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過去の残骸 ー還ってきた王の祝宴ー  作者: あおぞら えす


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5/10

Two Kings and One Soul


 ーーーぁあああああぁああーーー

 空気を引き裂かれるような、鋭い響き。

 エイドは城の近衛兵たちと共に上空を滑空するケロベウロスを討伐するために動き回っていた。傷を負っても、大抵はすぐに癒やされる。魔物は上空だけではなく、町を襲うために大型の蜥蜴のような魔物や小さな蝙蝠のような魔物もやってくる。それらはすぐに倒せるだけの力をイーヴァから貰っている。

 民を怪我させないように避難指示をディランがした。近衛兵や民自らが先導して避難した。動ける者は動けない者を庇いながら、逃げる準備をする。誰もが恐れを殺し、小さな子供も泣くことはなく、戦う者達を称え、家族を守るために動いた。誰一人、誰かを置いて逃げ出すことはなかった。


ーーディラン様の力だ。だから、こんなにも

 エイドは目の前の大型の蜥蜴をなんなく打ち倒した。

ーー剣が軽くて、心が落ち着いている。

 エイドは、まわりを見て、やはり全員の心が一致し、目の前の敵を倒すことに集中している。誰もが負けることはないと、理解している。

ーーようやく、分かった。妖精様はディラン様を好きだから・・・。

新たに現れた蝙蝠を剣でなぎ払った。

ーーじゃなく、人が好きだから。ディラン様はそれを手助けするために、妖精様に協力している。ディラン様は人と妖精の架け橋・・・。

 巨大な蜥蜴と相対している近衛兵と共に剣を振り下ろした。

「ディラン様と妖精様にお礼を言いたいな・・・。」

エイドの心の声は言葉になった。

「エイド様!私もお礼を言いたいです!」

共に蜥蜴を倒した近衛兵が笑顔でエイドに言う。

「そうだな。あとで、みなで一緒に行こう。ディラン様は喜んで聞いてくださるはずだ。」

エイドは笑った。だれもがここで心を見失わない。きっと民も同じだろう。



 ディランにはとっておきがあった。それは、妖精王ならではのものではなかった。あえていうならば、犬を飼ったことがあった、という前世の記憶だ。

 目の前に佇む大きなオオカミを手なずけてみたいという願望が出たのも要因だ。魔物をコントロールなんて誰も出来ないし、考えもしないだろう。けれど、ディランにはとっておきがあった。近場には大きな水場がある。城の近くにある貯水池だ。

 まず、あの巨体を水場に誘導し、水の妖精たちと共に大量の水を浴びせよう。大きな犬だからといって水嫌いではない個体もいるが、あの巨体で宵の国の王の番犬という禍々しさは炎を連想させる。実際に犬の首輪は焔で出来ているのが遠目でもわかる。火は水に弱いという連想と、犬は水が嫌いかあるいは水が大好きのどちらかという明確な意味づけはないが、かつて飼ったことのある四匹の犬たちを思い出し、性格的には水嫌いだろうと予想した(水が苦手なのは事実としてディランがすでに水の賢者リーヴァに水の魔法を使ってもらい、結論を得たに近い。)。

 それに、あの犬はどうみても仰々しい名前で呼ばれているだけで、あまりにも行う魔法が簡易かつお粗末だ(強さはピカイチなのだが、ディランは一度覚えた魔法をはじき返してしまうため、強さを実感できていない。)。

「うん!リーヴァ。お願いできるかな?」

 ディランの一言で、ほとんど水の塊となったリーヴァは、放水を開始した。

 リーヴァは自分の主が何を行おうとしているかは、理解できなかった。けれど、ケロベウロスを退治しようとしているのだと解釈した。ケロベウロスの弱点は水だ。さらに言えば、ディランには同じ魔法が有効ではない。ディランは生まれつきいくつかの防御魔法を備えている。

 『エイラ・シム』

 妖精王の最初の姿であり、ただの神獣ではなく、その大地を愛した、最高位の妖精であり、精霊たちとも仲の良い存在だった。だからだろう。精霊はエイラに力を貸した。エイラの魔法が人を守るためにあるならば、精霊たちの加護は、エイラのためにあった。

 エイラの朱色の眼は今、ディランの眼になり、群青色の髪が靡くのは、周りの精霊達が彼に加護を与えているからだ。愛する者を守る精霊の加護の威力はケロベウロスの力を意図も容易くはねのける。

「エントラ!ラウム!」

 リーヴァの操る水から逃げるケロベウロスにエントラの木々や蔓が絡みつく。そこにラウムの特大の雷が落ちた。ケロベウロスには大き過ぎる打撃のようだった。けれどエントラの木はすぐに燃え、その炎を糧にすぐにケロベウロスは勢いを取り戻す。

 が、気がついていなかったのか、水場がすぐそこにあり、気がついた時には全身を水につけていた。エントラの燃えた木はすぐに新たに芽吹いた。

 自身で暴れたこともあって、ケロベウロスには何も分からない状態だった。だからだろうか。冷えた身体が、自分の行った行動を理解させた。そして、目の前に仁王立ちするディランに攻撃する元気はなかった。

「やぁ、ワンコ。君の暴れた所業には色々と言いたい、が。私は君を私の部下に置こうと思うんだ。」

 ディランは腕を組み、元気をなくしたケロベウロスに元気に問うてきた。

ーー我の主は死者の王である。それ以外は、ない。

「うん。でも、部下に置きたいんだ。」

ーーおかしなことを。我は魔物であり、魔物を配下に置くことに意味はないだろう。

「そうかな?私は君が部下に就くことを歓迎するし、魔物というジャンルを部下にしても悪くないと思う。」

ーー・・・正気か?

 ケロベウロスは目の前の少年を見つめた。彼にはたくさんの守り手がおり、それよりも強く眩しい力が彼から放たれている。

 ケロベウロスは彼がエイラの血統種であることを知っている。エイラの身体が滅びても、何度も生まれ変わるためにこの地に魔法を施した。復活したエイラが目の前にいて、この少年は死者の王の門番を口説こうとしている。

 王様はどこの世界でも往々にして考えることは身勝手だ。けれど、目の前の少年は、王様という肩書きでは勝負しない。

「あぁ、正気だよ。だって私は君が私の部下以外の道を選ばないと知っているから。君は彼の地の王に追い出されてここにいるでしょう?私はそんな君をヘッドハントしたいと思った。必要なのに追い出す奴は愚かだね。」

ーー視たのか。お前は・・・。

「あぁ。未来も過去も少し先は見えるからね。・・・それで?私の部下になって働きたいだろう?」

ーー・・・あぁ。貴方を主と認めよう。魔物を飼う主だと。

 ディランは嬉しそうに笑った。ケロベウロスは強く光り輝き、気がつけば黒い毛の大きな犬がそこにいた。ゆっくりと貯水池から這い出てきて、ぶるぶると身体を震わせた。

 ディランはエントラが即席で作ってくれたタオルを持って、身体を拭いてあげる。ゴワゴワしているが、大型犬は身体を拭かれている間はじっとしていた。暖かな光が犬にまとわりつき、首輪が新たに付け直された。金色色の首輪が似合う犬の瞳はディランをみた。

「何故、我を招き入れたのだ?」

 犬は興味深いと考えている様子だ。低い声で尋ねてきた。

「うーん・・・。私は君が悪さをしに来たように見えなかった。むしろ、何かに追われて焦っていた。君が放つ魔法は、全て一直線に私を狙い、絶対に外さなかったし、他の魔物は君の開けた空間から溢れているだけだった。」

「貴方を攻撃していたのは事実だ。」

「うん。だからだよ。私を狙い、それ以外に攻撃しない。普通、魔物は人を襲う。溢れてでた魔物は民を襲った。けれど君は私だけしか狙わない。死者の王が唯一の人ならば、君は魔物であり、かの王の飼い犬でもある。宵の国には魔物は多くいるが、同じように妖精も住む場所。魔物も妖精も共存する国。」

「・・・。」

 犬は答えを聞くと、ディランの優しく撫でる手に身体を預けた。



 ケロベウロスが打ち倒され(?)、宵の国との境が消えると、魔物は消失した。城下町では勝ち取った勝利に酒が振る舞われて、もう一日、祭りは延びた。ディランの元にはエイドと友達になった近衛兵たちが感謝を述べに列をなした。ディランも一人一人に感謝し、怪我一つないことを喜んだ。

 神獣たちにも感謝をし、幻獣や妖精にも喜びを添えた。人が笑顔でいられることに、妖精は歓喜する。妖精は幸せな笑顔に喜ぶのだ。人が喜び、妖精も喜ぶ。ディランがみたいと望んだもの。もう少し先に望んだ世界がある。

 ディランは、黒い犬を撫ぜた。

 宵の王には妖精を通じて言葉を交わした。魔物が住むその世界でも、王がいて、国としてまとめている。魔物すべてが悪ではない。悪意を持った魔物が人の世界で暴れる理由は、人が絡んでいるからだろう。住む場所が分かたれていた魔物が人の住む世界に溢れる理由。

ーー宵の王ですら、飼いきれなかった大馬鹿者がいて、それが逃げたのか・・・。だから、この子に追いかけさせた。

 黒い犬の耳の後ろをかいた。気持ちよさそうに眠りについている。

ーーあの男は私をどうしたいんだろうか。どうしてそこまで、『あおい』を追うのか・・・。私と『あおい』は別の存在であり・・・

 ディランはすっかり夜が明けた空を見上げた。広がる空が繋がる。その先にのびる、空の先。



 ローディは、ディランのためにすでに行動を起こしていた。隣国バダデアが襲われいる事実を皇帝に報告し、皇帝からすぐさま派遣する勅使のリーダーに任命された。ローディは返事一つし、集められた選りすぐりの兵士を連れ、バダデア国に向かった。

 その際にはマイケルとランディバーも同行した。マイケルは皇帝の従弟にあたり、エクシエルの親族でもある。ジュトラッテの姓を使わなかったとしても親族であるという事実を公表したのは、かなり大きな出来事だった。

 ディランはそれを望んだ。自分の元にいたとしても、実際の家族親族に偽りをいれない。それを貫くことに意味があることをディランは過去の残骸から学んだ。


『嘘よりも真を。虚言についてくるものは存在しない。自分の言葉と意思は真実からしか生まれない。』

 ディランは、誰よりも相手を尊重する。だからこそ、父親は呪いを克服したのだろう。だからこそ、いがみ合った兄弟はまたこうして並んでいる。

『真実はいつしか自分の嘘さえ憎むだろう。だから、信じて前を進むのだ。』

 ディランの愛した存在が、この世界に足を踏み入れた。彼女の苦労も辛さも全てを抱きしめたい。


 あれは、きっと心のどこかで安寧を求め、探している。孤独の中で、ずっと探している。ディランという存在も、あおいと言う存在も、すぐるという存在ですら、ただの道具だった。

 愛する者を追うことに、誰もが必死になる。それは例外なく。

 父親はただ、真実の愛を探して、自分の母親に先立たれ、己の欲のせいで他者に助けを求められず、助けられたはずの人々は父親の心から離れ、消えた。

 父親が三人の子供に執着したのは、子離れできないことと、自分を肯定してくれるだろう存在を手放したくないからだった。



 あおいには、どうしても忘れたいと思う存在がいた。兄のすぐるだ。彼は父親に引き取られ、もう一度再会したのは、会社の立食パーティーのとき。一度たりとも忘れなかった。憎き兄。兄は父親の会社を継ぐことが決まっている。

「おやおや。あおいではないか。」

 にたにたと嗤う顔。今ではもうヒキガエルにしかみえてこない。あおいが嫌った顔は父親に似て醜い。

「・・・久しぶりですね、兄さん。」

 あおいは吐き気がした。けれど、にこやかに笑い、誤魔化す。

「ああ?すぐる様と呼べよ。お前との縁は切っているんだからな!」

「・・・失礼いたしました。すぐる様。今日のパーティーに参列されるとは伺っておりませんが。」

「はっ!俺様がどこにいようが関係ないだろ!この会社を買収しろと、父さんが言ってなぁ?」

 すぐるの舌がいつ伸びてくるか分かったものではない。

 どのみち会社の買収は出来ないはず。父親の会社の規模を知っているからこそ、このパーティーには参加できずに、裏口から入ってきたのは知っている。

 あおいは、すぐるから距離を置き、自身の会社にいる裏切り者を探した。するぐと仲良く話し、ちらちらとあおいを見る女性社員と彼女をいつも引き連れる副社長のあいつ。

 割り出すのに時間はいらなかった。仲間だと思っていた者に裏切られるのは何回目だろうか。首を切っても、意味がない。すぐるが手を回してあおいの会社をかき乱した。

 才能の欠片もないすぐるがあおいを欲して、手を出すことがまるで運命のように足かせとなった。

 やがて大きな波が襲うその日、あおいが出会ったのは、ひいろという少女。そして、すぐるとの再会。すぐるにはもうあおいしかいなかった。

 あおいに救済を求め、縋り付いた。すぐるはあおいに言った。

「俺の家族は、お前じゃない。俺の家族はお前じゃなかった・・・。覚えているか?お前は幼少期に一度川に落ちた。俺は助けるために川の中に入った。お前はあおいではない。あおいは川底のもっと底に消えて、代わりにお前が出てきたんだ。笑うか?狂っているって。だけど俺は知っている。お前はあおいではない何かだ。その代わりにどこかへ消えたあおいが。俺の家族だ。」

 すぐるをあんなに嫌ったのは、あおいがあおいではなかったからなのか、と納得した。

 その後、すぐるは病に倒れてそのまま逝った。



 ディランの中では答えは出ていた。あおいという子供がどこに消えたのか。すぐるは、あおいを探していた。でも、あおいと呼ばれた子はその時すでに、この世界に来たのだろう。あおいという子供はこの世界に転生した。

 その子供の足跡を辿ることは簡単ではなかった。その子供が本当にこの世界に転生したとして、どの時期のどの場所に生まれたのか。ディランが前世であおいという人物になれたのがあおいという子供の死をきっかけだったとしよう。ディランが妖精王であり、生命を司る神獣だったのもある。転生後死者の仮面をかぶり、生きた。

 では、その子供は?

 死んで転生した先がこちらだとして、どのような姿だろうか?まるで分からない。それに本人が転生したという認識がないのかもしれない。


 探し出すのは大変だと最初は思っていた。しかしディランは宵の国から追い出されたケロベウロスやバダデア国で起きた魔物の襲撃に意味を感じた。

 その子供が絡んでいる。これは本能的なもので、なんとなく感じたことだ。その感覚は会社経営に培った小さな糸口を見つけたときに似ていた。



 ディランが転生した先に流れ着いたひいろ。そして同じようについてきた、すぐる。死の川を渡った先に自分の家族がいると信じたのだろう。

ーーすぐるがこの世界にきたのは、私と同じ時間軸で間違いない。彼は私を運ぶ妖精達を見つけた・・・

 ディランを追うために妖精と共に手を添えた悪意。彼はロギステヌ国の女王の家臣になり、その一方で魔物を従えている。やり方は前世の時と同じだろう。悪意を作り、悪意で周りを自分の思い通りにしている。その悪意が魔物を強くさせる。

 宵の国の番犬が慌てて飛び出してきたのは、ディランに発破をかけるためだった。宵の国の王もディランに力を借りたかったのだ。宵の国に溢れる魔物の制御ができないから。その上、彼はディランと同じ顔をしている。あおいが転生したのは、『宵の国の王』だった。何故、見つけた家族の側をすぐるは離れたのか。

 ディランは宵の国の妖精たちの声も聞いていた。ディランのとっておきは、人の声も妖精の声も逃さない聞く耳。『王様』の考え方は分からないが、社長としての考え方ならわかるし、今だって、寄り添う心と前向きな考え方が問題を解決してきた。ならば、いっそ公王などという肩書きに重きを置かなくても良いだろう。宵の王が、ディランに頼んだこと。それは兄を家族の元に返すことだった。

ーーすぐるらしい。彼は自分が主人公だと振る舞う。自己中心的で、まわりをかき乱す。なのに憎めないんだよなー・・・。すぐるは、すぐる兄さんは・・・

 あおいの記憶の中にいるすぐるは悪いことを平気で行った。けれど、悪いことをしてでも助けたいと考えて、わざと悪人になって行動した。すぐるは父親を嫌い、弟を遠ざけて、なんとしてでも二人を会わせないようにした。すぐるが悪役になり、父親からあおいを守った。すぐるがどんなに悪いことをしても、あおいの中ではすぐるは良い兄でそれ以上でもそれ以下にもならなかった。

 人を憎ませて、愛されるのは彼の得意分野で。どうみても悪い印象を与えるのに、本当は優しく誠実。すぐるほど、人間を体現した存在はいない。

 二人の王は、兄を一人にしたくはないと感じた。だからこそ、宵の国の王がもう一人のあおいに声をかけたのだ。


 ディランは番犬に名前をつけてもいいか、こっそりと宵の国の王に尋ねた。死者の王が生者から問われた質問があまりに滑稽で、けれどシンプルだったのが死者の王の心を掴んだ。

『わたしの番犬は君の好きにするが良い。』

 妖精を通じて返事が来た。ディランは割と死者の王ものりが軽いという印象を受け、おそらく本当に番犬を手懐けたことが、心証を良くしたのだと理解した。事実、番犬はただの大きな黒い犬の姿になった。この姿が王の側にいるときの姿で、本来の姿と言える。




 ローディがバダデアに到着する頃、魔物はパジオノに打ち倒され、エクシエルの傷はほぼ完治していた。ローディは失わずにすんだ命にほっとした。

 パジオノはディランの父親であるローディにお礼をいい、精霊たちへのお礼も伝えた。

「パジオノ殿。私は隣国であるこの国を守って欲しいと息子に言われた。貴方と対面するのは初めてだが、息子が貴方を友だと言っていた。私のほうこそお礼を言いたい。息子の友になってくれてありがとう。」

 ローディは微笑んだ。パジオノは親子揃って似ていると感じ、だからこそ、友好の証を貰って欲しいと考えた。

「ローディ様。我が国はまだ発展している最中です。けれど、隣国であり近い存在でありたいと思ってもいます。エクシエルが妻となった暁には、この国の七賢者を友好の橋渡しとして、友好の道を建設したいのです。お互いの国の業者であれば手間のいらない、ただの通行道を作りたい。」

 パジオノが考えた道には通行許可証を必要としないお互いが自由に行き来する道。友好国だからこその道。

「なるほど。息子と皇帝に伝えましょう。その道はきっとお互いを発展させるものとなるでしょう。我が国でも今後商人ではなく、別の組織を編成することになっています。パジオノ殿にも共有しておきましょう。」

 ローディはパジオノの未来がディランの未来を支えるものとなると考えた。有意義かつ未来を見つめる話しをローディはパジオノに話し、パジオノはその話しがきっと隣国がもっと発展できる話だと理解した。

 パジオノ王はローディを自宅にしている簡易な民家に招いた。ローディはその飾らないパジオノが最も王様だと思えた。きっと、彼はよい王になり、この国は発展するだろう。

 ローディの心にあった悲しい気持ちがその時ふいに消えた。目の前の王様の生い立ちを知っている。それでも自分の生き方を貫いている。

 彼は、彼こそが王様として、自分の道を貫き生きていると感じた。

 ローディの決まらなかった心が、ようやく決まった。公王になれなかった過去。妻を守れずに父親に助けを求めた過去。自分の心を偽って生きていた。だがもうそのことを誰かが問い詰めたり叱責することはない。誰もがローディを責めなかったのは、周りが優しかったから。

 ローディはパジオノを守るための神獣になれる。ジェクシム家は神獣からその姿を人に変えて、人として生きていた。誰もが神獣に戻れはしないだろうが、少なくともローディにはその力がある。ローディが神獣として生きることを選んだとしても、誰も何も言わないだろう。ディランとて文句は言わない。

「パジオノ殿。」

 ローディはパジオノを見つめた。パジオノは不思議そうにしていたが、背筋を伸ばした彼は誰よりもはっきりとした言葉で返事をした。

「何でしょう、ローディ様。」

「私はいま、心に決めました。私はあなたの守護神獣となります。我が一族は遡ると神獣という存在から人となっております。力ある者は神獣へと変わることができる。私は、あなたの王としての器に感銘を受けた。今後はあなたを守る神獣となりましょう。」

 パジオノは驚いた。だが、そのまっすぐな心が、妖精をみて歓喜したあのときと同じように心が躍った。パジオノは笑って頷いた。

「貴方の考えるようにしてください。私には、貴方の心を諫めることなどできはしない。それに、貴方は私を助けてくださった、恩人。貴方は自由を生きる神獣。貴方のことを止めはしません。」

 パジオノの言葉がローディを自由にした。


 ディランはパジオノへのお祝いを贈った。結婚式には必ず出席することも伝えた。ローディが神獣となったことは言及せず、ただ、白い花が添えられていた。白い花はディランの母親が好きだった花だ。ローディはそれに気がついて言葉もなく、泣いた。

『愛する者の幸せ』

 花が意味した言葉だ。ディランはちゃんと知っていた。セシアが最期に握りしめた花のことを。

 そして、セシアを殺した相手はディランであり、ディランを執拗に妬み追いかける、あの男だと。


 ディランはそばを去った父親の幸せを、誰よりも願った。ディランがどうして父親を責めなかったのか。どうしてディランはローディを擁護し続けたのか。

 まだ幼かったディランだったが、母親の死を目撃したその日、何を見たのか。


 母親のセシアは父親の帰りを待っていた。あの頃のローディはセシアを愛していて、ディランにも愛情があった。毎日、笑顔を絶やさずにいた。祖母と祖父だって、おかしな思考などなかった。

 ただ、歪にずれたその日。すぐるという悪意の塊が、祖母と祖父に大金と豊かな生活というお菓子を与えた。

 セシアの死はすぐるによって作り出された。歪みは三大商会や隣国にも流れていった。

 ディランが父親を憎まなかったのは、悪意を知っていたから。人の世界で生きて、人の世界で狂いながら死んだ、前世の住人。彼はその狂った思考をディランの亡骸に引き寄せられ、同じ川を渡ってきた。

 来てはいけない存在。けれど。

 彼は自分の中で消化できない何かを持っていた。心の底に澱みがあった訳ではない。ずっと欲していたもの。人の心の底には綺麗な泉がある。ディランはそれを信じたかった。

ーー・・・あの日から一歩も動けていない。そんな悲しい気持ちを、あの男は持っているんだろうか。それとも、ずっと『あおい』を探して・・・



 ディランは、正式にロギステヌ王国の招待を受ける形で、彼の地に渡ることにした。


 澄んだ空気と、高い山々が続き、潤った恵みの川が延々と続く。

 涼しく、冷え冷えとした空気。そして、王国は山の高い山の中に作られていた。城ではなく、大きな木に家のようなものが建てられた。何千年もの間、木が伐採されたりもせず、生きている家が彼らの暮らしを豊かにしている。

 静寂はなく、木々の話し声や、花々がお話しをしている。人は木々と暮らし、穏やかな静寂を楽しむ。

 ロギステヌ国は女性が多い国。男性は人の目に触れないように、隠されている。男性が少ない理由は女性を軽視した過去の妖精王への粛正だと言われている。その物語を読めば分かるが、女尊男卑の物語で、何も真実性がない。事実であるこの地の妖精王と精霊王の戦いによる『死』の物語が一切出てこない。代わりに精霊王を称える物語なのに、その精霊王は女性として出てくるという不可思議さもあった。

 この地に根付いたのは、女性を守るものばかりだ。単純に、当時の王が女性で、女性を守るあまりに誇張した物語ができたといえる。


 そんな国に、ディランは向かった。マイケルやランディバー、エイドを含めると大所帯になってしまったが、公王が招待されたのに、公王だけでいくなんてことはできない。身分とはそういうものであり、身分を着るかどうかは、本人が決められないものでもある。

ーー昔のように、一人でふらりと出かけられない・・・。けれど、それもまた偉くなったということだろう。あの頃を思い出す・・・


 ディランがあおいとして生きていた頃。実際にあおいという身分を与えられて転生したのだということを知らない、ただのあおい。

 母親の裏切りも父親の冷たい視線もその日暮らしをするあおいには苛立ちさえ起きない日々だった。生きるために働いて、冷笑さえも笑って堪えてしまうぐらいには、あおいの中も外も冷たくなっていた。

 降りしきる雨の中を安いアパートの冷えた部屋に戻る毎日。生きることを諦めていた。必要とされない毎日があおいの心をただただ凍らせた。

 会社を立ち上げたとき、未来が見えたのは幻影だったか。何も見えない毎日は以前よりも深い霧が支配していくようで。

 一年、二年。過ぎていく時間は、有限だから。焦って様々な問題を見落として。『若いから』。そんな理由で許されるのも限度があった。

 けれど、会社は崩れ去ったり、消え去ったりもしない。あおいが必死に社員を守ることが、会社を守ることに繋がった。たったそれだけだった。あおいは、徐々に一人ではなく、周りの意見を聞くようになった。自分のために、動くのではなく、集まってくれた仲間の為に歩くようになった。

 あおいの思うとおりに動くことはなかった。けれど、あおいが周りを気遣えば、共に前へと動いていく。社長という椅子は、椅子に座っていないことで、回り始めた。

 あおいが、一人だけで食事をしていると、見知った顔が挨拶して、それが社員だったとすぐに思い出し、いつしか昼を共に食べに出かけた。

 最初は一人で。二人三人と、共に連れだった。


ーーあの頃は楽しくて。失敗しても不安にならなかった。前だけ向いた。偉くなってはしゃぐ暇なんてなくて。そんな私に誰もがついてきた・・・


 人の裏切りは小さな事から起きた。絶対なんてなかった。それを防げるほど、あおいは年をとっておらず。その度に心を痛めていられるほど、余裕なんてなく。

 会社があおいの手を離れたのは、あおいの中にあった本当の心が失われた時だ。

 大きくなった会社を父親が盗んだその日、あおいの心の最期の炎は消えた。あおいの力が、まるで関係ないその国を襲ったのはその日の夜だ。あおいは、いまだあおいのままだったが、妖精達が怒ったのだ。まるで関係ない世界だった。けれど繋がっている。その世界とこの世界は。物語が嘘だと思うのは少し違うだろう。きっとなにかしら、見えたりするのだ。

 この世界は不思議だ。それはどこも同じ。

 地続きで繋がっていたそこで、大きな水は、荒々しくうねりを帯びて、怒りの攻撃をした。妖精王の魂を傷つけたことを許さなかったのだ。

 そして、ひいろという存在に出会った。そして、すぐるという兄をすくい上げた。


ーー決して、悪い奴ではない。ただ、その時、そうしなければならなかった。彼が失ったものは、きっと私が救えなかった存在だ。ならば・・


 ディランは、兄が兄であった頃の、話しを教えて欲しいと、宵の国の王に尋ねた。

 二人の王の会話を妖精達しか知らないが、妖精達は幸せを運ぶために、二人の王に協力した。すぐるが宵の王の元へと戻るための準備をするために。

 まだ会わない兄に思いを馳せながら、ディランはロギステヌ国の最深部へと向かった。



 フランヌ女王は愛しそうに自身の愛犬を撫でた。

 フランヌ・ロギステヌには、二人の姉がいる。二人の姉はフランヌを毛嫌いし、花嫁としてそれぞれ隣国のシュンプリア国とラハス国に嫁いだ。両国はロギステヌ国と違い、近代的に発展し、美しいお城や町並みがある。二人の姉は、ロギステヌ国ほど閉鎖的で惨めな国はないと笑った。

 末娘にこの国を与えたのは、慈悲であり、二人の姉の夫を越える良い夫はいないと決めつけた。姉は隣国に渡り、夫の妻として国を支えている。実際は妃ではあるが、二人とも三人目の妃であり、召し抱えられる従者は少なく、暮らしもそこまで良くなった訳ではない。周りに町並みがあるということが変わっただけ。

 フランヌは女王になって、幾人もの男性から婚約を申し込まれた。どの男性も、欲にまみれた、政略的な結婚だった。求めるものが姉たちと違うフランヌの意図を汲む者は少ない。

 結婚をすることで、フランヌの地位を脅かし、彼女の瞳が曇ることを望んでいる者が多く、フランヌには自分の愛する犬だけが、フランヌの心の拠り所となった。

 その犬もまた、フランヌを拠り所にしていたことを理解していなかった。


 信仰している精霊王は黄金でできており、磨き上げられている。美しく微笑むその像をフランヌはかかさずに祈りを捧げていた。

 祈りは精霊王のために捧げていたつもりが、いつしかフランヌの求める王への崇拝にかわった。フランヌの強い崇拝は意図せずにすぐるの力へと変わる。すぐるは犬という姿から人へと変わる力を身につけた。フランヌが眠る夜に変身し、二人の姉の元へと向かい、二人の姉を籠絡させた。


 すぐるは人ではなくなったことで、より確かに悪意を使い、人々の心の隙間に入り、人々を操った。シュンプリア国とラハス国は、両国共にジュトラッテ帝国と仲が良かった。しかし、すぐるは人の心に入り込み、ジュトラッテ帝国への不信感を徐々に高めていた。もちろん、リーリアスは人心を操るものの割り出しをはかり、ディランの言葉で両国の王妃と突き止めた。その裏で暗躍しているすぐるという魔物に関しては、ディランがその手で罰を与えることを条件に自由にさせた。

 ディランの行動はディランが公王となってから全て実行に移していた。それは、隣国の関係悪化を望まないことと、ディランが見ている風景は、おそらく人とは別の次元まで及んでいるからだった。


 ディランは妖精と幻獣、神獣が何を思い行動しているかを共に見ている。それと同時に人間的思考を働かせ、その風景に人を映している。その中には見えてはいけない姿すら映してしまう。

 それが、悪意。人間が持っている感情を映してしまう。

 ディランは前世の最期、すぐるが共に来るための用意を、した。死ぬ間際についてくることを許していた。理由はきっと前世で約束をしたことが原因だ。

 そう。とても人間的な思考でその約束を果たしたのだ。


 だから、すぐるという魔物がこの世界にやってきたことを、どこかで歓迎していた。

 すぐるは悪意の塊、かもしれない。けれど、ディランには今も兄だった。

 それでも、兄という存在はあおいの心を満たした。家族という関係は父と母がお互いに惨めな生活を送っていても、すぐるという兄があおいの傷を少しだけ癒やし、ずっと心にあった人というものを愛していられた。

 すぐるがおかしくなったのはすぐるの愛した人が亡くなってからだった。永遠に会えない場所に逝って、泣き叫ぶすぐるに、どう声をかけるか悩んで、言葉は消えた。

 その後、父親がすぐるを慰めるために、あおいの心を抉った。会社が、父親の手元へ消えた。あおいは初めて父親がすぐるしか見えていないことを知った。年齢的にも、記憶が曖昧になった父親が行った悪行は、巨大な津波となって全てを奪い去った。

 あおいが生きる気力をなくしたその日、あおいから奪ったものは、二度と誰にも手にできない場所へ流された。そして、すぐるはその日を境に思い出したのだ。水辺で起きた出来事を。


 あおいともう一人が川に流されかけたその日、すぐるは急いであおいを救うために水の中に入っていった。急いで手を伸ばしても水しか戻ってこない。やがて水底に沈もうとするあおいはそのまま闇へと沈んで、消えたのだ。すぐるの目の前で起きたことは、すぐるを虚無へと誘った。そして、気がつけば、あおいを抱き寄せていた。凍り付いたあおい。死んでいた。死んだはずのものを呼び寄せたのは自分か。

 すぐるはあおいを敵視していた本当の理由を理解した。相手は別の世界からきた、悪魔だ。だから容赦なく貶し、酷い仕打ちを行ってもいい。そう、信じて、いた。

 あおいがすぐるを家族として受け入れてくれた事実は変えられない。震災後のあの日、あおいはすぐるを救った。ただ、声をかけてくれただけでも、すぐるにはなにものにも変えられなかった。親が流され、妻の遺影も海が持ち去った。何もかも消えた、と。心の底は失ったものを数え、死を自らへとたぐり寄せた。目の前から消え失せた『あおい』を助けられなかったあの日のように。

 あおいが声をかけてくれたあの日。すぐるは血の繋がりなど小さな事だと、知った。

 だから、この世界についてきたのは、ただの気まぐれと、あおいとは何者かを知るため。それと同時に、あおいの中にあるあおいとの約束を果たすため。すぐるは悪意を持った人間だ。けれど、悪意の塊ではない。自分を大切にしてくれた人間を愛せないわけではない。

 すぐるは人だ。たくさんの感情がある。そして、その中には、悪意のような行為を行ってでも、守りたいものがある。それが、新たな命となって生まれたディランを守るという、どうしようもない思考のためであっても、己の悪意が有効的に利用できるなら。すぐるは悪人になろうと考えた。救えなかったあの子にも出会えたこの世界で、唯一悪意のある悪人になりきって、ディランという弟を助けよう。

 そこに、理由などない。


 あおいは死ぬ間際、妖精王に戻った。流されながら、妖精達が運んでいる。そして、見知った手を見て、心のどこかで歓喜した。


 ディランがフランヌ女王と面会する日。ドワーフ族の長である、シュルク・アムリカが同じ席に就いた。シュルクは女王の補佐を行うために選ばれた。シュルクは男性だが、ドワーフであるからという理由でロギステヌ王国の補佐官になれた。女尊男卑が酷い王国では、ドワーフという存在が必要不可欠だった。

 ドワーフという一族は昔からこの地に住んでいた、土着民を指す一族名であり、由来は人間で間違いない。この国の男を下に見るという風土になった頃から、ドワーフ一族を城に招き、国のためにドワーフ一族と協力した。

 そのためか、ドワーフ一族の出自である男性と関係を持った王族が増えるようになった。そしてフランヌの叔父がシュルクだ。玉座に座れる女性とドワーフの名を名乗る王族。歪な関係ではあったが、お互いの隠れ蓑として使われ、ドワーフという身分は王国では有力な民と位置づけることで、存在を高めた。


 さて、ディランは二人が親族であることを知っているし、フランヌの父親がシュルクという弟の存在を毛嫌いしているのも知っていた。歪な一族であり、この国の男性を悪としている風習が始まった理由も知っていた。ドワーフという一族がただの土着民ではなく、王家と当時の有力貴族のあいだに生まれた子供を隠し育てた一族でもあった。

 王家の子供を手にしたドワーフたちは徐々に発言力を強めた。王は自分の子供が幸せであることが重要で、ドワーフの言い分を飲み、王家の玉座に女性以外を座らせないように念書を押した。


 フランヌ女王は、公王であるディランをじっと見つめて、ただの少年だと決めつけた。

「わたくしの城はどうかしら?」

フランヌは欠伸を噛み殺して尋ねる。

「美しいですね。私が思っていたよりも綺麗です。それに、私の想像よりも遥かに美しい森が広がっていて・・・。ただ、とても残念だったのですが。」

 ディランは微笑んだ。相手にしないと態度を示したフランヌをじっと見る。

「この国の王は無礼で失礼だ。私は貴方に挨拶したくて来たわけではないのですよ。」

 ディランの言葉に、フランヌはぎょっとした。年下の、男の言葉がフランヌを諫めたのだから。

「な、なんて・・・」

「あぁ、その先は話さないでください。貴方の言葉は汚くて汚れていて嫌なんですよ。それこそ耳が腐ってしまうでしょう。」

 フランヌの言葉は何も出てこない。

「そもそも、一国の女王の招待があって来ましたのに。貴方に王の器がありますか?貴方が隣国の関係を悪化させたことは調べ終えていますし、招待した側なのですから、もう少しこちらを驚かせて欲しかったですね。」

 フランヌの知らない言葉が出てきて、驚く。隣国の関係悪化など、聞いていない。

「・・・ごほん。ディラン様。一体なんのお話し」

「シュルクさん。貴方は補佐しかしてはいけません。私は王ですよ?貴方が口を挟む余地はありません。貴方のお兄さんも貴方と同じようにうるさかったですよ。」

 ディランはシュルクの言葉も封じた。兄の状況を知れた唯一の機会かもしれないだろう。

「・・・兄に何を」

「ふふ。ちょっと、ね。隣国に渡った娘達を使って色々なさったでしょう?隣国の王様は彼女たちを差し出しました。皇帝領に連れて行きましたし、しばらくは会えないでしょう。」

「お姉様たちを連れ去った?!」

 フランヌは驚いた。驚いただけだった。それ以上にディランという公王の思考回路を理解出来ずに言葉を形成できずにいた。

「えぇ。フランヌさんはこの国の王のままではいられませんよ。」

「どういう意味・・・」

「・・・この国に、王は二人もいらない。この国の王は、精霊王の血筋であり、貴方のような偽りの王が座ったままでは、この国は機能しません。精霊王を崇拝し、祈りを捧げるのはかまいませんが。」

「・・・。」

 フランヌが知っている精霊王の話には、妖精王という父親が出てくる。二人の王は仲が良かった。二人の王を誘惑した女性が現れるまでは。


 妖精王である父親を誘惑する女性を、父親は少しも靡かなかった。仕方なく、息子である精霊王と結婚した女性とのあいだに子供が生まれた。子供が生まれて、妖精王へもう一度誘惑する女性を見て、精霊王は怒りで妖精王を殺した。血で汚れた精霊王は呪いを受け、子供を置いて逃げた。

 残された子供と女性は謝罪を込めてこの地に精霊王の名を冠してロギ・テヌという国を建国した。


「何故?あのお話しでは、我が国では精霊王の子供を守りましたわ。」

「私はジェクシム家の妖精王です。私の家には代々受け継がれた物語がたくさん貯蔵され、書物はたくさん宝物として管理されております。この国には我が家と関係のある子孫がいるでしょう?ジェクシム家の直系ではない、分家の家。たしか、ラルフレンとお聞きしております。我が家の分家がこちらにある理由はラルフレンと精霊王の子供が子々孫々受け継がれたからです。ジェクシム家では、ラルフレン家の子供を認知しておりますし、この国の王族だったはずのラルフレンの息子をロギ・テヌが隠し、その子供達を奴隷として扱っている。」

ディランははっきりとした言葉で伝えた。過去に起きたことを今になって蒸し返すことも必要だからだ。

「我が家のしきたりでは、ラルフレンの家の子孫にもジェクシム家と同じように玉座に座るべきとしています。本来の役割を担うこととなり、この地の害悪から守るために、精霊王の子孫として、共に共存するべきでしょう。なにより、貴方はこの国の穢れた血を持っている。」

 フランヌには、何を話せば良いか一度思考を止めた。この少年の知識量とその見た目とは異なることがフランヌの考えた会話とはかけ離れていった。そもそも、ラルフレン家は公にはなっていない。それにジェクシム家の分家だという事実も知らない。さらに、穢れた血、という言葉は、精霊王の妻に対する言葉だ。

「わ、わたくしは精霊王の妻ではありません!」

「・・・。いいえ。貴方がたロギステヌ家は、精霊王殺しという意味の名前です。そして、ラルフレンの最初の子供はロギステヌ家を王族として扱っていないはず。」

 ディランはかなり冷たい言葉で淡々と語った。フランヌはがたがたと身を震わせた。

「だって、そうでしょう?ロギステヌ家は初代妖精王を殺し、精霊王の妻をも殺した。ロギステヌの名前の意味。ちゃんと訳すと『精霊王の妻を殺したロギ』という言葉になるそうです。精霊王が息子をおいて逃げたのは、ロギステヌという殺人鬼がいることを自分の兄弟に伝えようとしたからです。息子をおいていくことにはかなり迷ったみたいですが。」

 ディランは微笑んで、フランヌを見つめた。その横で顔を青ざめて呼吸を忘れたように立ち尽くすシュルクには、ようやく、理解出来た。

 二人は悟った。ディランは、この国の『殺人鬼』を退治しに来たのだ。

 彼が妖精王であり、最も古い神獣であることに、今、気がついた。


「ディラン様。」

 ディランの背後で待機していたエイド・ポータスが剣の柄を握った。

「必要ないよ、エイド。私は、私の言葉を誰よりも重く考えている。」

 ディランは、首を振った。フランヌとシュルクは自分の考えている最悪な最期を理解する前に理解した。

「どうせ、私の命令を言わずとも、妖精達が勝手に物事を進めてしまうからね。」

ディランがそう言って笑む。二人が気がつかないままに、二人の意識はもうない。



 ディランは、この城を美しいと思った。けれど、玉座に座る女性は、穢れていた。色濃く悪意が塗られた彼女の顔が、おぞましくてとても醜かった。前世の父親の顔をよりも、酷かった。悪臭が漂って、どこにも美しさを感じなかった。

ーーやはり。そういうことだったのか。私の大切な父親に呪いをかけたのは、ロギという家系の者達。ロギステヌ家の初代党首は、ドワーフの一族を束ねた女。あの女がこの地をドワーフの国として作り上げた。あの日、私を殺した張本人。

 ディランは、過去に追った生身の傷の痛みが蘇った。それと同時に殺した相手の顔すらもはっきりと思い出した。

 目の前に倒れ、息がもうない女の顔と、男の顔。よく似た目鼻立ち。そして、特徴的なドーワフにある右頬だけ削れたように薄くなっている肌。

 同じ人間から生まれた特徴であり、彼らに染みついた悪意のなれの果て。彼らには当主が持っていた強い憎しみが、もうない。だから、悪意の欠片は消えたのだ。ドワーフ一族は、妖精を嫌っている。そして、妖精王を特に嫌った。彼らには妖精の存在などみえないし、その力を少しも尊敬などしなかったし、不気味な存在だと警戒していた。そして、おきてしまった。妖精王の命と、その息子に手をかけたのだ。

 精霊王の呪いは、ドワーフの憎悪が作り出した呪いだった。その呪いはドワーフにもかえった。圧倒的な力を持っていた精霊王はドワーフに、目に見える呪いを残した。

 そして、今。目の前の二人に、怒りすら湧かない。

ーー継承された呪いは、いつの間にか薄れて、父様の呪いが解かれやすくなっていた。それはこの二人も同じ。もう、過去に縛られるな、という意味だろうか。


 ディランは、美しい城とその窓の先にある神秘的な森を見て、何故こんなにもたくさんの月日が流れても、人は人として生きていけるのかを、考え、後ろできちんと立っているエイドと視線が混じって、ふいに笑った。

 エイドは騎士として、主を見ていただけだ。そして、ディランは、彼を友のように感じている部分がある。彼が大勢の友人と共に笑っている姿を見ては、遠くにいるように感じ、こうして側に仕えている時は、仕事をしている立派な青年だと考える。

 一人という言葉と、孤独という言葉は似て非なるモノだ。

「・・・っふふふ。エイド。そこの二人を縛り上げて、連れて行こう。君に頼んでも良いかい?」

 ディランの言葉に、エイドはすぐに動いた。それから、ややあって。

「ディラン様。妖精様には頼まれないのですか?」

「・・・あはは!」

 エイドの言葉に吹き出した。ディランの様子にエイドはなんとも言えない顔をした。ディランは笑ったことに謝罪した。

「ごめんなさい、エイド。君の仕事をする姿をみていると、格好良いなー、なんて思えてしまって。」

 ディランの言葉があまりにも、まっすぐで、エイドは今度こそ黙った。顔は真っ赤になっていたが、それは、ディランの溢れんばかりの笑顔が可愛らしいと思っていることを隠しているからだった。

 二人の年齢はまだ若く、あまりにも稚拙な会話なのだから、二人が可愛らしいと、リーリアスがいれば言っているだろう。この場に二人しかいないことで、より子供のような会話が起きてしまう。

「ディラン様は、妖精様より、私にお願いしてくださるのですね?」

「・・・?うん。だって、先ほどは、エイドが倒してくれるって。そんな感じでしたよね?」

「え、ええ・・・。それは、だって、私はあなたの騎士ですし・・・。」

「でしょう?でも、嫌なら妖精たちにお願いしますよ?」

「・・・それは・・・。」

「それは?」

「それは、だめです。一度は私に頼んでくれました。」

エイドは、ディランを見てきっぱりと断り、二人を縛り上げ、担いだ。エイドのはっきりした物言いに、ディランはやはり笑ってしまう。

「ふふふ。そうでしょうね。私はとても素晴らしい騎士を手に入れたようです。」

「もちろんです。か、格好良いと思ってくださることも、嬉しいです。」

 エイドには妹と弟がいる。素晴らしい主君がいることを伝え、ディランを尊敬している事も伝えた。二人は母親の元で自分と同じように騎士を目指している。いつか二人もディランを守るために頑張ると言っていた。たまに兄を格好良いと言ってくれていた。そう言う意味で、ディランも言ったのだろう。

「そうなんです?私はてっきり、貴方の恋人が言っていたのを思いだしたから伝えたのですが・・・。」

「・・・え?」

「貴方の姿をみた恋人が、そう言っていたのを思いだしたのです。確かに、格好良いですね!そんな風に担げませんから。」

「・・へ、いや。ディラン様・・・。私の恋人とどど、どどういう・・」

「いつか、紹介してください。」

 エイドは、ディランの言葉を、今後は注意しながら判断しようと決めた。恋人のことも紹介する以前にまだ恋人にすらなっていないことも伝えないでおこう。

ーーディラン様はどうして恋人なんて言ったのか・・・


 ディランはエイドの心を知っている。恋人のことを今はまだ話すつもりはないが、エイドと大切な人は時が経てば、共に笑顔でいるだろう。見えている未来が絶対であるという事実をディランは知っている。

ーー相手の女性が、どのような人生を送ってきたとしても。エイドが幸せならば問題ない。私がみている風景には彼女が辛くて悲しそうな過去が見えた。この国に住むラルフレンの名を受け継いだ者達の子孫が受けてきたモノの名残。例えロギステヌ家を討伐しても、彼らが受けたモノの痛みが消えることはない。ただし。幸せは、時を早くしてくれる。それはいつだって愛という感情が与えてくれる。その感情は傷を癒やし、時の流れを速め、心を軽くする。

 エイドがディランのために部屋の扉を開けた。誰もいないのを確認してくれる。

ーーその傷を癒やすのが私の役目。エイドの幸せはエイドが決めることだけど・・・

 ディランはエイドに抱えられた二人の男女の今後を考えた。

「エイド。今から話すことは、君たちにとって、辛いことかもしれない。」

ディランは、まっすぐ城の大門からでるために歩いた。城にはほとんど人の影はない。冷たく凍ったこの城の内部で、フランヌは、ただ一人の王として立ち居振る舞った。彼女は孤独であり、誰よりも王であろうとした。空虚な城に住まうことが、王であるなら、玉座はなんのためにあるのだろう。

 民は、なんのためにいるのだろうか。


「君の恋人は、ラルフレンという名の家柄だろうか?」

 ディランは、エイドに尋ねた。

「えっと・・・。そ、その、家名は確かにそうです。」

 エイドは彼女の顔を思い浮かべて頷いた。

「そう。なら、その女性はね。私の家、ジェクシム家の分家のお嬢さんで間違いない。ジェクシム家には分家があって、ラルフレン家と呼ばれている。彼らには、本家と違い、妖精を見る力はない。けれど、魔物を討伐できる力はあるんだ。私や父様が使う魔法が扱える一族として、この地に根付いたようだね。もちろん、この地の王族になるはずだった。それを君が担いでいる、ドワーフたち土着民が奪った。ドワーフはある意味、私が討伐しなければならない存在であるのは変わらない。彼らは、私の・・・。」

 ディランは、エイドの顔が怒りで真っ赤になっていることに気がついた。

ーー怒ってくれる、仲間。私の大切な友。

 ディランは自分が泣いていることに気がつかなかった。



 前世の記憶の中でも、最も嬉しくて、幸せだったのは、死ぬ前の、あの老いたあおいの時期だった。大勢の仲間が楽しそうに笑って、謳って、働いた。

 どうして、人は幸せを、誰かと共に歌えないのか。若い頃は、急いで、慌てて、他人を蔑ろにして。それでも生きているのが大変だった。時が経つと、生きていることがただ幸せだと自覚し、他人に目を向けて、生きる楽しさを諭した。

 何故だろう。年をとれば、人を見る目を養えたことで、気づくこともある。若い頃にそれを手にできないからこそ、年長者から学び取ろうとしたはずだ。

 若いからこそ、気づける者もいる。そう言う者に、年老いた者の一部が、腐っていることに気づくこともあった。ああならないために、生きると決めるだろう。


 生きているという時点で、人は平等に生きる。何かが足りないことに気がついた者は、人より早く歩けるだろう。いつ気がつくかは、人それぞれだし、歩むスピードはそれこそ己の何が足りなくて、必要なのかを気づけるかどうか。


 ディランは、あおいとして生きたその世界で、気づきが遅かった。視野はずっとぼやけていたのかもしれない。周りの言葉を無視したり、一人で勝手に焦ったり。

 けれど、死ぬ前に気がついた。人の脆さや、人の愛し方。誰かが悪いということは、ない。目の前に立つ全ての人が、前を向いて歩いている。もちろん、自分に甘え、誰かを攻撃している者は、きっと周りを見渡せずに、足下から崩れていく。

 あおいは、すぐるが攻撃している者ではなく、あおいのために、悪役を演じていることに気がついた。遅い気づきだったろう。そして、どれだけすぐるに謝っても、もう遅いと理解してしまえるほど、二人の溝は深い。

 あおいは、すぐるが死ぬ間際、彼が残した言葉を覚えている。

『いつか、絶対に。お前を・・・・、許さない。』

 あの言葉は、あおいに対して言った言葉だと、今は思わない。




 ディランが流した涙はエイドの顔を真っ赤から真っ青にさせた。

「ディラン様?ど、どうされました?!」

 ディランは不思議そうに顔を傾げ、自分の頬に触れた掌が、困った顔をするエイドの温かさだと気がついた。

「ふふふ。あぁ、ごめんなさい。君がとても素晴らしい騎士だと改めて感動したんだ。」

 その言葉に、エイドは気恥ずかしそうに、掌を引っ込める。

「・・・。エイド。その二人は私たちの領土に戻ることはない。二人は、この国に住むようになった愚かな一族。大勢の妖精と、幻獣が、怒りでわなないている。この地は、私はかつて死んだ場所。妖精王が、ドワーフたちによって、殺された場所。」

 エイドは、固唾を呑んでいた。ディランは神々しく光り輝いていた。おそらく、もう二度と見る事はない姿を、エイドは見た。

 二人が王城から出た先に、何人ものドワーフが待ち構えていた。ディランは今までずっとその掌に眠る封印を解かないでいた。公王だからその掌に印が現れるわけではない。公王だから、その姿を封印するために作られた印。

 その封印を解けば、ローディと同じように、神獣の姿になれる。ローディは自由になれたが、ディランにはいくつかの条件が必要だった。


 その魂に、二つの力が交わらないこと。

 その魂に、己の枷を作ること。

 その魂が、人のためにあること。


 ディランはそれらに応えた。そして、あのときのように姿を変えた。ドワーフと戦うために。大切な者を守るために。


 神獣、エイラ・シム。生命を司る神獣が再臨した。

 碧い美しい毛並みの大きな虎だった。背には白い翼がある。エイラの力は、ただの虎が立っているだけで、全ての言葉が片付けられた。

 攻撃しようとしたドワーフは途端に事切れ、土に還った。生命はエイラの前ではエイラの自由になされた。絶対的に勝てない力を、私腹を肥やしたドワーフから見た時、誰もが動けなくなった。

 その時、エイラはエイドに言った。

『その二人を私の元に連れてきなさい。』

 エイドはすぐさま、意識のない二人をエイラの前に置いた。

 ドワーフたちは言葉なく、ただその様子を見つめていた。何が、起きるのか。

『貴方がたの王を還しましょう。その代わり、私の大切なモノを還しなさい。』

エイラは優しい声で、ドワーフに言った。巨大な虎を見たドワーフたちは迷うことなく首を振った。

「そいつらは、もういらない!王と偽って玉座に座っていただけだ!我らは、この地が欲しい!」

 ドワーフの一人が叫んだ。彼らが望んでいるものは、自分たちの領土。それは、玉座よりも己の力を誇示できるもの。人と人に境を作るもの。

 彼らが住まうこの地は、彼らの土地ではない。住む時間が彼らを傲慢にした。彼らが妖精たちを受け入れない『人間』だという事実が、この地に住む人間ではないことを物語っていた。

 彼らは、どこから来たのか。ディランは、その答えが全ての始まりだと知っていた。

『貴方がたが還すものは、この地を指します。貴方がたはこの土地から去るのです。この二人も連れて、還るのです。』

 エイラは、彼らがもたらした因果通りに彼らの命を元の世界へと還らせるという、大きな決断をした。美しい白い翼が羽ばたき、まるでそこに人が立っていたとは思えないほど、何もなくなった。静かな空気が大きな森に静けさを与えた。


 エイラがいた場所に、ディランがふらりと立ち、そのまま倒れ込んだ。エイドはあっという間に、ディランが地面に着く前に抱えた。

ーー俺の王は、誰よりも優しくて、けれどその根底にはあの『命の虎』が宿っていた。昔、母さんが言っていた・・


 この大地を、命の虎が創り、足を踏みならした場所に、芽吹いたたくさんの精霊が生まれ、妖精が生まれた後に、幻獣と神獣という概念が生まれた。その場所に人という命が生まれた。

 この大地には、精霊と妖精たちが愛した人々が生きた。命の虎は人を愛した。創り出した命に囲まれ、その魂は人になった。



 この大地を守るために人の姿で戦い、決して、その命の虎という姿に戻ることはなかった。命の虎を間近で見たエイドは、あまりにも息を飲む美しい虎を見ても、このいつも通りの姿のディランが好きで、ずっと守りたい主だと思った。

ーーディラン様は、俺のために戦った。俺の愛する人のために。彼女がどこの誰であろうと、幸せでいてもらいたい。それを、ディラン様は望んだ。いや、俺も望んでいる。だから・・

 エイドは、ディランを抱き上げ、この寒い城から離れた。少し進めば、マイケルやランディバーが待つ小さな家に辿り着くだろう。その場所ではきっとマイケルがじっとしないで待っている。ランディバーはきっとそれを揶揄っているはずだ。

 ラウムは黙ったまま待っている。だけど、ディランの様子を見たら、すぐに走ってくる。彼が神獣だと知っても、エイドはもう友達だと伝えた。彼が嬉しそうに笑っていた。

ーーあぁ・・・。ディラン様は愛されている。どうしてそれだけでこんなに嬉しいのだろう・・



 ディランの眠りは、命の虎をもう一度封印するための時間だった。すやすやと眠るディランに皆が寝ずの番をした。誰もが起きたときに彼を安心させたいと考えた。

 一夜明けても、ディランは起きなかった。起きるために、ディランを目覚めさせる人が必要だった。それほど、あの雄大な姿から戻るのは大変なことなのだ。

 ディランは、この地に流された大勢の人々を、あの地続きに繋がった世界へ戻したかった。きっと苦労をしただろう。見知らぬ地で生きることがどれほど大変なことか。生きて戻れなかった者達が、新たな命となり戻る者も、まだ消えなかった魂が帰る場所へ戻るために。時間軸通りに正しく戻れることもある。流れている時間は完璧ではないはず。ディランが望んだようになるかならないかは祈るしかない。

 けれど、この土地に住んでいるよりも前向きに歩めるはずだ。彼らはこの土地とはそぐわぬ魂を持ち、周りから嫌われ続け、永遠にいがみ合う。そんな場所で笑い合えず、相手を警戒して生きるより、戻った本来の場所でその命を謳歌する。そうして欲しいと願うのは、きっと自分勝手かもしれない。




次の話:Two Kings and One Soul そのに

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