表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティシペイタ― オブスキュア  作者: 後出しジャンケン
1章
PR
13/15

陰の物語5

学校に着いて下駄箱を見てみると上靴が消えていた。


そこで、自分がいじめられていたことを思い出す。人を殺す罪悪感に比べれば、いじめられる辛さは何ともない。


「なぁ、君はこれをどう思う?」


下駄箱を親指で指して雲秋に聞いてみる。


「意味があることだと思うよ。」


予想はしていたが聞く相手じゃなかった。きっと彼は全ての物事に大切な意味があるとばかり思っている。


人を殺す役割についてもそうだ。前任者が理由を述べていたにも関わらず、まだ意味を持つものだと認識してしまっている。


多分、そこが僕と彼でズレているんだ。だから考えが合わないことがある。


『上靴がないなら創ればいいじゃないか。この力を持った君にとっていじめっ子は最早カモ同然だよ。』


前者は同意できるが後者は同意できない。僕は別にいじめっ子に復讐したいなんて思っていない。


だけど、さっきの事例があった以上、いじめられることは避けた方がいい。そうじゃないと、きっといじめっ子達を殺してしまうことになる。


『ホント、ドライになれないねぇ。君は。』


「人殺しを容認できるわけがないだろう。ドライか否かっていう問題ですらない。」


それも人を使って殺すんだ。それこそ許せない。あの殺人を詳らかに証明できるなら今すぐにでも出頭して死刑になりたい。



前任者の助言に従い上靴を創って教室に向かう。時刻は8:00前、そろそろ朝礼が始まる頃だ。


ガラガラっと音を立てて教室の扉を開ける。

すぐに生徒達の鋭い視線が僕を刺す。


「お前遅刻だろ!先生っとこ行って反省文書いてこいよ!」


1人の少年が声を上げて僕を非難する。

まだ、先生も教室に来ていないのに中々の物言いだ。

それに、彼は誰だ?隣にいるもう1人の男子は分かる。今末星乎(いまずえほしや)、僕をいじめた張本人だ。


『君をいじめてた主犯は2人と言うわけさ。君が覚えている今末君と石田君、丁度さっきのデカい声の奴だね。』


僕はそんなことも忘れていたのか…。

姿を変える前にこれまでのことを記録に纏めておく必要性が出てくるな。

前任者は正直、信用できないし。

 

『心外だな。』


前任者の小言と石田の大言を無視して席につく。雲秋は既についている。


「はぁッ!?お前マジで何様のつもりだよ!お前のバカのせいで何人が迷惑したと思ってんだよ!」


これはキレているのか…。おそらく僕が何か悪いことをしたのだろうが、その記憶がない。


「どうした、どうした石田。そんなデカい声出して。」


ガラガラっと前の扉が開き先生が入ってくる。

視線は先生の方を向いたり、石田の方に釘付けだったりに分かれる。


「いや、あいつ。俺達のクラスマッチ潰しておいて謝りもしないんですよ!それに自分は悪くないみたいなことも言いやがって舐めてますよ!あいつ!」


成る程。僕の入院の原因はそれか。何かのスポーツをしていて、僕が負傷して入院。危険と判断した学校はクラスマッチを変更、あるいは中止した。


断片的な記憶を繋ぎ合わせて上手く結論を出せた。


「まだ、(ともしび)には伝えてないからなぁ。知らなかったんだ。だがなぁ、お前のせいでクラスマッチがドッヂから持久走に変わったんだ。謝罪くらいしたらどうだ?ホラ、立て(ともしび)。」



きっと僕にとっては冤罪なのだろうが、特別高いプライドはない。頭を下げるだけで解決する事案ならば1000回だって下げてやってもいい。


『謝っちゃダメよぉ〜ん。ともちゃんは悪くないんだからぁ〜ん。』


「ブッ…。…………………。」


何だ…。何だ今のは。

今まで聞いていた声とは程遠いネットリとして湿度の高いオネエボイス…。それも、柄にもなく前任者が…。何がしたいんだこいつは…。思わず笑ってしまったぞ……。


急に、目の前を白い物体が通り過ぎ、背後でパーンと何かが崩れた音がした。

驚いて見るとどうやらチョークが割れたようだ。


「お前。マジで舐めてんのか?人の大事な時間を奪ってヘラヘラしやがって。皆の気持ちを考えてみろよ!あぁ!?」


先生の怒声が教室内に響き渡る。


そんなことよりも、やりやがったな前任者……。


『いんや。失敗だよ。君に気付かれた時点でね。それでも一応、ダメ元で彼を煽るようなことを言ってくれないか?手を挙げないと気が済まなくなるくらい強烈な一言を。』


できるか!

何故そんなことがしたいのかは分からないが、こいつは先生に僕を傷つけさせてパーティシペイターの役割を強制発動させるつもりだ。どうでもいいが、声はいつも通りだ。


『何故って。苛ついたからさ。彼みたいな奴は死んだらいい。ハッハッハ。』


笑い事ではない。

先生は教卓を叩き、青筋をピキピキさせながらこちらへ向かってきている。


先生が僕に手を挙げた時点で先生の死は確定だ。

どうする?避けるか?いや、避けたとしてもか…?幸い、雲秋が動いてない以上、条件は達成されてない。

とはいえ、何が起点になるのか分からないことも事実だ。


ええい!だったら!


僕は椅子を引いて、先生が僕の席に着く前に教室の外へ走り出した。


「2度と戻ってくんな!キチガイがッ!」



許さねぇぞ!お前ぇぇぇえッ!


僕にはプライドが無いと言ったがあれは嘘だ。教室から走って出ていく奇行をするのは流石に恥でしかなかった!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ