表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/81

 第2章 第17節:「激白」


環は、幼い時から心が壊れるのを防ぐため、自身に言い聞かせる理由を考え抜いていたのだ。


どうしても自分を納得させる理由を見出せず、放心状態で死んも同然の時が何度もあったのだろう。

それが、環が言っていた「幾度も死んでいる」だったのだ。


「あなたならわかってくれると思いますが、母は純粋に愛だけを見つめていたのです。結婚とは、世間を維持するための単なる形式に過ぎないのです」

環は、また遠くを見るような眼をした。


私は、今まで生きて来た人生が薄っぺら過ぎて、とても、環に太刀打ちできないことを痛感していた。


「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」

環は車から降りる時、私を気づかうように声を掛けてきた。


なおも無言で打ちひしがれる私を見て、

「少しだけ寄っていってください」と、環はやさしく誘ってくれた。

私は、言われるがままに従うだけだった。


「もうこれ以上、自分に嘘をつくことはできません」


ズタズタに切り裂かれた心を、再び環の膝の上で癒すことができた私は、これ以上逃げることのできない事実を環に告白した。


「私はあなたに、何物にも代え難い安らぎを見い出したのです。

あなたが若いので、『私のほうが思慮深いのだ』と思い上がっていたことを、今日痛切に思い知らされました。


私は、あなたと一緒にいられるのなら、全てを捨てることさえ厭いません。

どうか私と結婚して下さい」

私は、ただひたすら哀願した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ