白いユリ(2)
フルカンは、いつの間にかノートを手に持っていた。横から少しそのノートを覗いてみたが、字が汚くてほとんど読めなかった。ただいくつかの日付が書いてあり、ここに来るのは初めてではないのは明らかだったし、不動産屋とも親しいようだった。
ところで、なぜ嘘をつく必要があったのか?嘘によって何を隠したかったのか?フルカンの謎は深まるばかりだった。チョコレートが口からなくなると不動産屋は説明を続けた。
「噴水で出会った女性について聞いたことがある。アフメドはその女性というよりは、彼女の不思議な雰囲気が、言葉が気になって仕方がないようだった・・・」ウムトはこの女性が誰なのかすぐに分かった。
「アフメドがその女性をここに連れてきたことはないが、聞く限り、確かに不思議な魅力を持つ女性だと思ったよ。その子について何を話したか、はっきりとは覚えていないのが残念だね・・・」
それから、再び新聞記者になりたかった話に戻った。チャイを飲み終えてフルカンと不動産屋から出た。不動産屋は別れ際にフルカンとウムトのポケットにチョコレートを突っ込んだ。
ガラスの引き戸は固く、滑らかには開かなかった。「いつからここに来ているんですか?」フルカンはポケットからタバコを取り出した。一本手にとって、口に咥えると、ライターを手にとった。火をつけて、煙を吐いてから答えた。
「二、三ヶ月前に初めてここに来た。これは五回目になる。お前は誰からここについて知ったんだ?」
「どうして僕に教えてくれなかったんですか?アフメド医師の記事を僕が書くんですよね?」
煙が宙に吹かれた。
「特別な意味はない。ここに来ることを誰かに言ったか?」
「外出することは伝えました。どこに行くかは言ってません。ただユルマズがなぜか、どこに行くのか気にしていました・・・」
ユルマズという名前を聞いた瞬間、フルカンは舌打ちをした。なぜそこまで苛立っているのか分からなかった。
「あいつには何も言うな」
「ユルマズも何か調べているんですか?」
「いちいち口答えするな、俺の言うことが聞けないのか?」
「アフメド医師は一体何者なんですか?」
答えないままフルカンはタバコを吸い終えると歩き出した。ついていくべきなのか、考えているとフルカンの声が聞こえた。「何してんだ?早く来いよ、昼飯食わないのか?」ウムトも歩き出した。三分くらい歩いたところで見つかった通りの食堂に入った。
床がベタついていたが、ソースの香りが食欲をそそった。注文を店員に言い渡すと、フルカンは急に真剣な顔になった。「一人の人間の過去について知ることは簡単じゃない、誰も入ったことのない洞窟に入るには大きな覚悟が必要になる、忘れるなよ」
フルカンが何を言いたいのかパッとしなかったが、とりあえず「分かりました」と返事だけしておいた。「人の人生を井戸に例えるなら、アフメド医師の人生はお前が思っているよりもずっと深いし、暗い。その底から水を汲み上げないといけないんだぞ」このフルカンの説明もよく分からなかった。
店員が料理を机に置くと、フルカンは入れ替わるように席から立ち上がった。「どこに行くんですか?」「タバコ吸ってくる」と言い残して、外に消えていった。
どれだけ待ってもフルカンが戻ってくることはなかった。ウムトが隠れて尾行するのを予想していたからこそ、食堂に連れてきたんだろう。このことに気がつくまで、二十分が過ぎた。




