どうしたらいいのか
ソマはダンのことをリンネに言いそびれていると、急いで近づいてくるダンが見えた。
「あ、あの。近所の友達がいたの」取り繕うように、ソマは言う。
「友達?」
「急いで来たんだけど、待たせたね。はい、これ」ダンは一緒にいるリンネを気にしながらも、ソマに向かって袋を渡す。
「悪いわよ。こんなにたくさん」袋を受け取ると、その重さに身体がよろける。
「大したことないよ。毎日貰えるんだし」
「なんだい、それは?僕はリンネと言うが、彼女の雇い主だ。勝手に連れまわさないでくれないか⁈」
「あっ、すみません。俺は、そのう。ここで働いていて、試供品を美味しそうに食べていたから、いつもここで残ったのを貰うからそれをあげようと思って」リンネの態度に、動揺しながらも伝える。
「ソマ、その商品を返しなさい。君の分も、アマンの所に明日届くようにしといたから」
「えっ、私の分ですか?」
「そういうことだから、悪いけど」と言って、ソマから袋を取り上げてダンへと突き返す。
「そういうことね。悪かったな」ダンは袋を受け取り、じゃあと言って来た方向へと向かおうとする。
「ま、待って。その袋、私もらいます。せっかく持って来てくれたんだもの。それと、これ私の住み番号です」待っている間に、ペンルの切れ端に書いたものを手渡す。
「えっ、でも」リンネを、チラッと見ながらも受け取る。
「この人は仕事場での雇い主なだけです」そう、ソマは言い切る。
ダンと別れて、ケージャに乗っていていてもリンネは口を開こうとしない。
「賞味期限切れだなんて、捨てるんだな。衛生上悪い」やっと、気分悪そうに言葉を吐く。
「そんなこと指図されたくありません。それに、今までダンや他の従業員も食べていたんだから問題ないわ」
「それにしても、住み番号まで教えることないだろう。友達だなんて、うそまでついて‥」
「だって、親切に言ってくれたことなのに‥」
「タダでくれるって言ったら、誰でも信用するのか?人間だからなのか?
「そっ、そんな言い方しなくたって!!」
リンネ邸に戻ってからも、険悪なムードは変わらなかった。
それでもリンネは帰れとは言わなかったので、居続けるしかなかった。
「あの、今から何をすれば‥」
「別に何もない。好きにしていればいい‥時間まで」
「好きにって言われても‥あっ、それから私のために食品買ってくださって、ありがとうごさいます。お金は払います。出来れば、貰う賃金で差し引いてもらえませんか?」
「あいつの時は嬉しそうにもらっといて、俺には、賃金で差し引いてくれってか?」
「だってお金がかかっているんだし、こんなことを勝手にしてもらったら困ります」
「別に、困らせるためにやったんじゃない。試供品を本当においしそうに食べていたから‥ロボットには食べて味わうなんてことできないことだから、喜んでくれると思ったんだ」
「それでも‥こんなことは、困ります」
「ふっー、頑固だな。まあいい。これから、ちょっと睡眠モードになるからソマも来い」
「そうですかわかりました。えっ、わたしも⁈」
「えっ、きゃあ」ふいに、お姫様だっこをされ絵本に出てきていたような階段を駆け上がる。
ソマはリンネに身を委ねて、緊張感を抱いていた。
初めて部屋に入ると全体的にグリーンで統一されている大きな天蓋ベットが目に付いた、上の方からは、周りより淡いグリーンのレースカーテンが下がっていた。
「わあ、素敵ー。本当に絵本に出ていた世界観だわ」今までの険悪な感情が少し緩和されていた。
「ふふっ、アマンの先代からの家らしいからな」
「さあ、降ろすぞ」開いているレースの合間から、ソマをベットに向かってゆっくりと降ろす。そして、自分はソマの横に横たわる。
「えっ、あの」
「1時間くらいスリープモードになるから、おまえも昼寝でもしてろ。また、逆立ちでもされてドタバタうるさいのもかなわんからな」
「‥」そう言われても、男の人が横に寝てて(そう、ロボットなんだけどね)なんだか、落ち着かないわよ。
『かわいいから、知り合えないかなと思って』ふいに、ダンの言った言葉を思い出した。かわいい? 私が? あ、あの人目が悪かったのかしら?
「あの人って誰?」背中越しに声がする。
「スリープモードじゃあ、なかったの?って、今声に出てた?」
「出ていたよ。すぐ隣なんだからさ。さっきの人間の男が気になるのか?」
「初めて、かわいいって言われたの」
「ふうん。そうとう目が悪いなあ。それに、頭も悪いんじゃないかあ」
「ひどい!!そんな、言い方」とっさに、軽くリンネの肩を叩いた。
「もう、寝かせてくれ」と言ってソマの方へと横向きになり私を抱き寄せて、リンネは深い眠りに入った。
「ちょ、ちょっと。こんなに接近していたら」振りほどくこともできずにいた。わ、わたしどうしたらいいのかしら。いつも家族のことばかり考えていたから、わからない。自分のこの気持ちは‥(寝息をたてているリンネをみつめる。人間と何一つ外見では、劣らない)




