4ポスト目 代役で登壇
「えー…SNS活動を初めてはや1ヶ月半…なのですが…」
「このアカウント知ってるよーと言う方は挙手を…」
公聴者の半分程度の手が挙がる。さすが大使館のイベントにわざわざ予約を入れて来てくれている人達だ。
「では、フォローしてるよーという方は、そのまま挙手を…」
すると挙がっていた手の8割ほどが下がる。つまり、会場の1割程度の人がフォロワーなのだ。これはかなりいい数字だと思う。
「あの、すいません。後学のためにお聞きしたいのですが、なぜフォローをされてないのでしょうか…?」」
2回目の質問で手を下ろした、前列の男性にマイクを向ける。
「え、いや…そのたまに流れてくるくらいでいいかなって…。なんか固い投稿は別に興味ないので…」
少し笑いが起こる。
「え、本当ですか…?私といたしましては、ちゃんとした情報を届けたいという一心で…」
またまた会場に少しの笑いが響く。
「では、今回は皆様と一緒に悩んでみたいと思います…!題して『どうすればフォロワーが増えるのか大会議!in在日アルヴェロイザ大使館』!!!!」
ハルトは早速パソコン前に移動し、プロジェクターに映しているエクセル画面を操作する。
「まず、すでに投稿した内容とその反応をまとめたものがありますので、そちらをご覧ください」
ハルトは日頃から、投稿の概要とその反応などをまとめ、分析をしていた。これが日の目を見る日が来ようとは、ハルトも想像していなかった。
「え…俺が代わりにステージに立つんですか…?!」
1時間前、笑顔のフェリックスから考えられないような提案を受けた。
「うん。たぶんエルドさんは見つからないと思うから…穴開けるのも、イベントとしては避けたいからね」
「それは…そうですけど…なんで俺なんですか…?」
「ん?それは、ハルト君が1番適任だからだよ。生配信とかも経験あるし、真面目だから、炎上するようなこともしないでしょ?」
生配信でアデルを出してしまい、大使に激詰めされたことを知っているはずのフェリックスのはずなのだが…そこには触れようとしないのは、この局面では言わない方がいいからという策略なのだろうか…
「じゃあどんなトークテーマにしようか?」
爽やかな公使の笑顔に、圧と恐怖を感じたハルトだった。
「はい、まあこんな感じで…実際、歴史解説はあまり人気がないんですよね…私は好きなんですけど…」
「はははっ」
「では、ご意見のある方はどうか挙手を!」
ちらほらと手が挙がる。助手として、広報部の方にマイクを持っていってもらっている。
「えっと、自分は魔法が見たいです…!」
「あー…そうですよね。王国といえば魔法ですよね。しかし日本、および地球全体で厳しく制限されているんですよね。鼓門条約って名称なんですけど…」
「私は、アデルちゃんをもっと見たいです…!」
「あ、アデル…ですか…たしかに、アデルが出ると伸びやすいんですよね…」
「SNS担当官に1日密着とかどうですか!」
「それはいいですね。定番ですが、人気のあるテーマですね。失念しておりました。というか、私に密着って需要ありますかね…?」
「俺は見たいぞー!」
立ち見席から大きな声が聞こえる。例のチャラチャラ魔法使いだった。
「あ、ありがとうございます」
まさか再会するとは思っていなかったが、いきなりの代打として登壇という状況で、味方と思える人がいるだけでこんなにも安心できるのかと実感した。
「みなさま、たくさんのアイデアありがとうございました…!この中から実際に動画化するものがあるかもしれません。是非、フォローしてお待ちください!本日は、本当にありがとうございました…!」
大きな拍手のなか、ハルトの講演会は幕を下ろした。舞台から下り、裏の機材置き場で水分補給をする。緊張が解けヘナヘナと床に座り込む。
「ハルト君、お疲れ様でした。素晴らしい講演会になりましたね」
首謀者…ではなく、フェリックスが笑顔と拍手でハルトを迎えた。
「なんとかやりきれました…」
「今度は正式なイベントとするのも良さそうですね」
頼れる公使の微笑みが、ここ数時間のハルトにはすっかり畏怖の対象に変わってしまった。ハルトは絞り切って作った笑顔しかできなかった。
その頃、ついにエルドが発見されたが河川敷で昼寝をしていたそうだ。
次回は8/7 18時に更新です!
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