↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親子魔法師  作者: 夏希


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/21

決断

 その日、セクレート村では盛大なお祝いが行われていた。

 いつもより少し小綺麗な格好をしたノックス義父さんとリナリアさんの村をあげての結婚の宴だ。


 あの後、フローラは

「私はお兄ちゃんとお義父さんと、リナリアさんと4人で王都に行きたい」

 と言った。

 最初はびっくりしたけど、理由を聞いて僕もフローラの気持ちに全面的に同意した。

 女の子は成長が早いって聞いた事があるけど、本当に僕なんかよりずっと大人なんじゃないだろうか…

 兄として少しいたたまれない気持ちになりながらも、その足で義父さんに返事をしに行った。


 義父さんも最初は驚きつつも否定的だったけど、フローラに言われた

「お義父さんは人の幸せを守る為に王都に行くんでしょ?私は自分自身が幸せだったり、身近な人をちゃんと幸せに出来ていない人が他人の幸せを守る事なんて出来ないと思う。ロックお父さんだってお母さんと結婚して、私達兄妹を大切に育ててくれていたよ。だから、お義父さんもリナリアさんを自分の力で守って幸せになってよ」

 と言う言葉で、義父さんは何も言えなくなり、しばらく考え込んだ後

「明日リナリアに謝りに行ってくるよ。フローラにはお礼を言えば良いのかな?」

「わかってくれたならお礼でいいわ」

「大事な事を教えてくれてありがとうフローラ。4人で行けるかは明日次第だが、精一杯努力してくるよ」

「心配しなくてもきっと大丈夫よ」

 と自信満々に答えるので、つい聞いてみた

「女の勘?」

「お兄ちゃん、私がどれだけリナリアさんと仲良いと思ってるの?私の確信よ」

 と返されてしまった。


 その後は、フローラの言った通りにトントン拍子に話が進んでいき、今日を迎える事となった。

「だけど、誰からも反対されないとは思わなかったよ。義父さんとリナリアさんの結婚はともかく、村から若い人材がまとめて出て行くのは村長あたりが嫌がると思ったのに」

「それはお義父さんとリナリアさんの日頃の人徳じゃない?あ、あとお義父さんが言っていた王様からの謝礼金のおかげもあるかも」

「そう言えば義父さんが言ってたな」


 家族での話し合いの後、義父さんは王様からの依頼を謹んで承る旨、先立って使者を遣わせていた。

 その数日後、再度王宮からの使者が訪問し、しっかりと準備した後に移り住んで貰えれば良い旨の書簡と、義父さんには支度金、そして村には優秀な人材を連れて行く事に対する謝礼金を渡された。

 具体的な金額は教えて貰えてないけど…かなりの金額で、今日の宴もすべてそこから捻出されていると話も聞く。

 義父さんへの期待の大きさに関係無いはずの僕の方が緊張してしまうけど、義父さんは慣れてるから大丈夫なのかな?

 少なくとも、今はリナリアさんの隣でとても嬉しそうに笑う姿を見て、もっと僕も今この瞬間を大事にしようと思った。


「義父さん、リナリアさんおめでとう」

「お義父さん、リナリアさんおめでとう」

 フローラの提案で二人に用意していたサプライズのプレゼントを渡す。

 道具屋のリナリアさんのお父さんに秘密で協力して貰った品で、料理が好きなリナリアさんにはエプロン、義父さんには革手袋を送った。

 それ程高価な物は用意出来なかったけど、普段使い出来る物をフローラが器用に包装してくれた。


「二人ともありがとう。大事に使うね」

 と新婚の2人に言って貰い、その後も新しい家族4人で祝宴を楽しんだ…


 翌日、王都への引越し準備に取り掛かる。王様からはゆっくりで良いと言われているものの、現実にはそうはいかない。

 リナリアさんも今日は実家の道具屋で出発の準備をしている。

 スルードの災厄で王都を離れて9年、明日の朝僕達は再び王都に向けて出発する事になる。


「リナリア、元気に過ごすのよ。ちゃんと連絡もよこしなさいね」

「ノックス、リナリアの事くれぐれも頼んだよ」

 リナリアさんの両親に送り出され、僕達は王都に向けて出発した。



 人間だけであれば丸一日くらいの行程だが、今回は荷物もある為、馬車を利用して二日間掛けての移動となる。

 途中、馬に休憩をさせながら、義父さんに連れられて周辺の見回りを行なったがなんの異常も見つからず、まさに平和そのものであった。

 途中の宿泊予定の町に着き、宿屋へと向かう。

 今夜はフローラの希望で男女で別れて部屋を取ってある。

 いくら家族とはいえ、リナリアさんと同じ部屋で寝るのはまだ少し抵抗があったから本当に助かった。

 分かってやっているのかどうか分からないが、本当にうちの妹は気が利いて助かる奴だ。


 みんなで夕食を一緒にした後、それぞれ部屋に戻ると義父さんに話しかけられた。

「アッシュ、今日何か気付いた事はあるか?」

「そうだなぁ、フローラが上手くリナリアさんと僕達の間に入って会話してくれるおかげで楽しく家族旅行出来てるよ」

「ははっ、あの子は本当によく周りが見えているね。ずっと知っている間柄とはいえ、少し心配していたんだが、とても助かっているよ」

「後は、義父さんに連れられて周辺の探索をしたけど、近くにモンスターの気配も無かったし、平和そのものだったかな」

「やはりそうか…」

「しっかり魔物避けの魔道具が作動して安全になってるなら良い事じゃないの?」

「もちろん本来であればその通りだが、今は王都にモンスターの出現報告が相次いでいる。王都までまだ距離があるとはいえ、痕跡が無いというのもやや腑に落ちなくてな」

「誰かが王都にモンスターを仕向けてるって事?」

「又は王都にモンスターを呼び寄せる何かがある可能性もあるが、どちらも推測に過ぎない。先入観の持ち過ぎは良く無いが普通ではない事が起こっている可能性は考慮して明日も旅立とう」


 定期的に探知魔法で警戒して油断は無かったけど、安全過ぎる事への違和感か…通常とは違う違和感を感じとる力と言うのは、一言で言えば経験という事だろうか。

 僕の実戦経験不足はどうしようも無いが、義父さんは昔からそれを言葉で表現してくれるおかげで理解し易い。

 自分の経験不足を補う為にも持っている情報は多角的に見て……色々な可能性を考えて……


「アッシュ……アッシュ……朝だぞ」

「えっ……⁈」

「おはよう、ぐっすり眠れたみたいだな」

 久々の外出のせいか疲れて眠ってしまったらしい…

「義父さん、時間大丈夫?」

「少し遅れているが大丈夫だろう。あまりに気持ち良さそうに寝ていたからすまんな」

「すぐに準備して行くから、義父さん先に朝食行ってて」


「お兄ちゃん、遅いよ。涎ついてるし」

「えっ、嘘⁈」

「もうフローラちゃんったら。アッシュくん大丈夫よ」

 とリナリアさんに声をかけられる。

「遅れてすみません。みんなおはよう」

「「「おはよう」」」


 挨拶をして、宿屋の朝食を頂く。

 今日は半日程度移動に費やし、荷物の搬入。片付けは明日以降にして、義父さんの両親の家に泊まる予定である。

「大丈夫とは思うが王都付近はモンスターとの遭遇も考えられる。特に注意して進もう」

 義父さんが声掛けし出発した。


 道中は変わり無かったが、悪い予想が当たってしまい、王都の入口手前で守護隊とモンスターの戦いが目視出来た。

「アッシュ、二人の守護は任せたぞ」

 そう告げると義父さんは剣を片手にかけて行った為、浮遊魔法(レビテーション)で少し宙に浮きながら戦況を見守る事にした。

 守護隊が5人に対して、ゴブリン……が15体かな。

 それ程強いモンスターではないが、やや後方に弓を構えた個体が3体とメイジとおぼしき個体が1体…高位の個体が混ざって援護している為、やや苦戦しているようだ。

 そこに義父さんが割って入る。



「冒険者のノックスだが、加勢しても構わないかね?」

 そう言いながら一体のゴブリンの持つ剣を弾き飛ばす。

 助けられる形となった守護隊の一人が返す。

「ありがとうございます。救援が遅れていて助かります」

「承知した」

 前方にいる二体を斬り伏せ、後方から支援している四体に狙いを定める。

 集団行動が特徴とはいえ、連携の質が高いな。

 こちらに向けて放って来た矢を炎下級魔法(ファイア)で焼き払い、弓持ちとメイジを一体づつ切り捨てたところで、弓持ちの一体が合図を出す。勝てないとみて撤退の合図のようだ。

 分散して逃げ始める姿に少しの驚きと確信を持ちつつ、一方向を追いかける。

「アッシュ!」

 声を掛けた時には既に動いていた。本当に優秀な子だ…


 義父さんが四体目のゴブリンを倒したところで、何かの合図を出す個体がいる。

 集中攻撃か逃走か……本来なら正しい選択だが、そうはさせない。

 レイピアを地面に向かって曲線を描くように動かす土壁生成魔法(ウォール)

 地面が隆起し、ゴブリンの逃げ道を塞ぐ形になる。

「アッシュ!」

 義父さんに声を掛けられたが、親指を立ててグッっと返す。少し微笑んだように見えたので、義父さんの意図通りだったのだろう。

 こちらに逃げて来た弓ゴブリンに矢を射られるが、盾生成魔法(シールド)で防ぎ、続けて三体のゴブリンを円で囲むようにレイピアを動かした。尖岩生成魔法(ストーンニードル)で足元から発生させた尖った岩が次々と突き刺していく。

 守護隊が逃げ遅れた三体を討伐、義父さんが双方に逃げた計五体を倒し、殲滅出来たようだ。


「アッシュ、良い状況判断だったぞ」

「義父さんがすぐに一方向潰してくれて、足止めの範囲を限定出来たからね」


「あの!助けて頂いてありがとうございました!王都守護騎士団所属のアイリス・アシュレーです」

「改めてノックス・メイソンです。王都に入りたいんだが、良かったかね?あ、リナリア、王の許可証を貰えるかい?」

「あの実力にお名前、そして王の許可証という事は、貴方が噂の王都守護魔法師団団長になられるノックス様ですね!」

 アイリスと名乗った女性騎士が義父さんに詰め寄っている。

 他の騎士団の面々もオォ!と盛り上がっている。


「いい加減にしなさい。ノックス様が困っているでしょ」

 と城門の方から現れた金髪の女性に嗜められる。

「だって、本物のノックス様だよっ!マリちゃんだって昨日はキャーキャー言ってたじゃな…」

 アイリスは杖で強めに頭を小突かれて大人しくなった。

「大変失礼しました。王都守護魔法師団所属マリー・ウィンスローと申します。副団長よりノックス様ご一行をお迎えするよう仰せつかって参りました」

「どうぞこちらです」

 他の魔法師団員に促され城門の方へ歩みはじめる。

「貴方はノックス様のご子息様ですか?」

 マリーと名乗った女性に声を掛けられる。

「息子のアッシュです」

「アッシュ様、先程の判断と魔法、とても素晴らしかったです」

「ありがとうございます。あと、アッシュで良いですよ」

「そうですか、ではアッシュ、またお会いしましょう」


 出迎えて貰った為、守護魔法師団の駐屯地を経由して、義父さんが挨拶をしてから家に行く事になった。

「フローラ、どうかしたのか?」

「なんでもない…」

「フローラちゃんはね、私の代わりに嫉妬してくれてるの」

「リナリアさんの代わりに嫉妬??」

「ほら、さっきノックスが若い女の子に囲まれてたでしょ。私は昔から見慣れているんだけど、フローラちゃんは初めてだから怒ってくれてて」

「だって、お義父さんはリナリアさんと結婚したのに女の子に言い寄られて鼻の下伸ばして…」

「いや、鼻の下は伸ばしてないと思うぞ」

「お兄ちゃんだって、金髪の女の人に声を掛けられて照れていたじゃない!」

「あれは義父さんをサポートした魔法を褒められただけだよ」

「ほら、綺麗な女の人に褒められて照れてるじゃない。ああゆう人がタイプなの⁈」

 タイプかと聞かれるとそれは……


「すまない待たせたね」

 義父さんが戻って来てくれたおかげで、とりあえずフローラも大人しくなった。

「ところで、義父さん何か噂になってるの?みんな王都に来る事を知っていたみたいけど?」

「ああ、自分で話すには少し言いにくいが……親父と母さんも待っているだろうから、食事の際にでも話すよ」


 そうして、義父さんの両親が住む家のすぐ隣の新居に荷物を下ろし、みんなで隣家を尋ねた。


「ノックス、よく帰って来た。リナリアちゃんも綺麗になって!ノックスが迷惑掛けてないかい?」

「ご無沙汰しています。おじ様、おば様…いえ、お父様、お母様。私の方が良くして頂いています」

「知らない顔じゃ無いんだ。そんなに改まる必要はないよ。今日はゆっくりしていきなさい」

「ありがとうございます」


「アッシュくんとフローラちゃんも久しぶりね。自分の家だと思ってゆっくりしていってね」

「おばあちゃん、ありがとう」

 フローラが元気良く挨拶し、お土産を手渡している。

 あの人懐っこさは少し真似しなければいけない…

「今日はお邪魔します」

 と告げ家に通して貰った。


 義父さんとリナリアさんの結婚祝いも兼ねてという事で、すごい量のご馳走が用意してあった。

「今日は色々なお祝いだ。みんな遠慮せず食べていってくれ」

 とおじいちゃんの挨拶があって、食事会が始まった。



「で、義父さんの噂って?」

「あ、私も気になるー」

 フローラが話に乗っかってくる。


「ああ、王都の守護龍が帰って来るってやつか?」

 おじいちゃんが代わりに答えてくる。

「アッシュとフローラは、ノックスがロックと並んで王都の守護双龍って呼ばれてた事は知らないか?」

「ちょっと覚えてないかも」

「私もわからないわ」

「ノックスが守護魔法師団の副団長になった時に強さの象徴として龍に例えてな、誰かが言い出したのがあっという間に広がったんだ。それに乗っかった作家が本まで書き上げて、子供を中心にその冒険譚が大人気になったもんだ」

「へぇー、まだその本ってあるの?」

「残念ながら、あの災厄後にすべて処分されちまってな。俺みたいに隠し持ってる数冊くらいしか残って無いだろう」

 心の中で持ってるんかいとツッコミを入れる。

「この前の守護魔法師団の全面的な信頼回復と、ノックスが団長になるって話が王宮から発表されたのを機に若い層を中心に守護龍の帰還だって結構な騒ぎになっているらしい」

「王宮もその騒ぎに合わせて守護隊の募集を呼びかけているみたいでね…」

 とおばあちゃんが補足してくれる。


「ちょっとそれは義父さんを利用し過ぎなんじゃ…」

「まぁ、これくらいは想定していたさ。団員が増える事は悪い事じゃないし、それ相応の支援も受けている。気にし過ぎないのが一番さ」

 腑に落ちない気持ちを感じつつも、当の本人が認めている以上仕方ない。

 出来るだけ考え過ぎないよう、家族団欒の時間をその後も楽しんだ。

【人物紹介】

アッシュ・メイソン(ローランド):英雄ロックの実子。現在は義父ノックス・メイソンと実妹のフローラと暮らす魔法師見習い


ロック・ローランド:元勇者パーティの魔法師。パーティ解散後は王都にて守護魔法師団団長を務めた。スルードの災厄にて元凶と相打ちになり亡くなっている。


ノックス・メイソン:かつて王都守護魔法師団の副団長を務めた優秀な魔法剣士。アッシュ、フローラ兄妹の養父。新生守護魔法師団団長の任を受ける。


フローラ・メイソン(ローランド):英雄ロックの実子。家族の事を大事に思う心優しい女の子。


リナリア:ノックス・メイソンの妻。控えめな性格ながらも芯の強さを持つ女性。


マリー・ウィンスロー:守護魔法師団隊長。金髪の美少女で、魔法師の実力も別格。彼女を理由に守護魔法師団を目指す人もいる程の人気者。


アイリス・アシュレー:王都守護騎士団の団員。マリーとは大の仲良しで、元冒険者パーティを組んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。