↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロボット  作者: いづる
PR
73/74

一生離れない

(……ここか。しかし、アマンが自分の誕生日パーティーを開くなんて、どういう心境の変化なんだ。しかも、今日のメンツはソマの同居人ばかりだ)


 わかってはいた。

 それでも――やはり、ソマの姿はない。


(俺は、こんなにも嫌われていたんだな)


 仮装用の衣装は二階にあると聞き、リンネは部屋のドアに手をかけた。


 「……あっ、失礼」


 中に人影があるのを捉え、後ろ姿だけ確認して慌ててドアを閉める。


(え……?)


 胸騒ぎを覚え、確かめるように、もう一度ドアを開けた。


 その開閉音に、部屋の中の人物が振り返る。


 ――ソマだった。


「やっぱり、君だったんだね。今日は来ないかと思ってた」


「リンネ……どうして? 今日は来ないはずじゃ……」


「はは。どうやら、みんなに仕組まれたみたいだ」


「え……?」


「僕はいつでもアマンに会えるから。ゆっくりしていって。……そのドレス、きっと君に似合うよ」


 そう言い残し、踵を返して出て行こうとする。


「待って……私……」


 ソマは呼び止めたものの、その先の言葉が続かなかった。


 リンネは足を止め、少し迷うように振り返る。


「……髪、ずいぶん短くなったね」


 気遣うように、彼は再び部屋へと足を踏み入れた。


「え、ええ……」


「君を見ると、どうしても愚痴みたいなことしか出てこないな」


 一度、視線を伏せてから、リンネは静かに続ける。


「僕は、あの日……君と触れ合えたことが嬉しかった。

 君と一緒に、未来を歩いていけるんじゃないかって、本気で思ったんだ」


 けれど、と言葉を区切る。


「その翌日から、君は俺を避けた。

 何度会いに行っても、話すことすらしてくれない。

 ……そんなに、俺のことが嫌になったんだろう?」


 ソマは息をのむ。


「やっぱり、君は人間のほうがいいんだな」


「ち、違うの……!」


 ソマはドレスを台に置き、まっすぐリンネと向き合った。


「私は、あの時……あなたに言われた言葉が、ずっと引っかかっていて。

 皆に甘えてばかりだって……」


「あれは――」


 リンネは、少し苦しそうに笑う。


「君が、ダンっていう男とうまくいっていなかったから。

 気まぐれだと思って、君を突き放すために言った言葉だ。本心じゃない」


 そして、低く付け加える。


「でも……一緒にシャワーを浴びて。

 ロボットの俺とでも、本気で先のことを考えてくれるんじゃないかって……思ってしまった」


 小さく首を振る。


「……やめよう。今さらだ。もう、随分と過去の話だ」


「ごめんなさい……」


 ソマは唇を噛みしめる。


「あの時は、自分の気持ちしか見えていなかった。

 一人になって、ちゃんとしなきゃって……」


「だから、もういいだろ」


 リンネは、やさしく言った。


「君は、誰にも頼らずに……あれから三年も、一人でやってきた。

 十分すぎるほど、しっかりしてる」


「……でも」


 ソマの声が震える。


「今さらだけど、一人は寂しくて。

 でも、錬や中利様に会えるから……」


「それでも――」


「……私が、決めたことよね」


「……ああ」


「それじゃあ……」


 リンネは、視線を落としたまま背を向ける。


 その瞬間。


 背中に、温もりがぶつかった。


 ソマが、後ろから抱きついていた。


「……何するんだよ」


 リンネは困ったように息を吐く。


「君はいつも気まぐれで……俺は、そんな君に振り回されてばかりだ」


「ごめんなさい……」


 腕に力を込めながら、ソマは言う。


「二度と会わないつもりだったのに……

 こうして、目の前にあなたがいると……」


 ソマは静かに腕をほどく。


「……勝手なことばかり言ってるって、わかってる。

 ごめんなさい。私……やっぱり帰ります」


 リンネの横をすり抜けようとした、その瞬間。


「……はあ。本当に、いつも勝手だよね。君は」


 そう言いながら、リンネはソマの腕を掴み、引き寄せた。


「でも……そんな君でも」


 今度は、彼のほうが強く抱きしめる。


「俺は、君を嫌いになれないんだ」


「……私……」


「もう、俺と――一生離れないって、約束してくれる?」


 ソマは、少し間を置いて、静かにうなずいた。


「……はい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。