第35話 学校で
アンナが学校に行くようになって、1か月近くたった。アンナとマネが、仕事に行くのを見送ってからソマは仕事が入っている時は出て行く。
「いってらっしゃい」近頃に比べて、前の自信たっぷりの明るいアンナに戻りつつあった。
「行ってきます」
「行ってくるわ」
あの時のトイレの床に座り込んで泣き崩れていたアンナを思い出すたびに、心がギュと苦しくなっていた。だから、近頃のアンナの様子はとても嬉しい。それは、うちの家族が皆感じていることだ。
◆◆◇◇◇
「ホシカ先生とは、毎日保健室であっているんだろ?」マネは歩きながら話す。
「私はシグナを助けてあげることはできなかったけど、彼女にそっくりなホシカ先生の顔を見るのが嬉しくてたまらないの。だから、いつも30分ぐらいは立ち寄るのよ。もちろん、ジェシカやワイスが大抵いるけどね」
途中で、子供達と合流していつもの道を向かう。
そして校門をくぐり、慣れてきた校舎の可愛い絵を見ながら、職員室へと歩きを進める。
「おはよう」
「おはようございます。アンナ先生、マネ先生」
すれ違った生徒達と挨拶を交わしながら、職員室へと入る。
今日の進行と各々の受け持ちの予定表をみながら準備をする。
アンナも3つのクラスと特待生クラスに何回か入ったので、皆の顔や性格、授業の不インキなどをすこしずつ把握していった。
今日は、1時間目は特待生クラスでのマネの担当の補助をする。
マネは小まめにテストをするため、そのルリ(紙)を列の一番前の机の子に配ったりするのがアンナの仕事である。各先生の補助や悪ふざけしている子を注意したり、生徒に寄り添ったりしている。
「さあ、今日のテストは先週の復讐だから、解けなかったら少しでも家で教科書を開く習慣をつけてくれ」マネは、口をすっぱくして毎回同じことを言っている。
背丈や外見はここの生徒たちと変わらない子供だが、マネ先生の優秀さは皆が理解しているようだ。
「はーい」
「わかったから」
「テストばかりは止めてー」等々。子供達の声が聞こえている。
ふと、アンナは1人の生徒がいないのに気がついた。
「マネ先生、カナンがいないわ」
「あ、トイレって言ってたよ」いつも落ち着きがないジョウンが答える。
「大じゃないの⁈」
「生意気なんだから」
「ほっとけばいいんだよ」
「そうだ、そうだ」
「いつも、うるさいもの」と、口々に他の生徒が答える。
「ちょっと、トイレを覗いてきます」そう言って、アンナは教室を出て行った。
◆◆◇◇◇
女子トイレに入ると、ドアが閉まっている方の戸を叩く。
「カナン、もうテストが始まるわよ」ドア越しに声をかける。
「‥‥ほ、ほっといて。うっ、うっうつ」
「どうしたの⁈ カナン泣いて いるの?」
「だから、ほっといてって‥‥ うっううっ」
そう言いながらも、泣きじゃくっている。
「ほっとける訳ないでしょ。いいから開けなさい」
「イヤ、後から行くから。向こうに行って」
「ダメよ。とにかく顔をみせて。そうでなきゃあ安心できないわ。それとも無理やりこじ開けてほしいの⁈」
「わ、わたし、みんなに嫌われているもの」
「何、言ってるの。急に‥」確かに、素直じゃないし人の悪口ばかりは嫌われるわよねと納得している場合じゃなかった。
「なんで、そう思うの?」
「うっ、うっうっ」
「泣いてばっかりじゃあわからないわよ。いいから、戸を開けなさい」カナンの鳴き声を聞くとたまらなくなる。
「‥‥」そおっと、扉を開けてカナンは出て来た。
「!!どうしたの。その髪の毛は?いったい誰がやったの⁈」長い髪のカナンの髪の毛が無造作に切られていた。
「うっうっうっ」カナンは、涙が止まらない。
「こっちへいらっしゃい、言いづらいとは思うけど。こういうことは黙ってていいことはないわよ」
カナンの頭を撫でながら説得をする。
「ハヤテやテッシ、ジョウンたちが生意気だからって私を押さえつけて‥うっうっ」気が強いながらも、くやしさで涙が止まらないようだ。
「なんてこと、ひどいわ。もう何も話さなくていい、わかったからね」そう諭すとカナンの肩に手をまわして保健室へ連れて行く。




