花柄のワンピース(3)
復讐の機会としてなぜかアフメド医師の記事が関わっているようだった。
「もし、ユルマズに言わないと約束してくれるなら、僕からも少しだけ話せることがあるけど?」
親切心からこう言ったのではなく、メルベにこの件について深く関わって欲しくないのが本心であり、警告として彼女に伝えたいことがあった。
「分かった、約束する」
「そのボイスレコーダーには二人の人物の会話が録音されていたんだけど、知っての通り僕が壊した」
「その二人は誰なの?」
「それは絶対に言えない。とにかくこの事について深く関わらないでほしい」
「それは無理よ、私はユルマズと働いているのよ」
「そうだけど・・・。とにかく、ボイスレコーダーはフルカンの推測を裏付ける証拠だったんだと思う。確証はないけど、だからこそフルカンはボイスレコーダーを粉々にされてここまで怒ったんだ」
「もしそうなら、あなたはフルカンの計画にとって重要なものを破壊したのね、でも彼はあなたの上司でしょ?」
「理由として正しいとは思わないけど、フルカンのことは嫌いだし、何を考えているのか今も分からない。手を貸すような気分がして嫌だった。取り返しのつかないことが起きる前に何とかしたかったんだ」
「気持ちは分かるけど、フルカンがもし冷静に対応していたらあなたはクビになっていたかもしれないわよ」
「そんなことはどうだっていいんだ。とにかく君はこの件に深く関わらないでくれ」
「そこまで危険なのか分からないけど、あなたも私に対して隠していることがある。フルカンと同じことをしていることに気がつかない?」
メルべは鞄を持って立ち上がった。「そろそろ行くね、また来るから」と言い残して足早に去ってしまった。また来るとは考えられなかった。運ばれてきた昼食は離乳食のようではなく、普通の食事だった。
夕方、メルべを怒らせてしまったことを後悔しながら外を眺めていると意外な人物がウムトの見舞いに訪れた。「アフメドに話があって来たら、あなたが入院していることを聞いたの」ブシュラだった。
「突然来て驚かせてしまったかもしれないけど、アフメドは仕事があると言ってどこかに行ってしまったから、ついでと言うのは失礼かもしれないけど受付で部屋の番号を聞いて来たの・・・」
「アフメド医師と何を話すつもりだったんですか?」「ボイスレコーダーについて。本来あなたのものでしょ?」ブシュラが何を言っているのかさっぱり理解できなかった。ボイスレコーダーはウムトが壊したはずだし、ブシュラがこのことを知っているはずがなかった。
「ボイスレコーダー?」
「ヌルが私にも聴く権利があると思ったみたいで、彼女と一緒に聴いてしまったけど、聴くべきだったかどうかは今でも分からない・・・」
ウムトの知らないところで何かが起きているようだった。
「今ここにヌルを呼んでくれませんか?」
「そうね、アトリエに電話してみる」
そのまま電話を掛けに病室を離れた。ヌルがボイスレコーダーを持っているのか?もしそうなら、ここにある血のついたボイスレコーダーの破片は?考えられることは一つ、これは偽物だった。本物のボイスレコーダーはヌルの手元にあるのだろうか?ただどのタイミングですり替えられたのかウムトには分からなかった。




