陰の物語4
再び吹き飛んだ雲秋に追いつき空高くへ殴り上げる。
僕も空中へ上がり雲秋を近くの川まで蹴り飛ばし高い水飛沫があがる。
そこを目掛けて踵落としを入れると丁度雲秋の腹に直撃し川の水が円を描いて振動し、土手の方まで溢れた。
「何が!何が意味だッ!何の意味なんだよッ!人を殺しておいて何処に意味があるんだよッ!」
腰に跨り頭を殴る。殴る度に雲秋の頭が川の地面にめり込んでいく。
『あ〜あ。致し方ない雲秋君。彼に君の実力を見せたまえ。それはきっと両方にとって意味のある行動になるだろう。』
「了解」
その言葉と同時に消えた…いや、液状に変化し、分散した雲秋は戻って来つつある水の中に溶け込み僕の周囲をグルグルと回る。
そして僕の背中に液体の一粒が発射され、ぶつかったかと思えば寄生虫のようにウネウネと僕の体内に入り込み爆発して僕の背中を大破させた。
「チィッ!」
僕の怯みを利用し、次は僕の顔に発射される。
侵入されまいと手で雲秋を払い除ける動作のために右手を顔に持ってくる。
しかし、今度は侵入する前に爆発し右手と顔を破壊された。
お陰で視界が消えてしまい無防備な巨体を晒すだけになる。
結果として僕が顔を回復させる前に身体を木っ端微塵に破壊され僕はただの白い液体の散らばりとなってしまった。
『もう分かっただろう?君では到底勝ち目がない。人に物を言うだけの力がないんだ。もっと言うと間違いを非難する証拠がない。大人しく彼の行動の正当性を認めるべきだよ。』
それはおかしい。勝ったら正義で負けたら悪だと言っているようなものじゃないか!そんなデタラメがあってたまるものか!
『だったら、君の主張の正当性を認めさせるだけの裏付けを取りなよ。君にとっては一般論なのかもしれないが私達にとっては主観にすぎない。根拠も論拠も力もないただの主観は妄言、戯言の類でしかないんだよ。』
だから、その考え方がおかしいと言って――――
『そもそもね、彼が少年を殺してしまわざるを得なかった原因は君にあるんだよ。君がくだらない正義心で片足を突っ込んだから役割の条件を満たし少年の死が確定した。後先を考えずに行動した君の落ち度だろう?それすら認識せずに彼を非難するのは最早、君にとって都合のいい悪者を作って責任を押し付けているだけじゃないか。そんな自分が情けないとは思わないのかい?』
…………。
何も言い返せない…。
言われて初めて気付いた。逆になんで今まで気付かなかったのだ。
原因を作ったのは紛れもなく僕じゃないか。
初めて産まれる罪の意識。
僕は今日、あの場所で。あの薄暗い路地裏で未来ある少年の命を奪ったのだ。
あの役割を聞いた時点でもっと意識すべきだった。クリエイターになるとはこういうことなのだ。
雲秋に誰かを殺せと命じる最も卑怯な存在―――それが僕だ。
「さて、このままだと学校に遅れてしまう。」
一向に人間態に戻ろうとしない僕を液体のまま創り出したバケツで掬い、手にぶら下げて歩き始める雲秋。
雲秋は既に人間態に戻っており、そのまま学校に行くつもりのようだ。何をどうしたらこの精神性になれるのだろうか……。
「君は………。君は一体何なんだ……。」
人を殺して、何故、ここまで普段通りに振る舞えるんだ。後悔も罪悪感も沸かないというのか…この男は……。
僕は彼が分からない。
「僕は徳田雲秋だ。ところで、学校は何処だっただろうか。記憶が飛んでしまっているらしい。」
そうか。翻訳によって記憶が飛んでしまったのか。
僕も言われるまで忘れていた。
いっそのこと人殺しの記憶も………いや、それは逃げだな…。
『案内しよう。』
前任者のナビにより最短ルートで学校へ着く。
僕は学校に着く前に気持ちを切り替え人間態へ戻り、覚束ない足取りで雲秋の後を追って行った。
人殺しの記憶は消えちゃくれなかった




