第58.5話ドウラの独り言
ジャラに今の想いを告白してから、ランティは少し後悔していた。いや、それとは少し、ニュアンスが違うかもしれない。
今更、義理の息子だと名乗ったところで、もう俺は表立っては生きていけない。
この間も、まさかアンナの今の家族?とデジャン達が突然やって来るなんて…あれから顧客もデジャンも警戒していた。けれど、そろそろ面接場所に使うくらいはいいだろうと判断した。
それなのに、義父と会って話をしたことで少しの期待を持ち始めていた自分がいた。
二階の窓から見える義父さんと仲間たち。
少しの間ランティはその様子を見つめていた。すると、少し先から賑やかな声が聞こえて来る。
彼らの連れのようだ。
そして、その中にはキッタもいた。少し年を重ねていたが、相変わらず優しそうな妻の顔だちは少しも変わっていなかった。
(ああ、今から走って行って君を抱きしめられたら)…そんな、叶わぬ願いに駆られながらずっと、その背中が小さくなるまで見つめていた。
ドアのノックの音が、その余韻を切り裂くように響いた。
「ドウラ(ランティ以下省略)さん、もう面接の方が帰りましたので、回収用のケージャ(旧自動車)を呼びました」ドアを開けて、背の高い青年がにこやかに微笑む。
「しかし、みな騙されているとも知らず簡単にこの話に引っかかるものですね」
「ああ。暮らしに切羽詰まった状態なのだろう」ドウラは言う。
「ダン、君は若い。この仕事をやっていく覚悟があるのかい?君に付き合っている娘とかいるなら、辞めといた方がいいと思うが…この仕事は、盗みや騙し、○ろしだって厭わない裏の世界だから」急にドウラは、真面目な顔でこの澄んだ青年の瞳を見つめながら話す。
「何を言っているんですか? 今まで何度も言ったとおり、僕はドウラさんみたいに、この下級エリアからのし上がって大金持ちになりたいんです。心底、貧乏は嫌なんだ。恋人とはつい最近別れました。ロボットが家族とか、本当に思っている変な奴なんで…」
(ロボットが、家族か…ふと、アンナのことを思い出していた。彼女はわからなかったみたいだが、私はすぐに気が付いていた。昔、家族同然で暮らしていたんだから…それでも、私は彼女も金持ち連中のストレスのはけ口に、使うことにためらいはなかった。けれど、本心は心の奥底で彼女が何事もなく帰ることが出来たことでホッとした部分もあった)
「ダン。もし、その想いが本物なら三か月間、私の仕事をみっちり教え込もう。途中で逃げ出したくなるくらいに徹底的に…」
「本当ですか⁈ ぜひ、よろしくお願いします。僕は、絶対逃げ出しません。このチャンスを掴みます」そう頼もしいことを言って、頭を下げる。
その時、ドウラもあることへの決心を決めていた。




