↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親子魔法師  作者: 夏希


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/21

責任

「アッシュ、今日の業務が終わった後、少し時間を貰えるかな?」

「大丈夫ですよ。何か必要な作業でもありましたか?」

「いや、守護魔法師団とは関係ない。私の個人的な話だ」

「……わかりました。また終わった後に声を掛けますね」

「すまないが、よろしく頼むよ」

 マリーさんからお願いされ、すべて片付いた後に隊長室を訪ねる。先日の戦い以降、見るからに元気が無い。第七部隊からも死傷者が出てしまった影響が多分にあるのだろう。

「失礼します」

「個人的な用事なのにすまない……折角だから場所を変えよう」

 そう促され、中心地から少し離れた広場へと歩いて行く。日が沈み始め、周りの人気は無くなっていた。

「………………」

 空いている椅子に腰を掛けるが、マリーさんからの言葉はまだ無い。

 いつまでも待つべきか、こちらから話しかけるべきか……こうした状況に、もし正解があるなら教えて欲しい。僕はこうした経験も乏しい。

 本当は、みんなの前で無理して強く振る舞う姿を見た時から、もっと早く自分から話しかけるべきと思っていたんだ。沈黙に耐え切れず、気付けば自然と言葉が漏れていた。

「……僕が必ず守ります。マリーさんも守護魔法師団の皆んなも、この国に暮らす人々も。だから心配しないで下さい」

「………………」

「………………」

「……何で……何でアッシュはそんなに強くいられるの……?私は大切な仲間を守れなくて……未だに立ち直れない……私の弱さのせいで、またみんなを傷付けてしまうのが怖い……」

「……マリーさんのそれは、弱さじゃなくて優しさです」

「でも、優しさじゃみんなを守る事は……」

「僕はその優しさに救われています。今回の一連の出来事は、僕にとっても辛い事がたくさんありました。でも、ここに来て帰りたい場所が出来ました。守りたい人達がいて、僕の事を助けてくれる人もたくさん居ます。一人じゃないのがわかるから、僕は立ち向かえるんです。……悲しみを忘れる必要なんてありません。だけど、マリーさんが一人ですべて抱える必要も無い。僕が一緒に背負います。その責任感も含めてすべてを……」

「アッシュ……」

「—————————」



 別の日に義父さんに呼び出された。

「何かスルードについてわかったの?」

「いや、相変わらず消息は掴めない。いつ襲撃が起きても大丈夫なように準備を整えるより他ない」

 前回の被害からの復旧は簡単では無かったが、王が国庫を全面的に開いてくれたおかげで、急速に防衛は強化されている。

「今日は一緒に行きたい場所がある。少し付き合ってくれるか?」

「もう!貴方もなの!?最近みんなアッシュばかり呼び出して!私との時間が無くなるばかりだわ!」

 突然シルフィーナが飛び出し、義父さんに文句を言い始める。

「勝手に出てきちゃダメだって言ってるのに…」

「それは申し訳ない事をしたシルフの姫君よ。どれだけ皆の前で勇ましい事を言っても、心の中は不安と恐怖でいっぱいなんだ。君の契約者は優秀だからね。覚悟を決める為にお貸し頂けるかな?」

「よくわかってるじゃない。許すわ」

「はぁ……義父さん、行き先は?」

「歩きだと少し時間はかかるが、東の森だ」

「私が連れて行ってあげよっか?」

「出来るのかい?」

「アッシュはもう一人でも大丈夫でしょ?私があなたのお義父さんに浮遊魔法(レビテーション)を使うだけなら簡単よ」

「以前、人を浮かせるのはとても難しいと聞いたけど…?」

「人間同士だとそうなのかしら?一度に何人もまとめてじゃ無ければ問題ないわ」

「さすが風の精霊…という事かな」

 自分の認識と違う事はたくさんある。この発見は大きな収穫になるかもしれない。

「力を抜いて少しリラックスしてくれれば良いわ。急に力を入れて動こうとすると、落としちゃう事もあるから気を付けてね」

 少しだけ不安も感じつつ、目的地へと向かった。


 着いた場所には、わかりにくいが結界と、それを隠蔽するように魔法が施されていた。

「これは義父さんが?」

「ノーム様に協力頂いている。中にある物を手元に置く事は、当時の俺には出来なかった。だからこうして封印して頂いている。中に入ろう」

 中には輝きを放つ一本の剣が飾られていた。

「義父さん、これはまさか……」

「ああ、ロック団長が使っていたレイピアだ。俺が預かったが、それを手元で保管する重荷に耐えられなかった。時が来た時、アッシュお前に渡す為、こうして封印したんだ」

 ロック父さんの形見ともいえるレイピアを手に取る。魔力の高まりを感じるのは、柄に埋め込まれた宝珠の影響だろうが、僕にはロック父さんから手渡された温もりのように感じられた……


「もう一つ、ここで伝えたい事がある。俺自身がスルードと戦う為に必要なことだ」

「うん……」

「10年前のあの日、俺はロック団長が止めるのを聞かず、スルードと対峙した。彼奴が率いて来たモンスター相手に苦戦する事は無かった。自分の力を過信したつもりは無い。周りのモンスターを討伐し終え、ロック団長に加勢したつもりだった……結果、俺は全く歯が立たず、早々に足手まといになった。あの時死んでいてもおかしくない。ロック団長の防御魔法のおかげで生き延びる事が出来ただけだ。ロック団長が命を落とした責任は俺にある」

「……ノームが言っていた通り、色々な事が重なった結果だよ。義父さんのせいじゃない」

「例えそうだとしても、俺があの戦いで足を引っ張った事実はきちんとお前に伝えておきたかった。再びスルードと戦わなければいけない事に恐怖はある。だが、彼奴とは必ず俺の手で決着をつけたい。一緒に戦ってくれアッシュ」

 たった一つの存在によって、多くの人が人生を変えてしまった。そこから力強く立ち上がった者もいれば、絶望してしまった者もいる。これ以上、彼奴に人の未来を振り回させる訳にはいかない。

「一緒にこれまでの長い因縁に決着を付けに行こう義父さん」



 不思議なものだ。シルフィーナの力の影響なのか、元々僕が持っていたものなのか、今日が決戦の日になる事を感覚的に悟っている。

 いつも通り朝の準備をし、いつも通り守護魔法師団の駐屯地に向かう為、家を出ようとした時、フローラに声をかけられた。

「今日なんでしょ?戦いになるの」

「…何でわかったんだ?」

「お兄ちゃん、普段通りに振る舞おうとし過ぎて、不自然だらけだもん」

 笑いながらそう返される。

「心配かけないようにと思ったけど、ダメだったか」

「どれだけ一緒に過ごしてると思ってるの?お兄ちゃんの事はお見通しなんだから」

「それもそうか…じゃあ、行って来る」

「私はいつも通りお兄ちゃんの帰りを待ってるね。いってらっしゃい」

 フローラのおかげで、いつもと変わらない一日を始められた。


 駐屯地に着き、先に来ていた会計のレノさんに今日襲撃が起こる可能性が高い事を伝え、自分は先に周辺の見回りをしてくる旨言い残して外に出た。

 空中で風を感じ取り、おおよその目安が付いたので、少しだけ小高い丘に降り立った。

 朝の涼しげな風は、僕の中の余計な感情をすべて洗い流すように穏やかに吹き続けている。



「団長!アッシュくんが今日襲撃を受ける可能性が高いと言って、外に見回りにいきました。真偽は不明ですが、どうされますか?」

 駐屯地に着くなり、レノさんから慌てて報告を受ける。

「アッシュがそう言ったのなら間違いないだろう。全団員に通達。予定通り準備を進めていってくれ。俺も確認に出る」


 シルフとの契約を再構築させてから、アッシュの感性は格段に上がっている。スルードの襲撃はほぼ間違いないだろう。いずれにせよ、詳しく話を聞く必要がある。

 小高い丘にアッシュらしき人影が見え、近付いて行った。


「………………」

 声を掛けようとして、思わず言葉を飲み込んだ。見慣れたレイピアを携えた人物は、まるで自分が追いかけ続けた人に重なって見える。

 これほど大きく成長していたのか……微かな面影を残しつつも、成長した息子の背中に頼もしさを感じる。

 それと共に、かつての自分が望み続けた願いをようやく叶えられるような気がした。

 あの人と並び立って戦えるその日が来たことを……


 

【人物紹介】

アッシュ・メイソン(ローランド):英雄ロックの実子。幼少期に契約を結んだシルフと和解し、元々秘めていた力の使い方を思い出し始める。


シルフィーナ:精霊シルフの女の子。アッシュの幼少期に出会い、その素質と純粋な気持ちに惹かれて契約を交わす。封印から解放され、改めてアッシュと共に戦う決意をする。


ロック・ローランド:元勇者パーティの魔法師。パーティ解散後は王都にて守護魔法師団団長を務めた。スルードの災厄にて元凶を封印したが、10年の時を経て封印は破られてしまう。


ノックス・メイソン:かつてロックの部下として王都守護魔法師団の副団長を務めた優秀な魔法剣士。アッシュ、フローラ兄妹の養父。新生守護魔法師団団長を務める。サラマンダーと精魔相互契約を結ぶ事に成功した。


アグニアス:ノックスが契約した精霊サラマンダーの真名。プライドが高く、ようやく過去のように自分自身の手でスルードを討つ決意を固めたノックスに力を貸す。


フローラ・メイソン(ローランド):英雄ロックの実子。家族の事を大事に思う心優しい女の子。


リナリア:ノックス・メイソンの妻。控えめな性格ながらも芯の強さを持つ女性。


マリー・ウィンスロー:守護魔法師団隊長。金髪の美少女で、魔法師の実力も別格。自分の目指したかった姿をアッシュに重ね、意識している。 


アイリス・アシュレー:王都守護騎士団の団員。マリーとは大の仲良しで、元冒険者パーティを組んでいた。


リネア・ハーネス:守護魔法師団第七部隊に所属する風属性魔法師。マリー、アイリスとは元冒険者パーティを組んでいた。


ヒース・ビアーズ:元冒険者。マリー・ウィンスローに憧れて守護魔法師団へ入団さかた炎属性の魔剣士。


チェリル:第七部隊の賑やか担当魔法師。実は高い魔力を有しており、影で努力を怠らない。


クライヴ:Sランク冒険者で一流の剣士でありながら、冒険者パーティを率いるリーダーも務める。


モーガン:守護魔法師団第二部隊隊長。土属性の優れた盾使い。


ヴェルナー:公爵位の貴族。過去にロックとの因縁があり、守護魔法師団を毛嫌いしているが、国を思う気持ちは誰よりも強い。


ニコラス・ゴードウィン:伯爵位の貴族。ノックスの父から剣技を学んだ過去があり、ノックスとは古くから付き合いがある。


マーカス・ゴードウィン:ニコラスの弟。兄を尊敬し、その手足となって活動を支えている。


スルード:ロックに討たれたと思われていたが、奇跡的に生き残り、自身の本体を封印から解いて完全復活を果たした。封印され続けた恨みを晴らす為に王都の壊滅を狙っているが、現在は封印されて失った力を取り戻す為に力を蓄えている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。