裏の物語4
「え?と言われても。身に覚えがないものはしょうがないだろう?」
そんな馬鹿な。出鱈目だ。小さなピエロなんて超能力じみた能力を使うクリエイターしかあり得ない。
まさか、ピエロは他にいるっていうのか?
「なら、お前みたいなやつがまだ、日本に来てるってことなのか?」
カランカランと頭の装飾を揺らし、首を横に振る。
「いや、それはないね。ここにいるスカウターは僕だけだ。パーティシペイターなら来てるかもしれないけど。だが、昔の話となると僕以外はいないはずだ。」
おかしい。クリエイターしかいない筈なのに、クリエイターは覚えていない。そんなことがあり得るというのか……?
いいや、まだ可能性はある。
「お前、記憶喪失じゃないのか?容疑者はお前しかいないのに、その本人が覚えてないんだ。そうじゃないと説明がつかない。」
クリエイターの布に描かれている表情が表れていない顔が驚きの表情へと描き変わる。
不気味に感じつつも目を逸らさずクリエイターの顔を睨みつける。
「へぇ。よく気付けたね。勿論、その可能性は否定できない。理由の説明は必要かい?」
驚いておきながら、まだ試すような口調を崩さないクリエイター。表情と不釣り合いな感情に警戒心を抱いているが、理由を聞かない訳にはいかない。
折角、ここまで問い詰めたんだ。
「あぁ。教えてほしい。」
驚きの表情は消え、再び真顔に戻る。
「クリエイターや、パーティシペイター。これらは本来、特定条件下でなければ今みたいに現世と関わることはできない。因みにだけど、今はその条件を満たしてはいない。しかしながら、今、こうして君達と話すことが出来ている。何故か?身体を創り変えているからだ。私達の身体はイメージで形成される。イメージ次第で、ルールの超越が可能だ。その上、身体を何度でも創り変えることができる。ただ、その際に神経系が不具合を起こして記憶が抜けてしまうことがある。これがカラクリさ。」
……こいつが嘘をついていないと言うのなら、つまり、俾涅華のペット達を惨殺した後に姿を変えたことで記憶を失ってしまったということがあり得るわけだ。
だから…これ以上聞いても、覚えていない以上、動機も何も分からない…。
悔しさで奥歯を噛みしめる。
「満足かな?なら、私の質問にも答えるべきじゃないかな?親切丁寧に教えてあげたんだ。次は君のターンだ。灯君。」
先の情報すらまとまに咀嚼できてない段階でまた、別の課題を与えられる。
頭を切り替えて考えなければ…。
「悪いが、僕はなるつもりがない。クリエイターのやることが分からないのは勿論、誰かの幸せを奪うことがクリエイターの役割に入っている可能性もある以上、僕はそんな最低なことはしたくない。」
クリエイターは冷ややかな視線を向ける。だが、なんとなく、その視線の対象は僕ではなく、別の誰かのような……。
「君の答えは聞いた。ただね、少し面倒なことになった。もうちょっとだけ付き合ってくれ。」
灯と雲秋を懐にしまい、クリエイターは高く跳躍する。
近くの建物の屋上に着地し、また、跳躍する。
これを何度か繰り返すと、先の場所とはかなり離れた場所に着地した。
「う〜ん。まずったな。そういえば、君はパーティシペイターになってくれるんだったか?」
クリエイターの顔が雲秋を捉え、そのまま襟首を掴んで懐から放り出す。
「おい!彼に何をするつもりだ!」
僕は慌てて叫んだ。やはり、こいつは雲秋に何かするつもりだった。
パーティシペイターがどうこうと言っていたから殺しはしないだろうが、クリエイターと同じようなものにされるのなら、全力で阻止しなければ。
「彼には既に許可は取ってある。これは彼の望んだことだ。」
放り出され、仰向けに倒れている雲秋を黒い霧が覆う。
そこに、空から白銀の装甲に身を包んだ何者かがマントを翻して登場する。
乳白色のビー玉を白味がかったグレーの棒で挟んであるかのような無機的な頭部に鋭利な形状が度々見られる鎧。
そんな存在が僕達の前に降り立った。
対して、黒い霧が包んでいた雲秋はすっかり、霧が晴れて、金属光沢のある黒ミイラのような姿となって、まるで目の前の白銀の存在と対峙するかの如く立ち上がった。
「……まさか…」
「さぁ、やってしまってくれ。雲秋君!」
「馬鹿な真似を…」
嘆息を溢した白銀の存在に、僕の最悪の予想通り、雲秋は突っ込んで行った。




