共鳴(3)
「今日はダリヤが来院する日ですよね?」エムレもそのことが気になっているのだろうか。「そろそろ来るだろう」「そうですか、何かあれば知らせてください。済ませておきたい仕事があるので、先に失礼します」エムレ医師は手術室を後にした。
アフメドは急ぎの仕事はなかったが、やらなければならないことは山積みだった。暫くして、それでも三十分経たないうちに看護師がアフメドを呼びに来ると、すぐに立ち上がりロビーに向かった。
すぐにその女性がマルコの娘だとは分からなかったが、不思議な雰囲気を放つ女性が周りをウロウロと見ながら誰かを待ってた。紫色の、リラの花柄のワンピースを着た女性を窓から入る日差しが照らしていた。
結局、その女性がダリヤだった。アフメドが想像していた女性とは全く違い、マルコの影は全く見つけられず、親子であることを認めるのは難しいくらい似ても似つかなかった。
絵画に描かれているような顔立ちだった。世界中の美術館を回れば同じ女性を絵画の中に見つけられる自信をアフメドは抱いていた。これがダリヤの第一印象だった。ダリヤも自分に近づいてくる白衣の男性がアフメド医師であることに気がついたかのように軽く会釈した。
偶然にもダリヤの影には翼が生えているような不思議な模様を描いていたが、驚くようなことではなく、病院の柱や、何かの影がそう見せていることは明らかだった。ただアフメドはその影をじっと見ていた。
「初めまして、アフメド医師ですか?」「そうです、ダリヤさんですね?お父さんから話は聞いています」この何気ない言葉はダリヤの顔を歪ませ、何が原因なのかはアフメドも何となく分かった。
アフメドも同じように父親との関係は良好ではなかったし、一瞬だけではあったが、そのj表情の歪みは強い印象を与えていた。「ダリヤです。どんな人かと正直不安もありましたが、そんな心配をする必要はなかったみたいです」
多くの意味がこの短い言葉の中に含まれていたのだろう。もちろん手術を担当する医師がどんな人間なのか心配したのは嘘ではなくても、今までたくさんの医師と会い、その中には信じられないような医師とも出会ったのかもしれない。
アフメドはダリヤとカセットプレイヤーのある部屋ではなく、患者と話す白く清潔な部屋に向かった。そこは誰もが想像する病院の一室だろう。そこで手術の説明をすることもあったが、今日はそのつもりはなく、ダリヤから父親のマルコについて何か聞くことができればと考えていたが、それが難しいことは既に分かっていた。
「医師の前でこんなことを言うことは失礼かもしれませんが、今まで私を診てくださった医師の中には誠意が感じられない方もいました。ただ、あなたがそうではないことはなぜかすぐに感じたんです」
ダリヤはマルファン症候群を抱える中で、さまざまな症状と向き合い、数えきれないほどたくさんの病院に行き、医師と話してきたのだろう。アフメドはマルファン症候群に詳しくはなかったが、今まで手術してきた患者の何人かがそうだった。
「父とも話したんですよね?」
「ええ、話しましたよ」
意外にもダリヤは父親のマルコについて話し出した。




