あそびのじかんは… 第5話 逆手
10時25分。
宇佐美沢。
戸隠はエクストレインを停めると、車内から周囲を確認した。
そして、送信機のスイッチを入れる。
151.89MHz。
規定どおりの送信だった。
そのころ――。
「来ました!」
DEURAS-M6の車内で、加茂が声を上げた。
「須坂、受信」
「南長野も来ています」
名立が画面を確認する。
しかし。
「長野北は……来ません」
松本は画面をじっと見つめた。
三つのセンサのうち、二つだけが反応している。
そして、須坂と南長野から伸びる探査方位線。
「……またかよ」
名立が指を差した。
二本の線が示すのは、ローソク長野田中店付近。
ただし――。
「この交点、送信地点そのものとは限らんぞ」
松本が釘を刺した。
「誤差もありますからね」
「そう。だが、前回より絞れる」
松本は地図を拡大した。
「戸隠さんがこの周辺にいる可能性は高い。なら、こちらも一か所に固まる必要はない」
そこで松本は、ローソク長野田中店から南へ視線を動かした。
「約3キロ南側。三輪のタマダ電機付近」
さらに別の地点を見る。
「それからハードオフ長野北店付近」
「二手に分かれますか?」
「そうだ。ローソク長野田中店を中心に待っていても、また抜かれる可能性がある」
探査班は配置を変えた。
DEURAS-M6は信濃放送の本社跡地に出来たタマダ電機。
セレーナはハードオフ長野北店付近にそれぞれ車両配置した。
「これなら、戸隠さんがSBC通りを抜けても、若槻サンロードを抜けても対応できます」
中山が言った。
「問題は――」
島見が画面を見る。
「次の送信ですね」
「そうだな」
松本は時計を見た。
10時25分。
次の送信まで、あと少し。
――そのころ。
ローソク長野田中店付近。
エクストレインが、静かに停まっていた。
「……さて」
戸隠は腕時計を見る。
「そろそろ時間だな」
送信機のスイッチに手を伸ばす。
「多分、イヲンタウン三輪か、ハードオフかな……」
小さく笑う。
「そこに行ったと思わせるのも、悪くないけどね」
そして――。
10時25分。
ローソク長野田中店付近から、151.89MHzが発射された。
直後。
探査班の端末に次々と表示が出る。
「受信!」
「須坂、受信!」
「南長野も!」
「長野北も来ました!」
一瞬、車内が静まり返った。
松本が画面を見る。
須坂。
南長野。
そして長野北。
三本の探査方位線が――。
「……全部、同じ方向を指してる」
名立が息を呑む。
三本の線は、ほぼ一点。
ローソク長野田中店付近。
「まさか……」
松本が呟いた。
「我々は戸隠を追い抜いたのか…」
しかし、その地点には――。
探査班の車両はいない。
ローソク長野田中店の駐車場には戸隠のエクストレインだけが、静かにそこにあった。
そして戸隠は、バックミラーに映る道路を眺めながら、
「……さて。どう動く?」
と、楽しそうに呟いた。




