あそびのじかんは… 第4話 逆回り
10時08分。
小布施町の高速道路カルバート。
エクストレインからの送信を、追跡班のDEURAS-M6が捉えた。
「来ました!」
加茂が画面を確認する。
「長野北、受信。須坂も受信しています」
「南長野は?」
「……反応なしです」
松本主任電波監視官は、これまでの送信地点を地図上で追った。
須坂から小布施。
そして、その先は――。
「戸隠は反時計回りに動いている可能性があるな」
名立が地図を覗き込む。
「次は豊野ですか?」
「そうだ」
松本は迷わず指示した。
「加茂、DEURAS-M6を豊野のコメリーハートへ向けろ」
「了解!」
エレファントが豊野方面へ進み始めた。
◇
その頃。
エクストレインを走らせる戸隠は、ふとルームミラーを見た。
「……おや」
3台ほど後ろ。
見覚えのあるミニバン。
ドアミラー越しに見知った顔を見れば、一目瞭然だった。
「DEURAS-M6か」
戸隠はニヤリと笑った。
ここまで追いついてきた。
ということは――。
「たぶん、コメリーハートの駐車場で待つつもりだな」
戸隠は前方を見る。
だったら、こちらから出向いてやろう。
ただし――。
「ちょっとだけ、意地悪していくか」
◇
10時18分。
エクストレインは豊野の交差点を右折し、コメリーハートの北隣へ。
作業服屋「ワークラン」の駐車場に停車する。
「ここならいい」
戸隠は無線機を操作した。
送信開始。
◇
数分後。
コメリーハートの駐車場。
そこに停まっているのは――。
DEURAS-M6を搭載したエレファント。
そして、軽トラックが三台。
それだけだった。
「……」
加茂が周囲を見回す。
「……あれ?」
「どうした?」
松本が聞く。
「電波は、当車両付近を指し、M6の方位測定データはウロウロしています。」
DEURAS-M6の測定結果は明瞭だった。
スペクトラムアナライザにも、70dBμV以上の波形がしっかり現れている。
「波形、撮れました」
「よし」
ところが。
加茂がもう一度、駐車場を見渡した。
「……車がいない!」
「何?」
「エクストレインがありません!」
名立も窓の外を見る。
「本当にいない……」
「じゃあ、今の送信はどこからだ?」
「方向としては、この周辺です」
しかし、肝心の車両が見当たらない。
「車がいない!」
加茂が思わず声を上げる。
「電波はあるのに!」
松本は、しばらく黙って地図を見ていた。
やがて――。
「……戸隠…やりやがったな…。」
「はい?」
「次は大倉だ」
松本が地図を指す。
「豊野町大倉のコンビニ、ローソク」
「そこですか」
「次は恐らくそこに向かう」
名立が頷く。
「じゃあ、すぐ向かいますか?」
「そうだ」
松本は前方を見た。
「ローソクへ行くぞ」
◇
その頃。
ワークランの駐車場。
送信を終えた戸隠は、エクストレインのエンジンをかけた。
「さて……」
正面を見る。
コメリーハートの駐車場から国道18号を右折で、DEURAS-M6が出ようとしている。
「ご苦労さん…多分大倉のローソクにでも行こうというのだろう」
戸隠は笑った。
そして――。
ウインカーを出す。
向かった先は、大倉ではなかった。
「ローソクは、飛ばす」
エクストレインは豊野の旧市街を抜けて次の場所へ。
北信五岳道路へ。
その先にあるのは――。
宇佐美沢。
「さて……次は長野北センサだけがダメな場所だ」
戸隠はそう呟き、アクセルを踏み込んだ。




