陰の物語6
「さて……これからどうしようか…。」
奇行に走り、先生から帰ってくるなと言われたため教室に戻るのはかなり気まずい状況だ。
一先ず状況を整理し、脳内の掲示板に纏めてから姿を液状に変えトイレに隠れる。衛生面は最悪だが背に腹は変えられないというやつだ。
『いっそのこと不良キャラを通せばいいじゃないか。』
そんなことをしたら親から何と言われるか……。矯正とか言って暴力を振るって来るかもしれないじゃないか。
『いやいや、君の親はクソだ。死んでも誰も悲しまないさ。』
そういう問題ではない。人殺しなんてそもそもやるべきではないのだ。
『1人殺しておいて熱いね君は。そんな君に悲しいお知らせだ。条件の発動は君が逃げれば良いってものじゃない。雲秋君側で行動を察知されたら条件は勝手に発動する。』
つまりは僕が雲秋の近くにいようがいなかろうが雲秋の近くで条件が達成されたら雲秋は殺すことができるというわけか…。常に監視する必要が出てくるな……。
身体の一部を分離し、教室に向かわせる。前任者の欠片が見張っていると言えど、こいつの感性が壊滅的に終わってるため信用ならない。自分で監視し、指示を出す方が余程ましだろう。
『イメージダウンが酷いものだ。それで?これからどうするつもりだい?』
ホームルームが終わり次第教室に向かう。これが一つだろうが、周りの目がさぞきついだろう。
だが、不良キャラを通すよりはこちらの方がいい。
最悪、皆の前から姿を消すというのもありだ。姿が自在だから衣は不要だし、食事がいらないのだから食も不要だ。それに液体になっておけば何処にでも侵入できる以上、住も不要。困ることはないわけだ。
(灯君かい?ホームルームは終わったよ。)
どうやら僕の身体の一部が雲秋の元に辿り着いたらしい。そして、この反応から察するに
(あぁ、話の内容は全て聞いている。君が僕を監視して、君はこれまで通りに生活する。これに意味があるということだね。)
間違ってはいないが気に食わない。まぁ、いい。ヤバいやつと思われるだろうがそれで人が近づかなくなるのなら万々歳だ。一旦、教室に戻ろう。
人間体に戻り、脳内の目立つ所にある掲示板で状況を確認し、行動方針通り教室に向かう。
「あっ、灯君!ちょっといいかな。」
僕の教室から出てきた女子生徒が近付いてくる。誰だ。この生徒は…?
掲示板をいくら眺めても生徒に関する情報はいじめっ子2人と雲秋のみだ。
「私のお母さんの様子が変になってるんだけど、入院中に何かおかしな予兆みたいなのはあった?急にお人形みたいになった……みたいな…?」
「いや……知らないな……。ごめんね……。」
その言葉を聞くと残念そうな顔で立ち去って行った。
彼女と彼女の母親については知らないが、最後の言葉には身に覚えがある。
初変身の時に助けた女性は確かに人形のようになってしまった。
いや…もし、彼女が母親だったとしてもどう説明したらいいんだ。
変に説明しても困惑されるだけだろうし、何よりも僕の中の何かが説明してはいけないと拒絶反応を起こす。
むしゃくしゃした気持ちを押し殺し、教室に入ると予想通り冷たく鋭い視線が僕を刺し殺そうと言わんばかりに飛んでくる。
その痛さを我慢して自分の席を見ると椅子が無いことに気づき、続いて教科書や筆記用具等の荷物を入れているバッグが無いことにも気付いた。
「……………ッ…。」
『誰の仕業だい?』
(怒った先生が窓から駐輪場側に落としていたね。)
『君というやつは……。君が止めなかった理由が何も言わずに伝わってくるよ。というか、それは条件を達成しなかったのか……?』
ショックで沈んでいた思考が前任者の発言ですぐにクリアになる。そうだ。これは条件を満たしているかもしれない。
(TARGETの文字は出ていないようだった。)
ふぅ…。そう安心してしまった時である。
「出てけッ!」
バコン―――――
誰かが投げた上靴が僕の頭に直撃した。
(今、TARGETの文字が出たみたいだ。)




