雨と雷(5)
水曜日の朝、これをフルカンに渡すべきだろうか?このボイスレコーダーがフルカンの手に渡ることによって何が起きるのか、そもそも何のためにこんなことをさせたのか?フルカンが隠している部分が余りにも大きすぎて何も見えてこなかった。
マルコが日曜日ではなく、土曜日に来ることをどうやって知ったのか?ベッドに潜っても寝むれるはずもなく、色んなどうしようもない考えが頭の中を駆け巡っていた。この録音はフルカンにとって大きな証拠になるのは確かだった。
目覚めると、机の上にあるボイスレコーダーは窓から入る光で照らされていた。本来、今日マルコが病院に来るはずだった。
何もしたくなかったし、急ぎの仕事もなかったからその日は会社に連絡して休むことにした。ベッドからテレビを観ていても全く疲れは取れなかったし、昨日から水しか飲んでおらず、空腹で苛立っていた。
スーパーに行く際もボイスレコーダーをポケットに入れておいた。それからチーズや、ハムなど、パンに挟んで食べられそうなものと牛乳を買ってすぐに家に帰った。朝食なのか、昼食なのか中途半端な時間だった。
その後、家に持ち帰ったいくつかの資料を読み直して過ごした。アフメド医師に何かを言えるとすれば、それはブシュラしかいなかった。アフメド医師を止めようとするのは正しいのか?考えても答えは出なかった。
ただ、そうすることでマルコに手を貸しているような嫌な気分が湧き上がってきたが、何もしないことが正しいとも思っていなかった。起きるのが遅すぎたのか、答えの出ないことをひたすら考えていたからなのか、あっという間に夕方になり、外は真っ暗だった。
フルカンに嘘をつくのはあまりにも難しいことだった。彼の嘘を一度も見抜けたことがないし、ウムトが知る限り「嘘」という分野に最も精通している男だった。翌日、出勤するとフルカンの視線をはっきりと感じた。この時点でフルカンはまだウムトが成功したのか、失敗したのか知らないはずだった。
その疑いの視線はウムトを、刺すように鋭かったかもしれない。ただウムトは見返すことなく、いつものように机に鞄を置いて仕事に取り掛かった。フルカンはウムトが成功したことを確信していただけでなく、録音を聴いたことも想像がついていた。
失敗していても、成功していても、それはそれで何か言いにくるはずだった。だからこそ、ウムトが録音を聴いたのであろうことは何となく想像がついていた。ウムトにできることは何もないと分かっていたからこそ、フルカンは録音を聴くなとも、聴けとも言わないでいた。
昼休みになると、フルカンはウムトを昼食に誘った。少し歩いたところで見つかった食堂に二人は入った。ウムトもフルカンがなぜ昼食に誘ったのかは分かっていたが、フルカンはなぜかその話をしようとしなかった。仕方なくウムトが土曜日のことについて口を開いた。
「目の前にいたマルコから嫌な感じがしました。それが何なのかは分かりませんが・・・」ウムトの声が聞こえていないかのように机に置かれた料理を口にした。
少し食べたところでフルカンは言った。「お前も食え、マルコについて何も知らないわけじゃないんだよ、俺も」それでも、ウムトは料理に口をつけないまま「あのボイスレコーダーで何をするつもりなんですか?」と質問した。
「知るか、お前と違ってまだボイスレコーダーを聴いてないからな」「それでも何か知ってますよね?」ウムットは無意識にボイスレコーダーを聴いたことを、そして録音に成功したことを打ち明けていた。




