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Firework's 第3話 『新地蔵トンネルの違和感』

 長岡市消防本部会議室。

 地図を囲んだ打ち合わせは続いていた。

 戸隠はノートに簡単な略図を書きながら口を開く。

「先ほど、『新地蔵トンネルで違和感があった』と申し上げましたが、正確には少し違います。」

 宮内が顔を上げる。

「と言いますと?」

「トンネルへ入った時ではありません。出る瞬間です。」

 名立も頷いた。

「はい。私も確認しています。」

「DEURAS-M6の受信レベル指示値が、一瞬だけ大きく上昇しました。」

 加茂も続ける。

「時間にして一秒もありませんでした。」

 高見は腕を組む。

「出口側だけ……ですか。」

「ええ。」

 戸隠は頷いた。

「それが気になっています。」

 しばらく考え込んでいた戸隠は、宮内へ質問した。

「宮内司令。」

「はい。」

「新地蔵トンネルには、消防無線のトンネル内通信用基地局が設置されていますね。」

 宮内は即答した。

「あります。」

「やはり。」

「上下線それぞれに設置されています。」

 高島が補足する。

「ただし、少し特殊な管理になっています。」

「特殊?」

「下り線、つまり柏崎市方面行きは長岡市消防本部が運用しています。」

「一方、上り線、長岡市方面行きは柏崎市消防本部の担当です。」

 加茂が不思議そうな顔をした。

「一本のトンネルなのにですか。」

 宮内は地図を指差す。

「事故や火災が発生した際、最初に現場へ到着できる消防本部が異なります。」

「そのため、現場対応を迅速に行えるよう、上下線で担当を分けています。」

「消防活動のしやすさを考えた運用です。」

「なるほど。」

 加茂は素直に納得した。

 戸隠はさらに質問を続けた。

「その基地局設備ですが、管理は消防本部でしょうか。」

 高島が首を横に振る。

「いいえ。」

「設備そのものはNEXCO東日本長岡管理事務所の管理です。」

 高見も続ける。

「消防本部は使用者です。」

「保守や点検、設備への立入りはNEXCOの管理下になります。」

 戸隠は静かに頷いた。

「ということは。」

「総合通信局として調査する場合も。」

「はい。」

 宮内が答えた。

「NEXCO東日本長岡管理事務所の許可が必要になります。」

「無断では入れません。」

「当然ですね。」

 名立がメモを書き込む。

 会議室にしばらく沈黙が流れた。

 やがて戸隠が口を開いた。

「昨日から続いている障害波は、DEURAS長岡センサ局では西側から到来しています。」

「そして今日、私たちは新地蔵トンネルを出る瞬間だけ受信レベルが上がる現象を確認しました。」

 高見が静かに言う。

「二つの現象が関係している、と。」

「まだ断定はできません。」

 戸隠は首を振った。

「ですが、無関係とも思えません。」

 宮内は深く頷いた。

「分かりました。」

「こちらからNEXCO東日本長岡管理事務所へ連絡します。」

「事情を説明し、トンネル内設備の立入り許可を要請しましょう。」

「お願いします。」

 戸隠は資料を閉じた。

「許可が下り次第、新地蔵トンネルの基地局設備を確認します。」

「そこで何もなければ、また別の可能性を考えます。」

 窓の外では、二日目の長岡花火大会へ向けて市内の交通量が徐々に増え始めていた。

 その夜も、長岡市消防本部は市民の命を守るため、万全の通信体制を確保しなければならない。

 そして戸隠たちは、その通信を脅かす正体を突き止めるため、次の調査場所である新地蔵トンネルへ向かう準備を始めるのだった。

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