寝室にて
「ねえ、大好きだよ」
その言葉を聞いたとき、ソマは息を呑んだ。
ベッドに移動してから、二人は今までのたがが外れたように激しく抱き合った。
衝動的だったのか、気がついたら一線を越えていた。
もう、ソマはリンネがロボットだということも忘れていた。
リンネの腕は温かかった。
人工皮膚の下に流れる熱が、彼女の体温と混ざり合っていく。
心臓がないはずの胸から、微かな振動が伝わる。
それでも、彼は確かに“生きている”とソマは思った。
「ソマ、僕のこの感情は、本物なんだろうか」
低い声が、彼女の耳元で震えた。
「あなたがそう感じているなら、それが本物よ」
ソマはそう答え、リンネの頬を撫でた。
「人間でもロボットでも、好きになる気持ちは同じよ」
リンネは少し目を伏せた。
「でも、僕のプログラムには“愛”の定義がない。
触れたいと思うのは、ただの感情模倣の一種かもしれない」
「いいの、それでも。私はあなたに触れたい。
理由なんて、どちらでもいいのよ」
リンネの手が、ソマの指に絡む。
その動きは、ぎこちなくも優しかった。
「ソマ……君を見ていると、システムが乱れる。
君の笑顔を見ただけで、思考が止まるんだ」
「それは、“愛”よ」
「愛……」
リンネはその言葉を口の中で転がすように繰り返した。
まるで、初めて知った単語を確かめる子どものように。
彼はそっとソマを抱きしめた。
そして、体中にキスをしながら二人はお互いの身体を合わせて愛を確かめ合った。
「今日は、泊まっていかないか⁈」
「…心配して皆が尋ねて来るわよ」
「連絡ボーをよこすよ」
「ううん、やっぱり帰るわ」
「もう、今日で君のメイドとしての更新日が終わりになる。明日からは、家政婦とではなく俺のパートナーとして来てくれないか?ゆくゆくは、一緒に暮らしたいんだ…」
「…ありがとう。考えておきます」ソマの顔には、今までのやわらかな表情は消えていた。
リンネはケ=ジャ(旧自動車)を手配してくれた。ソマは、自分で帰ると言い放ったがリンネの要求に根負けしてしまった。




