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昔と今

 次回から、この章でのお話が動き始めます。すぐに次の話も書くので、楽しみに待っていてください!

 お茶汲みから戻ってくると、四人は楽しげに話続けていた。


「へぇー......じゃあ、ユウと千歳ちゃんは十年前に公園で出会ってるのかぁ」


「はい、そうなんです。でも初めて出会った時、ユウくんは私の『千歳』って名前を『ぜんざい』って読んでて」


 入室したオレの顔を見てムスッと頬を膨らませる千歳。しかし、すぐに三人に向き直り、話を続ける。


「それが嫌で、昔は名字から取って『シロちゃん』と呼んで頂いてたんです」


「あはは、何だか可愛い話だね!」


 軽やかに笑う渡。

 一馬はその話を聞いて、オレにからかうような視線を送ってきた。


 ただ一人、桐花は千歳に対して警戒心を剥き出しにした表情を先程から維持している。


「その出会いから約半年間、ユウくんは病弱な私を気にかけてよくお見舞いに来てくれたんです」


「へぇ、ユウも女の子と交流があったんだなぁ」


 意外そうに言う一馬。いや、そりゃあるだろ。

 一応、十七年の人生を積んできているワケだから。


 オレは座っている全員の前へとお茶を配り終え、桐花の隣へと腰を落とした。


「おい桐花。何で此処に来たんだ? 一馬と渡は千歳に会いたかったからかもしれんけど、お前はどうなんだよ?」


 男が美人に興味を持つのは理解できるが、女である桐花がそこまで千歳に興味を持つとは思えない。


 桐花は反応せず無表情な顔を伏せていた。


「? どうし─────っ!?」


 突如右太ももに感じる激痛。

 見ると、桐花がオレの足をつねっていた。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」


 五秒程つねられ続け、ようやくオレの足が解放される。


「何してくれてんのお前?」


 若干の怒りを込めて抗議する。

 桐花はやはり暫く顔を伏せていたが、やがて満面の笑みを帯びた顔を上げて......


「自分で考えてみてくれない?」


 それだけ言って、そっぽを向いてしまうのであった。

 オレは理不尽な暴力の犠牲となった太ももを撫でる。


「──────それで、彼は『私を幸せにする』と約束してくれたんです」


「「おおーーーー」」


 どうやらオレと桐花が争っている間に、全てを話し終えたらしい。これでまた一馬から茶化されるネタが増えてしまった。

 

「ふーん......それで貴女はこの町に......ユウに会いに来たってわけね」


 オレを攻撃している間もしっかりと話を聞いていたのか、桐花が理解しきった顔でそう呟く。


「はい、その通りです」


「......でも、貴女はもう振られたんでしょ?

なのに、何故諦めないの? それほどユウのことが好きなの?」


 桐花の質問が千歳を襲う。しかし、それに動じることなく千歳は笑顔で微笑みかける。


「勿論です。あの頃の、孤独だった私を救ってくれた唯一の人がユウくんですから。あの時の喜びを、幸せを忘れたことはありません」


「............そう」


 桐花はその千歳の姿を見て口を閉ざした。その桐花の表情からは、納得とはまた別の感情が渦巻いているように見える。

 桐花はそのまま口を閉ざしてしまった。


 再び始まる一馬からの質問攻め。千歳は嫌な顔一つせず応対している。

 その質問の内容は、主にオレとの関係性のようだ。


「ねえ、ユウ......」


不意に、横にいる桐花から声を掛けられる。


「? 何だよ」


 太ももを警戒しながら返答する。


「ユウは、その......約束を果すつもりは、今でもあるの?」


 どこか悲しそうに尋ねてくる桐花。


「......ああ、あるよ」


 嘘を吐く理由もないため、正直に答える。


「? じゃあ、何であの子を振ったの?」


 怪訝な顔をしながら尋ねてくる桐花。

 千歳達は三人の会話に夢中で、オレ達の話を聞いている様子はない。


「簡単な話だろ。オレにその資格が無いからさ」


 正直に答える。


「資格?」


 合点がいかないようで、桐花の怪訝な顔は変わる様子がない。


「人を幸せにする権利ってところだな。まぁ、正直な話、オレよりも優秀で、性格が良くて、将来有望な人間なんて幾らでもいるだろ? ソイツらと結ばれれば、より幸せなんだろうって思うんだよ。だから、オレはアイツを振り続ける。それがオレの約束の果たし方だ」

 

 まぁ、それは小さな理由に過ぎないが。


「卑屈な考え方ね」


「放っといてくれ」


 一応納得したらしく、桐花はそれ以上追及することなく引き下がる。

 そして、そのまま千歳達の話に加わった。


「それで? 他にはどんな話があるの?」


 先程までの警戒心はどこへやら。

 すっかり楽しそうな顔で千歳と話し出す。


 四人はオレに構うことなく、そのままお喋りを続けた。



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