第56話 もう、会わないと決めたのに‥‥
ドウラとの面会を終え、会場の外で待っていた仲間たちと合流した。
ナタクが最初に声をかけてくる。
「ずいぶん長く話してたな」
サンドも興味ありげに言った。
「知人に似てるって言ってたっけ? それで、お前だけ個別に仕事が決まったとか?」
「いや、話はそう上手くはいかなかったよ。結局、この話は断ることにした。代わりに単価は安いけど、別の仕事を紹介されたんだ」
ニールが眉をひそめる。
「お前だけか?」
「いや、俺たち全員分。ドウラが紹介してくれる」
ナタクは少し疑うように言う。
「無理して頼んでくれたんじゃないのか?」
「それが、ちょうど空きが出たらしい。偶然、タイミングが良かったんだよ」
ドウラが紹介してくれた仕事は、表向きはごく普通の職業だった。だからこそ、俺もすぐには返事をせず「まず仲間に話してから」と伝えて返答を保留にした。
ニコラが不信感をにじませる。
「ふーん。でも、結局はうまい話で俺たちを釣ろうとしてたんじゃないのか? 本当に信用できるのかよ?」
「まあ、今回のは別に"うまい話"ってほどでもないさ。家から通える場所だし、家族と離れなくて済む。それだけでも十分ありがたい」
ニコラが小さくうなずいた。
「それは確かに、助かるな」
「賃金が安くても、定期的に働けるならありがたいよな」とサンド。
「ああ。仕事先が安定してるなら、それでいい」とニール。
「そうだよな。俺たち、贅沢は言えない」とナタク。
皆の言葉に、自然とうなずきが広がる。
「詳細は後日、俺の家に来る“連絡ボー”から知らされるらしい」
ニコラが顔をしかめる。
「なんだよ、それ。やたら手間をかけるな」
「それでいて、高賃金でもないんだろう?」とサンド。
「知り合いに似てるってだけで、そこまで?」とニールも少し不安げだ。
「まあ、疑い出したらキリがない。とにかく、情報が届いたら皆で見て決めようぜ」
―義理の息子のことは、黙っておくことにした。
それに、高収入の“うまい話”の裏側は、あいつが教えてくれたんだ。
そんな俺たちを、まさか騙すような真似はしないだろう―。




