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サラの祈り  作者: 和正
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雲の隙間から差す光(4)


その日は、雲が空を覆っていていたものの雨を降らすような気配はなかった。雲の隙間から降り注ぐ光はブシュラが今歩いて向かっている場所を照らしていた、サラの墓だった。


アフメドはここにサラの墓があることに納得できない顔を見せたが、当然かもしれない、サラの生まれた場所はここではなかった。新しい花と綺麗に洗われた墓石が、誰かがここに来たことを意味していたが、アフメドがここに来たと考えることはできず、それでも他に誰がここを訪れるのか心当たりがなかった。


墓の前で腰を下ろして、目を閉じながら手を合わせると、鳥の鳴き声や、風が揺らす木の音がよりはっきりと耳に響いた。屈んでいる腰の辺りに何かがぶつかった、ぶつかったという表現が正しいかどうかは分からないが、目で確認しなくてもブシュラは猫であることを分かっていた。


それでもどんな猫かと見てみると薄茶色の猫が撫でてくれるのを待っているかのようにブシュラのことを見上げていた。優しく体を撫でてあげると、目を瞑ってゴロゴロと喉を鳴らし、ブシュラが花を添えている間もその猫はどこかに行ってしまうことなく、そこを離れなかった。


ブシュラはたくさん撫でてあげてから立ち上がり、少し歩いて振り返ると、雲の隙間から差す光はサラの墓と薄茶色の猫を照らしていた・・・。


「ヌル、言いたいことがあるなら、遠慮しないで。そのためにここまで来たんでしょ」

「もし、手伝えることがあるなら、言ってください。それだけです」

「もちろん手伝ってもらうことになる。あなたは私のアシスタントでじゃないの?」


ヌルは頷き、ブシュラが自分を信用してくれているようで嬉しかったが、心の底から喜ぶことはできなかった。ブシュラも、これからアフメドが何をするのか、マルコに渡したメモに何が書かれていたのか、知ることができなくても、全く何も見当がつかないということではなかった。


「サラとアフメドは故郷に戻ることをずっと考えていたから、マルコに渡したメモはそのことに関係していると思う。そのメモじゃなくて、マルコが読むことが重要だから。もし私たちがあの香りを再現できたなら、香水をアフメドに渡さないといけない、大切なことを思い出させるために」


チャイからはもう湯気が出ていなかった。ブシュラは喉の渇きを癒すためにではなく、口を濡らすために冷めたチャイに口をつけた。


「ウムトは正しかったってことですか?」

「そうね、どうやってここまで知ることができたのかは分からないけど。ここにだって医学雑誌の写真に小さく写っていた香水の瓶から辿り着いたくらいだから、何か特別なものがあるのかもしれない。だからこそ、ウムトに頼んでみたの。サラの祈りについて、きっと何か見つけられると思って・・・」


ブシュラがこれ程までにウムトを信頼しているとは思いもしなかったが、鈍感なところもあるけど、何か頼りたくなるような雰囲気があるのは確かだった。


それが何なのかは分からないし、知ることはできないだろう。ただ思いを託したくなるような、願いを叶えてくれるのではないかと感じさせる何かがあった。



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