裏の物語3
烏珠俾涅華は生き物がとても好きな女の子だった。
親も俾涅華が生き物好きであることを分かっており、お金が入り、時間に余裕があれば、ペットショップに連れて行った。
俾涅華は様々な生き物に触れ、どんどん好きになり、どんどん詳しくなっていった。そのため、飼育が困難と言われるペットすらも難なく飼いならした。それに係る費用については親は目をつぶるしかなかった。それだけ俾涅華の動物愛が凄かったのだ。
ある日、俾涅華は家族と一緒に父の実家を訪ね、其処で何日か泊まった。父の実家には猫が数匹おり、俾涅華はとても喜びながら猫を世話していた。
帰りの日、1匹の猫が急死した。その猫はかなり年老いており、こうなることは想像に難くない。それでも俾涅華は自分の世話の仕方が悪かったのではないかと思ってしまうのであった。
家に帰ると、今度は俾涅華が飼っていた猫が死んでいた。かなり悲惨な死に方をしていた。腕が逆向きに曲がり、歯が廊下に散らばっている。他にも痛々しい外傷が見られる。確かに俾涅華も猫や犬、その他の動物を飼ってはいるが、あまり喧嘩なんてしたことない。それどころか仲が良いくらいだ。
「ねぇ、お父さん。出かける時、ちゃんと戸締まりした?」
俾涅華は家に泥棒が入ってきて、それを撃退するために猫が懸命に戦ったのではないかと考えた。この猫はマコという名前で、古参の方である。それ故に、家に対する愛着はかなり強い。
時には家族以外の人間に襲いかかったこともある。ペットの新人に1番厳しいのもマコだ。
「ちゃんとしたよ。だから、帰って鍵をあけたじゃないか。」
それを聞いても、泥棒が来たという説が拭えない。
その理由の1つとして、ペットたちが執拗に俾涅華に構ってくるのだ。アキラという名前の犬も、帰って来た途端に俾涅華に近づいて来て、吠えだした。勿論、久し振りに会えたことにも起因するのかもしれないが、それ以上に何か、メッセージ性のあるスキンシップに思えてならなかった。
1日で俾涅華は2匹の猫の死に対面し、精神的に落ち込んだ。これまで何度かペットの死に直面してきてはいるが、今回のような死に方は体験したことがない。
それからというもの俾涅華達が出かける時に限って、ペットが1匹ずつ死に始めた。流石に親も不思議に思い、警察に連絡し、防犯カメラ等を調べたり、張り込みを行ったりしたが誰も俾涅華の家に入ってこなかった。
しかし、それでも俾涅華達が出かけるとペットがまた1匹と死んでしまう。
この状況に俾涅華は恐怖心を持ち、ペットを守れなかった罪悪感が湧いた。
そこで、俾涅華は次に出かける時に1人だけで残ることにした。
その日はやってきた。親と警察は心配し、ペットと一緒に出かければいいと説得したが、俾涅華は断った。
「そんなことしたら、これまでの子達が可哀想だよ。危なくなったら、皆を外に出すから、その時はお巡りさん。よろしくね。」
その時の俾涅華の顔はこわばっていた。けれど、決心を固めた顔にも見えた。その様子に親と警察は渋々頷いた。
「しかし、お願いだ。俾涅華ちゃん。絶対にカ―テンを開けて、何かあったら何かしらの行動で知られせてほしい。例えば手で丸を作ったりしてね。これは皆を守るために必要なんだ。絶対、お願いだよ。」
「うん、分かった。」
俾涅華は部屋に戻り、ペット皆を布団に隠して自分も一緒に隠れた。
30分後、それが姿を現した。俾涅華にはよく見えていないが、何かが床から出てきたというのは分かる。
「なに………………あれ…?」
なるべく声を抑えながら、警戒する。
見た目はだいたい30cmくらいで白と黒、そして赤を基調とした、ピエロである。薄っすらと見えるのはそれくらいで、目を閉じたら見失いそうだ。
「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!」
いきなりピエロが犬のマネをして、吠えだした。
「え…。いや、あれは……。」
生き物の中には他の生き物の真似をして、狩りをするものもいる。
もしかしたら、あれもその類かもしれない。
急いでアキラを撫でて落ち着かせる。が、そんな心配はいらないかのようにアキラは非常に落ち着いていた。
「……いい子ね…。」
アキラに視線をやったことで、ピエロを見失ってしまった。犬の声は聞こえるが何処にいるのか特定できない。
「キャウン!?」
突然、アキラが天井くらいまで飛んだ。
「アキラ!」
アキラは床に勢いよく落ちて、バウンドした。普通に落ちるだけではあり得ない現象だ。
急いでアキラに近寄るが、アキラはあっち倒れたり、こっち倒れたりで中々、保護することができない。なんとか抱きしめることができても、すぐに腕から離れてしまう。
「アキラ!アキラ!」
俾涅華はパニックになってしまい、目の前で傷つけられているアキラを守ることしか考えきらなくなった。
「嫌!いやぁぁぁぁ!」
どんどん内臓が剥き出しになり、関節が逆方向に曲がるアキラは俾涅華の目に、耳にはアキラと悲鳴と、アキラそっくりで元気のよい声が焼き付いた。
2分程で異変を感じた警察が到着したが、その頃にはアキラは見るも無惨な姿になって、俾涅華は放心状態になっていた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「そんなこともあってね、俾涅華は誰かが傷つけられているのを見ちゃうとトラウマを思い出して発作が出ちゃうの。」
俾涅華の母親は灯が俾涅華の前で暴力を受けてはならない理由を話した。この事情は俾涅華が苦しみながら話したことらしく、本当のことかどうかは分からないらしい。
「こんなことをあなたに言うべきことじゃないのは分かってるの。でも………」
「いや、大丈夫です。彼女の状況に比べれば、僕のなんて大したことじゃないですよ。」
灯が苦しいのは事実だ。だが、その苦しみは目の前で家族を無惨に殺された苦しみに勝るだろうか。いいや、勝らないじゃないか。
自分が失ったのは、周りからの信用だ。家族と違って取り戻すことができる。その上、自分のことに手一杯になって周りの誰かのトラウマを抉るなんてごめんだ。それは絶対にやっちゃいけないことだ。どんな理由でも誰かを傷つけるのはやっちゃいけない。
「その件、家族の他に誰か知ってるんですか?」
「えぇ。友達には伝えてあるわ。」
「………それは良かった。友達もきっと彼女を守ってくれる。あとは」
僕が戦うだけだ。いつまでもやられっぱなしじゃ駄目だ。
「ねぇ、灯さん1つだけ注意しとくけど、自分の不幸を他人と比べちゃダメよ。特にあなたみたいなタイプは絶対に自分の方を下にしちゃうんだから。」
「あ、あぁ、ごめんなさい。気をつけます。」
それは確かに言えてる。灯は自分のことを謙遜したがるタイプだ。
「でも、ありがとう。あなたの協力は感謝してもしきれないくらいよ。だからね、辛くなったら、いつでも病院に来なさい。私が相談に乗るわ。今回のいじめも出来る限り解決に向かうようにしてみるから。ちゃんと、人を頼るようにね。」
「ありがとうございます。心強いです。……それと、ごめんなさい。僕、俾涅華さんのこと加害者側だと思ってました。人のことも知らないで勝手に。」
謝らなければならない。灯の責任感がそうさせた。
それを聞いて、俾涅華の母親は優しく灯の頭を撫でる。
「それは、俾涅華も分かってることよ。その上でどうしたら、自分のイメージを変えれるか、考えてたわ。でも、その難しさも俾涅華は分かってる。だから、誰もあなたを責めはしないわ。あなたが疑心暗鬼になるのは分かりきったことだもの。」
今でも、加害者ではないという説は完全には認めることはできない。その理由は曖昧なもので、気持ちの問題だ。
だから、多分これから払拭できるかもしれない。逆に今までみたいに変に気を遣わせるのは嫌だ。
俾涅華の母親が挨拶を済ませ、灯の部屋から出ようとした時に灯はふと思い出したように言った。
「そういえば、僕が倒れた時に、運んでくれた人とかって聞いてますか?」
「えぇ。確か、徳田さんだったと思うわ。」
「…………あ、ありがとうございます。」
心がほっと温かくなった。
俾涅華の母親が行った後、灯は少し嬉しくなって、
「やる時はやってくれるのか……ハハハ。」
1人、ほほ笑んだ。
「俾涅華の話に出てきたピエロって、あいつだよな……。」
話の内容を整理して、灯はあることに気付いた。
昨日の朝に会ったピエロである。
言っていたことはよく分からなかったが俾涅華のペットを殺した犯人があいつなら、後継者になるなんて考えたくもない。
だが、あいつだとして、目的は何だ?
そもそも何で俾涅華の家を知っている?
「後継者探してて、偶然、俾涅華を見つけてストーカーした?」
そして、家を見つけたがペット達に邪魔されたから、殺した?
だが、だとしたら、何故、外出時に1匹ずつ殺す必要がある?
1匹1匹殺していくと聞いて真っ先に思い浮かぶのは快楽殺人だ。今回は動物だが。なんなら、ピエロだ、快楽殺人をやっていてもおかしくない印象がある。
「そうだったら、野放しにすることもできない………。」
快楽殺人だ。動機なんていくらでも見つかる。もしかしたら、既に人間も殺しているかもしれない。
「おい、だとしたら、待てよ……。」
1番近くにいる雲秋が危ない。雲秋のことだ、ピエロの言うことを疑わずに聞いているに決まってる。そんなのピエロの思う壺じゃないか。
「何とかして、引き離さないと…。」
自身の命の危険もあるが、保健室に連れて行ってくれた恩を無下にはできない。
昨日の感じだと、幸い話はできそうだ。話合い以外で解決するなら戦闘もあるだろうが、中学生があのピエロを倒せるだろうか。今、判明している能力は小さくなれることと、姿を消せること、そして、動物を見るも無惨な姿に変えることが可能ということだ。
「……無理だ。なんとしても話合いでケリをつけるしかない……。」
そして灯は話す内容を考え始めた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「残念なお知らせだ。冬のクラスマッチ、ドッヂボールは止めになった。代わりに持久走だそうだ。」
「えぇー!」
クラス内で困惑の声が多く見られる。
「まぁ、負傷者が出ちまったからなぁ。偉い人がこうしたいんだとさ。」
「チッ。またあいつか……。迷惑かけんの好きだよなぁ、あいつ。なぁ。」
勝が周りの男子生徒の共感を買おうとする。灯がいない今、勝の意見を否定するのがどういう意味か殆どの生徒は理解しているだろう。
だから、殆どの生徒は共感の意を示すしかない。
「ははは。言えてるな。自分で突っ込んでこれだからなぁ。何がしたいのか、先生分かんねぇなぁ。」
真相を知っている一部の生徒は先生のこのコメントに苦笑いだ。
その後もほぼ灯への嫌味で帰りのHRは終わった。
先生が教室から出ると、早速、星乎や勝、その他の男子生徒が集まって愚痴を言い合う。
そんな中、雲秋はそそくさと鞄を持って、教室を出ようとしていた。
「なぁ、雲秋。お前、あいつの見舞いとか行かねぇの?」
星乎に突然、話しかけられる。何か知りたいことがありそうなので、雲秋は返答した。
「行かないね。どうしてかな?」
集まった男子生徒内で笑いが起こる。
「ウッソだろ、お前。あいつのこと心配じゃないのかよ。」
笑いと困惑を交えた様子で星乎が問いかける。
「そうだね。後遺症が心配だ。けれど、僕が行ったとて、後遺症は回復するものじゃない。第一、彼自身が迷惑だと感じることをわざわざするつもりはないんだ。」
少し空気がピリつく。雲秋本人は気付いていないが、何かが星乎たちの琴線に触れかけているのだろう。
「どの口でってんだ。それより、これ、あいつに渡してくれよ。」
そう言って渡されたのは手紙だ。きちんと封筒に入っていて、『灯へ』の文字もある。ただ1つ不思議なのは封筒の下部に凹凸があることだ。それもよく見ると2つに分かれているように見える。
「構わないけど、君達から渡すものでは無いのかい?」
星乎がわざわざ手紙を書くということは、其処までして灯に伝えたいことがあるということだろう。ならば、直接、言いたいことが言える対面で渡す方が良いのではないか。
それとも、これは雲秋が渡すからこそ意味があるのだろうか。
「いやいや、俺達はいいよ。どっちかっていうと、お前等みたいに仲睦まじい者同士でやる方が、そうだな、お前風に言うと、意味があるってんだ。」
成る程。どうやら後者だったようだ。
だが、意味があるとして、それは一体どういうものだろうか。そこまで考えた時、雲秋は疑問を抱いた。彼等にとって灯をいじめることこそ、意味のある行いの筈だ。で、あれば今回のも同様であってもおかしくはない。
また、今の雲秋にとって、灯が傷つけられることは望ましくない。
「意味と意味のぶつかり合いか…。……ところで、これを渡して灯君が……」
「安心しろって、俺達もこれ以上いじめるつもりねぇから。いくらなんでも可哀想じゃねぇかよ。なぁ。」
周りの男子達が賛同する。彼等は仲良くなる方向に考えをシフトしたのだろう。新たな意味を彼等は見いだしたのだ。
「了解。君達の今後の行動方針も彼に伝えておくよ。」
周りでどっと笑いが起きる。星乎も堪えきれなくなり、笑い出した。
「おう、頼むよ、アハハ、駄目だこれ、笑いが止まらねぇ、アハハ。」
結局、雲秋は星乎から貰ったものを灯に渡すことにした。
「雲秋君!」
学校からの帰り道、背後で声がした。女の声だ。黙って振り向くと、そこには烏珠俾涅華がいた。
「お見舞い行かないって本気なの!?」
「本気だよ。」
俾涅華の問いに簡潔に答える。
「理由も、さっき言ったことと同じ?」
「そうだよ。」
きっと彼女にとって雲秋に何かを問いただすことが意味のある行いだ。それを否定するわけにはいかない。
「……灯君が今、どんな気持ちで入院してるか、考えたの?」
「勿論さ。おそらく、彼は悲しんでいる。そこに僕が水を差しに行っては、更に彼が悲しむだけだと思うよ。」
俾涅華は雲秋の答えに少し呆れてしまった。
「そんな時だから、心の支えになる雲秋君が行ってあげないといけないでしょ!そして、それ、本気で渡す気?」
それが指していたものは先程、星乎から預かった手紙だ。渡すことに意味があるのだから渡さぬ道理はない。
「本気だよ。」
「もういい!貸して!」
そう言って、強引に手紙を取って開ける。
中身を見た、その刹那、俾涅華の頭は真っ白になった。傷ついている灯を無視しようとする雲秋を止めようと来たつもりが、その目的を忘れてしまうに至る。
身体が無意識に震えだし、鼓動が速くなるのを感じる。
死んだマコやアキラ達の顔がフラッシュバックし、恐ろしい形相で近づいてくる。
「大丈夫かい?」
雲秋は突如、おかしくなった俾涅華が心配になり、近づく。
「やめて…………近づかないで……、ごめんなさい…………。」
雲秋は言われた通りに離れ、そのまま帰ってしまった。
この男はトラウマというものを知らない。たとえ知っていたとしても同じ行動をとるだろう。
何故なら、灯の時もそうだったように、助けるべき相手が自分を拒絶した場合、その時点で自分の行動に意味は無いと捉えるからだ。
俾涅華は数十分後、なんとか落ち着いたは良いものの、目の前には手紙も雲秋もなく、自分の吐いた嘔吐物と涙が滲んだ地面があるだけで、ただ後悔の念に苛まれるだけだった。
「どうして………あんなことが出来るの………。」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
退院日になった。
特に不快なこともなく、入院中は過ごすことができた。
唯一、親からの説教が2時間近く続いた日は不快というより、苦しかった。何せ2時間近く、灯の存在を否定するようなことを言われ続けるのだ。反論したら、さらに追い打ちをかけられるだろうし、黙って耐えるしかない。これがかなり精神的に参った。しかし、親が帰った後、俾涅華の母親が駆けつけて、灯の話を聞いてくれたことが受けたダメージの回復に繋がった。やはり、人に相談するのは良いことだと、この時、実感することができた。
「あいつ、来なかったな……。」
1人だけ、お見舞いに来そうな人物を知っているが、その人物は一度も顔を見せなかった。それが余計に不安感を募らせる。
「あいつ、まさか、殺されてないだろうな………。」
本当に嫌な想像が頭をよぎる。あのピエロの本性が快楽殺人犯だと言うなら、いつ、どこで殺しても何も不思議ではない。
幸い、明日から学校だ。明日の時点で雲秋の安否は確認できる。そう思うと余計、緊張してしまう。もし、明日、雲秋がいなかったら……
「ダメだ。こんなことばかり考えてちゃ。明日から色んなことに立ち向かわないといけないんだから…。」
荷物を纏めて、病院を出る。
「いつでも、頼っていいからね。」
俾涅華の母親だ。病院を出る準備を手伝ってくれた。その上、見送りもしてくれるという。本当に世話をかけ過ぎた。けれど、後悔や情けなさよりも感謝が勝つ。
「はい。そうならないことを願いたいですけど、もしもの時は頼らせてもらいます。」
「うん。頑張って。」
「ありがとうございます。頑張ります。それでは。」
別れを告げて、病院から帰る。親は仕事である為、迎えには来ない。
「家……か。」
少し憂鬱だ。これから、ずっと存在を否定されるわけだから。
「でも、戦わないと。憂鬱だからって諦める理由にはならないじゃないか。」
そうだ。戦わないと。対策は病院内で話し合って色々と立てた。ならば、後はそれを状況に応じて使い分けるまでだ。
顔を叩いて、気合を入れる。
「よしっ、やるぞ!」
灯は勢いよく一歩を踏み出した。
「それで?私の後継ぎはしてくれるのかい?」
!?
急だ。あまりにも急すぎる。このタイミングでピエロだ。
周りを見渡すとやはり、背後にピエロはいた。そして、隣には雲秋がいる。
これはまるで……、二人で手を組んでいるようではないか。
「雲秋君は……、大丈夫かい?何か……、」
震えそうになるのを堪えて、ひとまず、雲秋の安全を心配する。
「あぁ。僕なら心配しなくていい。それよりも、クリエイターの質問に答えてあげて欲しい。」
雲秋は表情にも態度にも感情を出さないため、自分の意思が脅されているのか、判断がつかない。
「クリエイター………。お前は、お前の目的は何なんだ……。」
「さっきの通りさ。後継者になって欲しい。これだけ。」
違う、そういうことじゃない。そんなこと、言われなくても分かってる。
「………僕を後継者にする理由だ……それを聞いてる…。お前は何をするつもりなんだ……。」
クリエイターは大袈裟な素振りで考え込んで、パッと思いついたように元の姿勢に戻った。
「強いて言えば、君がいじめられていたからかなぁ?その点。やっぱり、私と近いものがあるんだよ。」
「僕と、お前が……近い…?」
冗談じゃない。いじめだけで、こいつと一緒な訳がない。
「でも、今、君、今の君はいじめに立ち向かおうとしているように見えるんだ。その点は私と違う。が、どれだけ君が戦っても無駄に終わるのは目に見えている。だから、結局は私と同じだね。」
「僕は!僕は動物を殺したりなんかしない!僕はお前と同じなんかじゃない!」
言った後で、危険を感じる。後先を考えず、感情で言ってしまった。でも、灯はどうしてもクリエイターと一緒にされるのだけは気に食わない。
「私は君の前で動物を殺したかい?」
ここまで言って、クリエイターが逃がしてくれるとは思わない。ならば、徹底的に問い詰めてやる。せめて、真相だけでも知りたい。
「いいや、でも、お前は昔、人の家のペットを惨殺した筈だ。僕はそれが許せない。」
頭の装飾をクルクルと回して、思い出す素振りをする。
「悪いけど、記憶にないなぁ。」
「えっ………。」
捻り出された答えは灯を困惑させるものだった。




