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1ポスト目① SNS担当官と申します…!


日本のとあるド田舎の枯井戸が、別世界と繋がりはや10年ーーー

世界を巻き込んだ混乱期もようやく落ち着き、両国の交流は文化・経済の面で大きく発展していた。


しかし…


「ヴァッハロイザ大使、いまだに納豆が輸出禁止品目に指定されているのはなぜでしょうか?」

カメラのフラッシュとシャッター音、パソコンの打鍵音が交錯する会見場。

壇上のセレストブルーの長髪に端正な顔立ちの男性、アンディウス・ヴァッハロイザは黄金の瞳の上に眼鏡をかけ、資料に一度目を落としたのち答え始めた。

「えー、それは公開している資料にあります通り、我が国の魔法や魔力環境との相性が悪く…」

「それは言いがかりでは!?」

「いえ、我がアルヴェロイザ王国魔法研究所と日本政府の合同調査チームでも、強力な菌類等の持ち込みに対して慎重な対応を…」

「食文化差別だ!」

興奮した記者の何人かが立ち上がり、会場は様々な怒号で溢れた。大使は素材の良さそうな白いシンプルなハンカチで額や頬を抑え、自信の気持ちも落ち着かせようとしているようだった。

『でたよ、ハンカチ時間稼ぎ芸』『ハンカチ王子』『いやこの人王族ではないから』『ハンカチになりたい』

とネットの生配信ではコメントが一気に流れる。




「息子よ」

「はい、父上」

疲れ切った表情のアンディウスが執務室で1人の若者に語りかける。相手はアンディウスJr.で間違いないような二枚目の青年だ。名はハルト・ヴァッハロイザ。父と同じ髪色、サラサラストレートの短めのボブ。瞳はグリーンとイエローが混ざっている。身長は4月の時点では176cmだったが、もう少し伸びていて欲しいと本人は思っている。

「うぉっほん…

駐日アルヴェロイザ王国大使、アンディウス・ヴァッハロイザの名において

ハルト・ヴァッハロイザを本日付で在日アルヴェロイザ王国大使館の、公式SNS担当に任命する」

「…はい?」

「まずは、このエックス…?…で納豆問題を解決してくれ!!」

アンディウスがスマホにインストールされたアイコンを指さした。

「その、父上。もしかして若者だからSNSは得意…と思っておりませんか?」

「いや、違う…いや、そうかもしれない」

「それに納豆問題を解決と言われましても…俺は一学生にしかすぎませんよ?」

「うむ。難題だとは理解している。しかし、日本語をいち早くマスターし、日本文化にも造形が深く、そして…」

少しだけ間を置いてから、アンディウスが話を続ける。


「日本に馴染んでいるお前にしか頼めないんだ」


一瞬ドキッとしたが、ハルトは何事もなかったかのように振る舞う。

「…承知しました」

アンディウスは安心したように微笑んだ。

「頼んだぞ。期待している」




「はあ…どうやってSNSで国際問題を解決すればいいんだよ…」

「お、なんや辛気臭い顔して。イケメンが台無しやで!」

飲みかけのメロンミルクのストローを差し出され、ハルトはそのまま一口貰う。

クラスメイトの境田圭介は、大阪出身らしく永遠に関西弁で話している。黒髪だが一部真っ赤なメッシュが入っている。圭介は制服のネクタイを外し、スカイブルーのシャツのボタンを何個か開け、袖捲りをしているいつものラフな格好だった。ハルトはブレザーを含めきっちりと着用している。授業が始まるとネクタイはしなければいけないのに、なぜ休み時間には外しているのか、ハルトにはいつも理解し難かった。

「いや、父上…親父から王国のSNS担当に任命されて…」

「すごいやんか!!公式なんてなかなか任せられへんで!」

お弁当で足りなかったのか、メロンパンを口いっぱいに頬張りながら圭介は大声で話し続ける。

「っていうか圭介、動画投稿やってるじゃん!なんかコツとか教えてよ!!」

「お、やっと気づいたかハルト君は。ええけど…タダ言うわけにはいかんなあ」

歯列矯正済みの、白く輝く綺麗な歯でニタニタと笑う圭介。歯のせいか、笑顔の作り方のせいか、ちょっと気持ち悪いと思ったハルトだった。

「っちゅうか、なんのSNSやりよるんや?それによって戦略も変わるで」

「え…そうなの?全部一緒じゃないの?」

「何言ってんねん!俺はめっちゃ考えてやってんねんで?」

「そういえば、圭介が正月に出した動画、YouTubeのランキングに載ってたよな」


「ういっすー!親の金とコネで、日本を笑顔に!ケースケです!

さ、本日の企画は…??『俺のお年玉100万円で孤児院にSwitch2寄付するwwwwwww』」

ドドンという効果音とともに、お金のかかっているロゴがデカデカと登場した。そして軽快なBGMが流れ始めた。

『ケタ違いすぎて草』『金持ちの道楽企画』『国税庁監視中』と速攻でコメントが流れる。

「今年も親戚からたんまりとお年玉100万円貰おたんや。自分に使ってもええんやけど、どうせなら企画にしよう思うたんですわ!なんせ俺は、親の金とコネで日本を笑顔にするYouTuberやからな!」


「また一回の企画のためにロゴ作ったのか?」

「そのほうが見栄えエエからなあ!」


「本体だけあってもしゃーない。色々みんなで遊べるゲームも買おうや!あとはコントローラーも何個かつけとこか!」

動画では家電量販店で値段も見ずにカゴにポンポンと商品を入れている。

「あれ、これお年玉だけやと足りひんのとちゃう…?」

「全然足りないですね。…どうしますか?」

中盤にトラブルに直面したようで、カメラマンと真剣な表情で語る。

そしてケースケは迷いなく答える。

「よっしゃ!足りひん分は、俺のポケットマネーから出したる!」

『待ってた』『定期イベント』『清々しいボンボン』

「結構いきましたね。お金持ってきてるんですか?」

「心配ないで!俺のカード上限ないねん!」

『誰もお前の金の心配してない定期』『無限に切れるカード』

そしていつもの重厚感あるブラックカードが出された。

結局お年玉より多くの金額を自費で払っていた。


場面は本体と数本のゲーム、そして追加のコントローラーを抱え児童養護施設に入っていくところに変わった。

子供達はケースケを見るなり取り囲み、黄色い歓声をあげていた。

「ケースケだ!ボンボンYouTuber!!」

「お小遣いちょうだい!」

「サインほしい!」

「あのなあ、“ケースケさん”だぞ?あと、いきなりお金をせがむんやない。サインはあとで書いたるからな!」

『意外と大人してる』『俺にも小遣いくれ』『子供には優しい』

「今日はみんなにええもん持ってきたで!大切に使おてな!」

「Switch2だ!!!」

「やったああああ!!」

「よっしゃ、俺と勝負してくれる子ー?」

一斉に手が上がり、何人かとマリオカートをはじめた。

「ちょ、誰や雷落としたやつ!!」「おい!今キラーでぶつかったんわざとやろ!」何度も子供達の笑いが起こる。

結局子供達にターゲットにされたケースケはボコボコにされ、最下位となった。

「ケースケよわーい」

「お前らな”忖度“って言葉、知らへんのか?」

『容赦ない』『本気でやって負けてるケースケ可愛い』『強さは金では買えない』


「圭介って個性あるよな。良い企画だし、圭介にしかできない」

「せやろ?まあ子供達と一緒に遊んだんが1番楽しかったから、俺はそれでええんや」

パンを食べ終わった圭介は満面の笑みを浮かべた。ハルトはこういう顔をする圭介が1番輝いていると思った。


「うっわ。また下品な企画したの?ほんと圭介ってお金だけなんだから」

いつの間にかハルトたちの横に美人でスタイルの良い女子が立っていた。圭介と睨みあっているのは、倉嶋綾乃。ハルト達の隣のクラスで、圭介とは幼稚舎からの腐れ縁だそうだ。

顔だけ、と圭介からは言われているが、実際のところ学校一、いや今の高校生で一番の美女かもしれない。ツヤツヤの漆黒のロングヘアーに、日本人離れしたお人形のような顔立ち、そして171cmの高身長と足の長さで、InstagramとTikTokの総フォロワー数は2,000万人を超えの超人気インフルエンサーだ。

「うっわ、綾乃かよ。お前は顔だけじゃねーかよ」

「なんですって…???」

「顔だけ!!」「金だけ!!!」

「まあまあ二人とも落ち着いて…」

ハルトの仲裁により、なんとか場が収まった。クラスメイトはまたやってるという視線を送ってくる。

「というか、ハルトのお父様、また記者の餌食になってたね」

「そうだった…俺、それをSNS解決しろって言われててさ…」

「なんだか大変そうだね…」

「綾乃ちゃん、なんか良いアドバイスない?」

「うーん…そうね…」

綾乃はツヤっとひかる唇を少し尖らせ、大きな瞳の奥で真剣に考えていた。「綾乃ちゃん、マジでかわいい…」「天使じゃん」と周囲からは漏れていた。

「なんのSNSするかにもよるかな…!」

「は?お前、俺のアドバイスと同じこと言うなや!!」

「そんなの知らないわよ!っていうか同じこと言ってたなんて、最悪なんですけど」

「まあでも、大抵の公式アカウントはX使おてるし、俺もそっからニュース見たりするで!」

「そうね。Instagramでも広報の公式アカウントは沢山あるけど、真面目系の話をしたいならXかもね」

「そうか。ツイッ…じゃなくてXか。うん、それでアカウント作ってみるよ!二人ともありがとう!」

「おう!これからも相談乗ったるし、なんなら宣伝も手伝うで!」

「コイツの意見なんて聞くまでもなく、いつでも私を頼っていいからねハルト!」


②は本日12時に公開です!ぜひフォローしてお待ちください!

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