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第2章 第15節:「未婚の母」
「ご兄弟はいらっしゃるのですか」
私はありきたりの話題を持ち出して、理性と恋慕との葛藤に苛まれてる気持ちを切り替えようとした。
「いいえ、家族は母と私だけです」
全く私の予期していなかった答えを、環は返してきたのだ。
「未婚の母なので、私は父を知りません」
型どおりの挨拶のはずが、思いがけずシリアスなものになってしまい、自分の浅はかさを心から悔んでいた。
そして、毅然として話した環に、強さの一因を見出したのだ。
父がいないという引け目をはね除けるため、環は幼い頃から強く生きなければならなかったのだろう。
環は、いじめに遭っていたのかも知れない。
しかし、環ならいじめに遭っても、決して泣くことなどなかったのに違いないと、私は確信していた。




