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第2章 第16節:「倫理」
環は私の表情を敏感に読みとったのか、静かに言い聞かせるように話し始めた。
「元始では労働力や戦力として子供を増やすことが重要でした。ですから、元始は無から有を生じる女こそが神であり太陽だったのです。
しかし、後世になり、跡目相続が直系男子に限られると、逆に“誰が父なのか”だけが重要となりました。お家の安泰という大義名分で、側室や妾を持つことが、つい最近まで許されていたのです。そして、自分の子かどうか信じる事しかできない男は、その時から不倫という足枷を女に押しつけ、自分の血を守ろうとしたのです。
世界には一夫多妻の地域もあれば一妻多夫の地域もあります。
それは、その地域社会を維持するための必然なのであって、他の地域社会の倫理で、許されるとか許されないとか云々(うんぬん)すべき問題ではないのです。
このように、倫理とは、その社会を維持するための掟であり、その地域や時代で変わるものなのです。
自分の社会の倫理を絶対視し、異なった社会に押し付けようとするから、無益な争いが起きるのです」
今まで心の底にあった積年の思いが、堰を切ったように環の口からあふれ出した。
この時、なぜ環があらゆることに思い巡らせているのか、ようやく理解できたような気がした。




