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12ポスト目①お盆、研修祭り、そして羽と猫。

8月の中旬。世間はお盆休みに突入しているが、アルヴェロイザにはその風習がないため通常通り大使館は動いていた。

「さあ、今週は研修祭りですよ…!」

フェリックスがキラキラとした笑顔でハルトに話しかける。

「えっと…それは一体…?」

「お盆で日本政府や企業とのやり取りが減る今週…。それは我々の外交官としての能力をあげる絶好の機会なのです」

「たしかにそうですね」

「そのため、朝から晩までみっちり日本語の授業や、マナー研修が各レベルに合わせて開催されているんです!」

ハルトとフェリックスは各研修を覗くことにした。


「これは二重敬語になります。『ご覧になられる』ではなく、正しくは『ご覧になる』です。難しいですが、きちんとした敬語をマスターしましょう」

壇上に通詞部部長のエレスが、間違えがちな敬語の表現を教えていた。みな真剣に授業を聞き、メモをとっている。これは自分も復習した方がいいなとハルトは思った。


「えーっと…パソコンにログインアドレスのメモを貼るのはやめてくださいね…。何のためのセキュリティーだと思ってるんですか…。あと、政府の端末で公共のWi-Fiに接続するのもダメです…」

ハルトは長年大使館に出入りしているが、有翼種の職員は初めて見た。体は人間で、大きな鷹のような白い翼を綺麗に折りたたんでいる。オレンジ色の髪に色白の肌。大使館職員では珍しく整えられた髭を生やしている。

「フェリックスさん、あの方ってどなたですか?」

「ああ、情報システム部のポンタールさんです。ずっと情シスの地下に引きこもっているので、ハルト君は会ったことないかもしれないですね」

「え、翼があるのに地下に引きこもっているんですか…?」

「曰く、『必要なら飛ぶけど、日本ではそもそも緊急時意外飛べないし…』だそうです」

長身だが、翼の先が床についているので、モップ代わりになっていないか心配になる。幸いなことに、翼の先は黒色になっているので目立たないようだが…。

「あとは、スマホは必ず携帯してください!どうして携帯電話と名付けられているのか、考えてください」



「コピー機は叩かない!はい、復唱!」

「「「コピー機はたたかない!」」」

「掃除ロボットに餌付けしない!」

「「「餌付けしない」」」

小野部長が壇上に上がっているが、いったい何の研修なのか…。ハルトはそっと扉を閉めた。


「ハルト君は今日はおやすみでしたよね。この後の予定は?」

「ああ、アデルと一緒に夏休みの宿題を片付けます。といっても、俺はもう終わってるんですけど…」

「さすがハルト君ですね。」


「あにうえ!桜の絵描けました!見てください!」

大使邸のリビングにて、クーラーの効いた部屋で2人は作業をしていた。大きな窓から青々とした桜の木が見える。しかし、色鉛筆で描かれたのは満開に咲いている桜色の木だった。

「お!上手だねえ。…この根本にいるのは、俺たち家族かな?」

「うん!お花見の時の写真を見ながら描きました!」

「えーっと、『しょくじゅねん 10ねんまえ』『にほんからプレゼントされた』あー、そういえばそうだったね。よく調べてるね」

「はい!フェリックスさんにインタビューしました!」

「そっかー。ちゃんとお礼言った?」

「うん!あ、次は羽の人にインタビューです!」

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