友の来訪
今回はそれほど話が進みませんが、ご容赦ください。
「あっちぃなぁ、おい......」
朝、不快な寝汗のせいで目が覚めてしまったオレは、誰へともなく文句を溢す。
窓を全開にして寝たおかげで夜は涼しく感じていたが、朝になるとそうもいかない。
ベッドから起き上がり背伸びをする。
寝起きにこれをやるのがとても気持ちいい。
さて、顔でも洗おうか。
部屋を出て一階に下り、洗面所へ真っ直ぐ向かう。
蛇口をひねり、冷水を垂れ流す。
その小さな滝の滝壺付近に両手で器を作り水を受けとめる。
バシャバシャと乱暴に顔を洗い、横にある洗濯機の上に置いてあるタオルで拭き取る。
「......よし」
完全に意識が覚醒し、目が開く。
心なしか、鏡に写っている姿も先程までとは比べるまでもなく格好いい。どうせ中の上だけど。
洗面所から廊下へと出ると、丁度リビングから出てきた母親と出くわした。
「あら、今頃お目覚め? もう八時前よ?」
「そりゃあ母親みたいな年寄りは四時頃にはもう目覚めてるんだろうが、オレは若者なの。健全な高校生は、夏休みにはこのくらいの時間に起きるもんなの」
適当に母親の嫌味を受け流し、リビングへと入る。
直後、ダイニングテーブルの椅子に座っている千歳と目が合う。
「おはようございます!」
朝から元気だなぁコイツ。
何でこの時間にそんな眩しい笑顔が出来るの?
「ああ、おはよう」
その挨拶も受け流し、キッチンへと入っていく。
冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出し、近くにあったコップに注ぐ。
その麦茶を喉に流し込みながら再び千歳の前を通りすぎ、テレビ前のソファへと腰掛ける。
すると、千歳がオレに話し掛けてきた。
「そういえば、先程お電話がありまして。昨日、私がお話したユウくんの友人の皆様が此処を訪ねるらしいですよ?」
「ごぶろっ!!?」
麦茶が気管支に侵入した。
何度か咳き込み、苦しみから解放されたと同時に千歳に叫ぶ。
「アイツらが来る!? 何でそんな話になってんの!?」
そう叫んだと同時にインターホンの音が響いた。
焦る気持ちもそのままに、オレは玄関へと向かい、恐る恐る扉を開く。
徐々に広がる隙間と比例して、その姿を現す三つの人影。
「よぉユウ! 遊びに来てやったぜー!」
「お邪魔するね、ユウ」
朝から鬱陶しい笑顔を浮かべる一馬。
人懐こい笑顔の渡。
そして、何故か顔に影を帯びている桐花。怖い。
「お前ら......何故ここに......」
てっきり、夏休みにオレに会いに来てくれることなんかないと予想していた。
「何故って......決まってるだろ?」
呆れたように肩を竦める一馬。
そうか......コイツらは、オレが思っている以上にオレのことを大切に思ってくれていたのか。
夏休みを一人で過ごそうとするオレを心配して尋ねてきてくれたのか......そうか。
「千歳ちゃんがお前の家に居るって言うんだから、来ないわけに行かないだろうが」
............そうか。
「おはようございます、皆さん」
いつのまにか後ろに立っていた千歳が、三人に向かって挨拶をする。
三人もそれに控え目ながらも挨拶を返す。
一馬が「やっぱり美人だよなぁ」とか耳打ちしてきたが、もうお前はオレに話し掛けてくるな。
囁かれた耳を手で払いながら、オレは踵を返し、階段へと向かう。
そのまま階段を上り、自室の前へと辿り着く。
ふと振り返ると、オレの後ろに付いてきている四人。
「......え? 何で付いてきてんのお前ら」
「何でって......案内してくれてたんじゃなかったのか?」
「............」
当然のようにそう答える一馬に溜め息をこぼし、オレはドアを開ける。
オレが入ったあとに続いて入ってくる四人。
恐らく初めて入ったであろうオレの部屋を千歳と桐花、そして渡が見回す。
「なんていうか、物寂しい部屋ね......」
入ったと同時にそう呟く桐花。
「そうか? 普通だと思うけど」
確かに物は少ないが、それでも標準値からは大きく外れていない内装だろう。
「あれ? ユウ、教科書はどこにやったの?」
勉強机の上に何も載っていないのを視界に入れ、オレに尋ねる渡。
「ああ、教科書ならそこのクローゼットの中に押し込んである。何て言うか、ダラけたい時に教科書とか見ると休む気分が無くなるんだよ」
この気持ち、分かってくれる人はいるだろうか。
「まあ、その話は置いといてさ。千歳ちゃんの話を聞きたいなぁー!」
一馬はオレの部屋など興味は無いようで、千歳に夢中だ。まぁ、興味を持たれても困るが。特にベッド下。
「はい! 私もユウくんのお友達の方達ともっとお話したかったんです!」
四人はそのまま床に座り込み、雑談を始めた。
そして、何故か部屋の主であるオレがお茶汲みに遣われるのであった。
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