少しだ、もう少しで解析が終わる……!」


俺は首輪の最も脆弱な結節点を見つけ出した。


魔力の流れを一瞬だけ逆位相に反転させ、呪いの回路をショートさせる。


「そこだっ……!!」


俺が指先に錬金術の波動を流し込んだ瞬間。

パキッ、という乾いた音が部屋に響いた。

赤黒い魔力の脈動がピタリと止まり、アルベルトの首を締め付けていた鉄の首輪が、真っ二つに割れてシーツの上へと転がり落ちた。


「ぁ……え……?」

アルベルトは自分の首元に触れ、呪縛が消え去ったことを信じられない様子で呆然としている。


「一体、どうなっている……。イザベラの絶対の呪いが、こんな、こんなにあっさりと……」


「こう見えても、俺は錬金術師なんです」


俺は額の汗を拭い、息を切らしながらもニヤリと笑ってみせた。ミーシャとルルも、魔力切れでその場にへたり込みながら、疲れた笑顔でピースサインを作っている。


「さぁ、時間が無い。イザベラに首輪の破壊が伝わっているはずだ。ここから逃げましょう」


「ぁ……あぁ……わかった。本当に、本当にありがとう……!」


アルベルトの瞳から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。絶望に染まっていた彼の顔に、ようやく年相応の少年の生気が戻っていた。


俺たちはアルベルトをベッドから立たせ、アリア王女からの依頼を完遂すべく、急いで星霜の離宮を後にした。

目指すは、来る時に使ったあの地下排水路だ。


庭園を抜け、隠し入り口の石材を動かして地下水路へと降り立つ。


冷たいカビの匂いが、今はひどく安心するものに感じられた。


「アルベルト殿下、ここは泥まみれになりますが我慢してください。ここを抜ければ……」


俺が先頭に立ち、暗い水路の奥へと灯りを向けた、その時だった。


泥水が、ボコボコと不気味な音を立てて泡立っていた。


「……アドルさん。待って」


ミーシャが顔を引きつらせ、アルベルトを庇うように立ち止まる。


「信じられない……。あれだけ完全にチェックメイトしたはずなのに……」


暗い排水路の奥。

先ほどルルの超演算によって完全に心をへし折り、気絶させたはずの、あの巨大な筋肉の塊が。


『……素晴らしい。実に素晴らしいぞ、諸君』


泥水の中から、片眼鏡を妖しく光らせた知将ゴリアスが、再びその巨体をゆっくりと立ち上がらせていた。

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