真実
「クライヴさん!」
「久しいなアッシュ。話したい事は色々あるが、お前はあの穴を塞ぎに行くのだろう急げ!」
「はい、ありがとうございます!」
以前にも増して頼もしくなったな。
「マリー隊長だったな?もうすぐ腕の立つ俺の仲間がここに来る。何人かアッシュのサポートに行かせてやれ」
「はい!……リネア、チェリル、アッシュのフォローを頼めるか?」
「マリーちゃん、でも……」
「こちらは大丈夫。何とかするさ。それよりもアッシュと王都を助けて欲しい」
「隊長、私はそんなにお役に立てないッスよっ」
「何言ってるんだチェリル。リネアについてアッシュとも一緒に鍛錬してるだろう。少しでも動きがわかるお前達が支えてやってくれ」
「うぅー…バレてたッス」
「隊長!すみません」
「どうしたヒース」
「俺は命を賭けてでも隊長を守ろうと思ってます。でも、アッシュは俺にとって一番大事な仲間です。俺も行かせて下さい!」
「…みくびるなよヒース。私はお前に守って貰わねばならんほど弱くは無い。行って来い!」
「ありがとうございます!」
出来る限りの笑顔で送り出す。…人の心配ばかりもしていられない。私にも守らなければならない人や物はたくさんある。
既に街中にガーゴイルが複数体入り込んだ事はわかっている。しかし、その原因となっている守護結界の穴を塞がなければ後続の侵入を許してしまう。相手はモンスターを操る能力を持っているんだ。
建物の被害が視界に入る。人々は無事に避難出来ているのだろうか……焦る気持ちを何とか抑えながら、街中を駆け抜ける。
「くっ……」
前方に二体のガーゴイルが立ち塞がる。さすがに無視する訳にはいかないか……
「アッシュ!お前は先に行け!」
ヒースさんに声をかけられ、振り返るとリネアさんとチェリルさんも居る。
「アッシュさん、私がフォローします。先を急ぎましょう」
リネアさんに促され、そのまま全力で駆け抜けた。
「ヒースさん、チェリルさん、ありがとうございます」
「さて、チェリル。こいつらを一体づつ相手にする訳だが、いけるか?」
「誰に言ってるッスか。心配なのはヒースさんの方ッスよ」
「なぁに、同じ顔なのに片方は見覚えがあってな。今回は逃げられずに決着がつけられそうだ」
槍斧を持ったガーゴイルを見ながらそう伝える。そのガーゴイルの左腕は真新しい石のようで、どこか興奮しているようにも見えた。
動作が止まった守護結界部分に着き、装置に再度魔力の供給をしようとするが、ガーゴイルの侵入時に壊されたのであろう。再展開は叶わなかった。
「強度は少し落ちますが、盾生成魔法を大きく生成して塞ぎます。敵が妨害に来た時はよろしくお願いします」
そうリネアさんに伝え、魔法に集中する。大きさも強度も最高レベルの物を作らなければならない。頭の中でイメージを作り上げ、魔法を発動しようとしたその時
「きゃあああああ」
リネアさんの叫び声が響き渡る。
「……お前がやったのかシャドー」
「また会ったね、アッシュ。君の事は気に入っているが、あまり私の邪魔はしないで貰えるかな」
再び黒いローブの男シャドーと対峙することになった。
吹き飛ばされた様子のリネアさんの無事を確認する。
「すみませんでした。僕が気付けなかったせいで」
「大丈夫です。急な攻撃だったので驚きましたが、風魔法で衝撃は抑えられました」
「シャドー、お前の目的はなんなんだ?関係ない一般の人まで巻き込むような事をして!本気でこの国を潰すつもりか!」
「関係ない……か。多いに関係あるのだよ。君が憧れているであろうロック・ローランドがこの国でどう扱われたかくらいは知っているだろう?」
「確かに英雄ロックが長きに渡り不名誉な扱いを受けた事は事実だ。しかし、今は王がその過ちを認め、その名誉は回復した」
「フフ…アーハッハッハ!君は何もわかっていない。そのロックが名誉を取り戻した理由こそ私が作り上げたものに過ぎない」
「どうゆう意味だ…?」
「あの災厄後、すべての責任はロック・ローランドと守護魔法師団に押し付けられた!その後、この国は税を下げる事で人の流出を抑え、むしろ人口増加に成功した。だが、その裏で国の防衛は弱体化した。国の収入は減り、守護魔法師団が無くなった補填が成されなかったのだから当然だ。だが、スルードが消えた影響かモンスターの活動は消極的になり、すべてが運良く回り続けた。だから、俺がモンスターを仕向けてやったのだ」
「やはりお前が……」
「ああ、その通りだ。だが、その結果どうなった?この国は防衛の必要性を再認識し、守護魔法師団を再結成させた」
「………………」
「本当に都合の良い奴らだ。その為にいわれなき汚名を着せられたロック・ローランドへの過ちをやっと認める事となったのだからな!」
「その点だけを見れば確かにお前の言った通りなのかもしれない……だが、それが晴れた今、何をまだ望むのだ?これ以上この国を、関係ない人を巻き込む理由はないだろう」
「ここまで言ってもわからんか!あの日ロックはすべての人間を守り切ったのだ!建物の被害と多少の怪我人は居たであろうが、モンスター襲撃を直接の理由とした死者は一人も出ていない。それ程彼の力は突出していた。じゃあ、何故災厄後あれ程の死者や被害が発表されたと思う?」
「………………」
「簡単な事だ。この国に暮らす人間が暴徒と化し、略奪したのさ。金品を盗み、住人に見られれば殺し、証拠を消す為に時に建物までも破壊した。すべてはモンスターのせいに出来るからな!」
「そんな馬鹿な……」
「何もしなかった者も同罪だ。見て見ぬふりをした者、助けを求める者を見捨てた者、そんな奴らばかりだ。挙句、王宮はその事実を知りながらも隠した。治安悪化への風評を気にしたのであろう。すべて死んだロックに押し付けた。そして、民衆もそれを受け入れた。これでも本当に無関係な人間と言えるか!」
「くっ……だが、すべての人では無い。ロックを支持する声もあがったと聞いている」
「すぐに掻き消された程度の声にどれだけの意味がある?だから俺が再び思い出させてやってるのさ。ノックスが活躍すればあの時と同じように皆が何も考えずそれに湧いた。しかし、次はより強大な力によって押し潰される」
「それがお前だと言いたいのか」
「その通りだ。だが、今回ロックは居ない。命をかけようとも私を止められる者はおらず、この国は滅びる。そしてその時になってようやく思い出すが良いのさロック・ローランドの偉大さを!」
「そんなこと!英雄ロックが望むはずない!」
「お前のような子供にロックの何がわかる!その意志を継いだ私が言っているのだ!」
「ふざけるな!ロックは……父さんの願いはそんなものじゃない!」
「!?父だと……君の戦いを見た時よもや息子ではないかと考えたが、まさか本物とは!最高ではないか!話が通じねばこの場で葬ろうと思っていたが、君はもう少しこの世の中を知る必要がある。どうせすぐに民衆は本性を現す。そして自分の守っているものの愚かさに絶望した時、私が迎えに来よう。英雄ロックの実の息子がその父をないがしろにした国を滅ぼす。私が描いた以上の最高の舞台ではないか!アーハッハッハ」
「待て!」
シャドーはそう言い残し、その場から消え去った。それと同時にガーゴイルが再び放たれていた……
【人物紹介】
アッシュ・メイソン(ローランド):英雄ロックの実子。実父に憧れて魔法師として日々修練に励んでいる。
ロック・ローランド:元勇者パーティの魔法師。パーティ解散後は王都にて守護魔法師団団長を務めた。スルードの災厄にて元凶と相打ちになり亡くなっている。
ノックス・メイソン:かつてロックの部下として王都守護魔法師団の副団長を務めた優秀な魔法剣士。アッシュ、フローラ兄妹の養父。新生守護魔法師団団長を務める。
フローラ・メイソン(ローランド):英雄ロックの実子。家族の事を大事に思う心優しい女の子。
リナリア:ノックス・メイソンの妻。控えめな性格ながらも芯の強さを持つ女性。
マリー・ウィンスロー:守護魔法師団隊長。金髪の美少女で、魔法師の実力も別格。自分の目指したかった姿をアッシュに重ね、意識している。
アイリス・アシュレー:王都守護騎士団の団員。マリーとは大の仲良しで、元冒険者パーティを組んでいた。
リネア・ハーネス:守護魔法師団第七部隊に所属する風属性魔法師。マリー、アイリスとは元冒険者パーティを組んでいた。
ヒース・ビアーズ:元冒険者。マリー・ウィンスローに憧れて守護魔法師団へ入団さかた炎属性の魔剣士。
チェリル:第七部隊の賑やか担当魔法師。実は高い魔力を有しており、影で努力を怠らない。
クライヴ:Sランク冒険者で一流の剣士でありながら、冒険者パーティを率いるリーダーも務める。
オリバー:守護魔法師団副団長。ノックスとは再結成前からの同僚。
モーガン:守護魔法師団第二部隊隊長。土属性の優れた盾使い。
ヴェルナー:公爵位の貴族。過去にロックとの因縁があり、守護魔法師団を毛嫌いしているが、国を思う気持ちは誰よりも強い。
ニコラス:伯爵位の貴族。ノックスの父から剣技を学んだ過去があり、ノックスとは古くから付き合いがある。
シャドー:王都にモンスターを差し向けた張本人。その目的や素性は不明である。




