申し訳ない
ジャラは玄関先を出て、いつも一緒につるんでいる連中の家にやってきた。
彼らもまた、自分と似たような境遇だった。
親の財産を食いつぶして、ここのエリアまで落ちたサンド。
ギャンブルが好きで商才はあるのだが、資金を使い果たしてここのエリアに来たニコラ。
私のお得意先でもあったが、彼らの会社も潰れてほぼ同時期にここにきたニール。
そして玉の輿で上級エリアの娘と結婚したのはいいが、三年目で離婚を言い渡されたナタクと情けないメンバーだったが、ほとんどこの五人で一緒にいた。
オリゴン『カードゲーム』で微々たる掛けごとをしたり、ナタクの狭い部屋で思い思いに座ったり寝転んだり、お互いに愚痴を言い合ったりと気のおけない仲間だった。
家では家族に愚痴を言われながら肩身が狭い思いをしているが、ここでは中級上級エリアにいた頃を懐かしんでは皆が思い思いの時間を過ごしていた。
「おっ、ジャラ来たな。いつも、一番のりだなあー」ナタクは、笑いながら勝手に入って来る俺を見る。
「まあ、後の三人もすぐ来るだろう」
「ああ。毎度毎度同じことばかりキッタには、言われているから嫌になるよ。畑仕事をしろとか‥」
「嫌なら、俺みたいな独身貴族になるんだな。娘と孫を捨ててさ」
「そんなことできるもんか。妻が亡くなって、娘の旦那も蒸発しちまってから、俺とキッタと孫のカナンの三人で支え合って生きてきたんだぞ」
「冗談さ、そんなにムキになるなって。そうだ。今日は皆にいい知らせがあるんだ」
「ごまかすなよ。まあいい、それより俺らにいい知らせって⁈何だよ」
「これなんだ」ナタクは俺の目の前にルリ(紙)をヒラヒラさせる。
「なんだよ。それは‥」
ざっと読んでみるが、高収入の仕事の募集だった。
「すごい、高収入じゃないか?しかも下級エリア民でもいいなんて、何だか胡散臭くないか?」
「ああ。でも、ここのエリア民が高収入を得ることなんて、まず無理だろう?チャンスじゃないか?」
「チャンスっていうか、これは詐欺じゃないのか?」
「俺たちを騙しても、何も得することはないじゃないか」
「まあ、確かにそうだよな」
と言いながらも、このルリのことは後から来た三人も交えて興味津々に話あった。
「そういえば、俺の知り合いが急に金回りが良くなった奴がいたなあ。しばらく夫の顔を見てはいないが‥」
「上手い話だよな」
「だけど‥やばくないか?」
「やばすぎるよな。消されるかも」
「どういうことだよ。これには、建設業務関連と書いてあるじゃないか」
「うーん、俺はどうなってもキッタやカナンにお金を残してやれるなら‥」
「なんだよ。3人で支え合って生きて来たと言っていたじゃないか」
「ああ。だけど、この貧乏暮らしを変えてあげることができたなら、俺の命なんて安いものだ」
「ああ、俺もだよ。いまだに、キンエ(つま)には中流エリアでの暮らしぶりをチクチクと愚痴られるし‥たまったもんではない」
「俺だってそうさ。おまえ達がいたから、何とか出戻りでもやっていけてる」
「なあ。俺たち一緒にそこへ行かないか⁈どうせ、この先家族のお荷物は変わらないだろうからな」
「俺はこの中で唯一の独身だけど、おまえ達がいなきゃあ一人でいてもつまらないからな。俺も一緒に行くぜ」
「俺だって、家族に金を残してやれるなら行くよ」
「ああ、俺も」
「まずは、このルリに書いてある日時に指定の場所に行ってみないか。簡単な面接があるみたいだし‥」
そして、家族には内緒でこの指定の場所に来週の水曜日に皆で集まることに合意した。




