夢見る衣装
◇◇◆◆
言われた通り、ソマは二階へ上がる。
廊下に並ぶ扉の印を、一つひとつ確かめながら進む。
「あ……あったわ。ここね」
扉を開けると、思わず息をのむほど広い部屋が広がっていた。整えられた調度品はどれも品が良く、この家の歴史と余裕を静かに語っている。
奥の台の上に、二つの箱が置かれていた。
左側に置いてある箱には、はっきりと自分の名前が記されている。右側の箱には、名前はなかった…。少し、気にはなったが、すぐに目を移す。
――エマへ。
箱を開けると、中には丁寧に畳まれたペンル(紙)が一枚。
『エマへ
これを着て、今日はシンデレラ姫になってね
一同より』
箱を開けると、淡いピンクを基調としたドレスが現れた。
柔らかな色合い、繊細な刺繍。触れるのが怖くなるほど、優しく、そして豪華だった。
「……まあ、なんて素敵なの」
思わず声が漏れる。
同時に、胸の奥でためらいが生まれる。
(でも、こんなに立派なもの……私が着ていいの?)
それでも――着てみたい、という気持ちの方が勝っていた。
箱の中には、ドレスと同じ色合いの靴まで揃えられている。
そっと身に纏い、靴を履き、部屋の隅に置かれた鏡の前に立つ。
そこに映っていたのは、いつもの自分ではなかった。
けれど、まったく知らない誰かでもない。
(……まあ、素敵)
胸が、きゅっと締めつけられる。
(こんな私……一生に一度、かもしれないわね)
錬の読み聞かせで、パーティのドレスに憧れていた自分。
いつか、王子様のような人と…なんて夢みていた自分。
もう、そんな人は現れないけれど…せっかく用意してくれたドレスを着るぐらい…いいわよね。




