1ポスト目② SNS担当官と申します…!
「えーっと、アカウントIDはこれでよし…と、アカウント名は『【公式】アルヴェロイザ王国広報』でいいかな…?固すぎる…?」
ハルトは自室でスマホと格闘していた。お風呂後の彼は襟までアイロン済の、質の良い水色ストライプのパジャマに身を包んでいる。魔導符仕掛けのランプがデスク周りをほんのりと灯している。
「いや公式なんだから、ちょっと固いくらいで丁度いいよね。で、自己紹介は『こちらはアルヴェロイザ王国の公式広報です。日々、我々の王国の魅力などを発信していきますので、皆様ぜひフォローをよろしくお願いいたします。』じゃあ…アカウント作成っと。」
フカフカで豪勢な椅子にもたれかかり、プロフィール画面を眺める。フォロワー・フォローの数字は0と0のままだ。
「誰かを先にフォローしたりしたほうがいいのかな…内閣府アカウントとか、首相のアカウント…?いや、順番的には宮内庁のほうが先か…?」
コンコン
物思いにふけりすぎていた彼の耳に、軽快なノック音が響いた。
「どうぞ」
「あにうえー!!!」
ハルトの元に一直線に向かっている、この小さな女の子はハルトの妹のアデルだ。ふわっとしたベビーピンクのネグリジェに、美しい金髪を高めのツインテールで結っている。美形両親の良いとこ取りをしたような天使の顔立ちだ。嫁に出す時は絶対に泣くまいと決めているハルトだった。
「兄上、このご本を読んでくださいまし!」
「アデルもう寝る時間じゃないのか?」
小さな天使はちょっとだけ頬を膨らませ自然に上目使いをした。
「今日はお昼寝を沢山したのです。だから、ちょっとだけならいいよってママ上が」
「わかったわかった。じゃあ、読んであげるから」
「わーい!兄上大好き!」
アデルはさも当然のようにハルトの膝の上に乗り、ハルトも左手で彼女を抱えた。
「あれ?兄上、スマホで何をされていたのですか?」
「ああ、父上からのご指示で公式SNSアカウントを作ってたんだよ」
「SNS…?」
「あー、えーっと世界中の人とお友達になれるっていう」
「本当ですか!アデルもお友達沢山作りたいです!」
アデルが必死にスマホを取ろうとする。
「アデルにはまだ早いよ」
ハルトはスマホをアデルに届かないように頭上に掲げた。
「兄上はケチです!!!アデルはお友達100人作って、富士山でおにぎり食べたいです…!!!」
「いや、100人って…」
「フォロワー56人か…友達を増やすのは簡単じゃないな…」
あれから1週間が経ち、何件かポストしたのだが芳しくない反応だった。
「圭介、いや圭介先生!どうしたらSNS伸びますか?」
ハルトは椅子の上で正座になり、圭介に手を合わせた。
「お、やっと俺を頼ってくれたな?ほなちょっと覗いてみますか」
いつものニタニタスマイルで圭介はスマホを触り始めた。
「えー、なになに…『アルヴェロイザ王国と日本国との接触は、王国歴1218年(西暦20XX年)に偶然によって始まった。
当時、王国東部の農村に居住していた青年エルドは、』って、ちょいちょい!!!!!これは硬すぎるし、真面目すぎるて!!!」
「え!だって公式広報なんだよ?」
「いやいや、誰もXで歴史学の小難しい話なんて、読みたないねん!!!」
「いやでも、我が王国との歴史をお話しないと…きちんとした認識を得られない…!」
「おもんないねん!!!!」
「おもん、ない…???」
青天の霹靂だった。ハルトは真面目に自国をアピールしようとしているだけなのだ。そうすれば正しく広めることができると思っていたのだ。
「おもんないものがバズるわけないやん!まずはバズらんと話にならんで!!」
「バズるって…じゃあ、何を投稿すればいいんだよ!!!」
「ハルト君、なんか苦戦してる?」
いつものようにマドンナが颯爽と現れる。
「いや、思ったよりアカウント伸びなくて…」
「そうね…というか、納豆で会見が炎上したんじゃなかった?」
「…!!!そうだった」
「それならいっそのこと、ハルトが納豆食べるしかないんとちゃう?」
「俺が???」
公式広報係は少し考えたのち「俺が食べるのの、どこがバズるんだ…?」という結論に達した。
「いや、外国人が恐る恐る納豆を食べるのがバズるんや」
「別に俺、納豆嫌いじゃないよ…」
「はぁぁ…お前、ホンマおもんないな…!!!」
圭介は呆れたように、いつものメロンパンにかぶりついた。
「嫌いじゃないなら、それでも良いんじゃない?」
「はあーーーーーーー。綾乃は相変わらずInstagram脳やな!ええか?食レポは反応が命なんや!ただ『食べます!美味しかったです!』は意味ないねん!!」
「え?そう?大使が赴任先の文化を楽しんでる様子ってだけで、両国でバズるのは定番なんだけど?むしろ、わざとらしいリアクションとか嫌煙されると思うんだけど」
「もー、そんなんおもんないやん!」
「まあまあ…」
ハルトの問題解決のはずなのに、いつも通り彼が二人の喧嘩という問題の仲裁に入っている。
「わかったわ。じゃあ、どっちのプロデュースの方が優れているか、対決よ…!」
「お、受けて立つで!絶対に綾乃になんか負けへんで!」
「金だけの圭介に負けるわけないじゃない!」
③は本日18時に更新です!フォローしてお待ちください!




