あそびのじかんは… 第2話 見通しのいい場所
09時35分。
戸隠は、イヲンモール須坂屋上駐車場にエクストレインを停めた。
屋島橋の下とは違い、ここは周囲が大きく開けている。
「さて……」
時計を確認する。
151.89MHzで送信。
すると、長野北、南長野、須坂の三つのセンサが電波を捉えた。
◇
平林付近を走るDEURAS-M6。
「来ました」
加茂がDEURAS-M6の画面を見る。
モニターには三つのセンサから伸びる方位線が表示されていた。
「三本とも、かなりきれいですね」
名立が言う。
三本の線は須坂市内へ伸び、イヲンモール付近で交点を結んでいる。
「戸隠…あいつ、わざとやってやがるな…。」
松本主任が頷く。
「ただ、我々がそこへ到着するまでに送信者は動く」
その通りだった。
戸隠はすでにエクストレインを発進させている。
◇
中部地方森林管理局付近のセレーナでも、同じ電波を捉えていた。
「DEURASは3センサともイヲンモール付近です」
近江が確認する。
画面には三つのセンサの方位線。
セレーナの車載方向探知機でも方位を確認する。
「DEURASの線と、こちらの方位を照合する」
中山主任が言った。
「でも、発射地点が分かるのは、あくまで送信中だけですね」
島見が言う。
「そういうこと」
◇
09時40分。
また送信。
探査班は再び方位線を確認する。
そして、その8分後――。
09時48分。
戸隠は、須坂市仁礼温泉付近から151.89MHzを送信した。
その瞬間。
「……来た」
エレファントの画面に反応が表示される。
松本が画面を見る。
「長野北は?」
「反応なし」
「南長野は?」
「こちらもなし」
加茂が答える。
最後に須坂センサ。
「須坂だけです」
画面には、須坂センサから伸びる一本の方位線だけが表示されている。
「なるほど……」
松本が地図を見る。
「今度は交点が作れない」
一本の線だけでは、発射地点を一点に絞り込むことはできない。
しかも、その一本の方位線が示している先に、戸隠が今もいるとは限らない。
◇
セレーナも同じだった。
「須坂センサだけですね」
近江が確認する。
「方向探知機ではどう?」
「方位は取れません」
島見が答える。
中山主任は二つの情報を地図上で見比べた。
「戸隠さん…わざと、須坂しか入らない何処かに入ったな…」
「はい」
「追う側からすると、一番嫌なパターンだな」
◇
その頃、仁礼温泉を離れた戸隠は、次の場所へ向かっていた。
「3センサが取れる場所の次は、1センサだけ」
戸隠はハンドルを握ったまま呟く。
「これも訓練ですからね」
そして、探査班にはまだ知られていない。
次の送信地点がどこなのか。
もちろん――戸隠自身の現在位置も。
訓練開始から15分。
制限時間は2時間。
追跡は、ますます難しくなっていった。




