6ポスト目① 期末テストにつき、投稿をお休みいたします
「ハルト君は夏休みどっかいくん?」
朝のHR前に、下敷きで服の中に風を送りながら圭介が話しかける。7月に入ると自転車通学者は毎朝汗だくになっている。そしてクラスの誰かがエアコンを最低温度に設定するせいで、女子生徒はカーディガンを羽織っている。ハルトも薄手の羽織を着用している。
「うーん。まだ決まってないかな…。圭介はどっか行くの?」
「毎年、綾乃のアホウと家族ぐるみでハワイとかグアム行ってんねんけど、飽きてしもうたんよ」
「…贅沢な悩みだね」
「せやから、今年はハルト君とどっか行きたいなあ思うて!」
「ありがとう。でも、俺日本から出られないよ」
「え?なんでなん?パスポートないん?」
「いや、アルヴェロイザの外交旅券だから。日本国内の滞在許可だけなんだ」
「あ、そっか…。ハルト君、アルヴェロイザ国民やもんなあ…」
メロンジュースのストローをガジガジと噛む。考え事にふけると、噛み癖が出てしまうらしい。
「せや!それならアルヴェロイザ王国にいこや!!ハルト君の故郷行ってみたいねん!」
「あー…たぶん夏休みには間に合わないよ。普通に申請に半年かかるし」
「えー!それははよ教えてくれんとー!てかハルト君、職員やん?なんかコネとかでちゃちゃっとできひんの?」
「こんな下っ端職員にそんな権限ないよ」
「えー!そんな〜『ハルト君の親友です』言うてもダメなんか?」
「余計にダメだよ!」
ゲラゲラと笑い合っていると、当然のように綾乃が隣に来た。
「ねえ、そのまえに…赤点だと夏休みの補講に強制参加だけど…圭介は今の成績で評定も大丈夫なの? 内部進学でも評定あるんだよ?」
カーディガンを纏った姿も、周りの視線を独占している。
「あれ…圭介って前回の中間、クラス最下位じゃなかった…?」
「せやで!ちなみに学年ではブービー賞やったで!」
「それ、なんにも面白くないんだけど」
綾乃が軽蔑の視線を送る。
「ちょっと先生のところ行くわよ…!」
「境田君の今の成績と内申点だと…」
昼休みに3人は、圭介とハルトの担任の田中茜先生と進路相談の別室にいた。中年女性で赤縁メガネにきついパーマヘアーがトレードマークの田中先生は、京都大学出身で、ものすごくスタイルの良い才女だ。担当は国語で、古文の解説がわかりやすくかつ面白いのだ。生徒の面倒見もよく、3年で担任なら、志望校合格間違いなしとまで言われている。そのため、一部の生徒からは「髪型をなおせば完璧」と言われている。
「内申点はこのままなら問題ないわね」
「ほら!いけるやん!」
圭介は勝ち誇った顔を綾乃に向ける。田中は真剣な表情のまま、パソコンから視線を外さない。
「でも成績がこのままだと厳しいね」
「ほらー!私の思った通りじゃない!どうするのよ圭介!」
勝ち誇った顔をお返しする綾乃に、バツの悪そうな圭介。
「よっしゃ!先生、なんか欲しい車とかないですか?時計とか!」
「境田くん?私は買収されませんよ?」
「そうだよ圭介。お金持ちの家の子多いんだから、買収なんて意味ないよ」
「ハルト君は今日も日本刀並の鋭さやんな…」
「田中先生、私の評定とかも見れますか?」
「倉嶋さんは…内部進学希望だったわよね?調べるまでもないけど問題ないわよ」
「よかった…ほら、私は大学生になれるけど、圭介はどうするのよ」
「っちぇ〜」
「ちなみに…俺の評定とかどうですか…?」
「ヴァッハロイザ君は問題ないわよ。寧ろ上位にランクインしてるから、もうちょっと高ランクの大学も狙えるんじゃないかしら?進学先はもう決めてるの?」
パソコンから顔をあげ、笑顔で話しかける先生の顔は、ハルトの進路にはそれほど心配していないという安心感が溢れていた。しかし先生の目を見ることができない彼は、赤縁メガネとマットな赤リップが合ってるな、など他のことが頭をよぎった。
「いや…まだ…。まず日本の大学か、母国の大学かも決めかねていて…」
「ほんまやん!ハルト君は色んな選択肢あってええなあ〜」
田中はメガネをクイっと上げ鋭い視線を投げる。
「境田君も、成績上げれば選択肢は増えますよ?ヴァッハロイザ君の母国の大学となると、うちでの進路指導実績もないから…もしそっちなら、早めに教えてもらえると助かるわ。サポートできることもあるかもしれないから」
「わかりました。ありがとうございます」
「せんせ!俺のサポートは?」
「…君はまず定期テストの点数をあげなさい」
②は8/9 18時公開ですっ!
圭介くんは果たして無事に夏休みの補講を免れることができるのでしょうか…?
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