街の美しい場所(3)
フルカンなら、どうするだろうか?
ウムトがそこで働きはじめて三ヶ月くらいだった、まだ右も左も分からないままフルカンに着いて行く日々の中で、フルカンがある事件のことで根拠のないただの憶測を言い出した。誰も信じなかったし、ウムトもこれに関しては信じることはできなかったが、結局フルカンの推測は正しかった。
フルカンの発言は大きな意味を持つようになったし、それからもフルカンの根拠のない推測が外れることはなかった。ウムトもフルカンの人としての振る舞いは尊敬していなかったが、結果を推測するその一面は信頼していた。
鞄を机の脇に置いてから、理由もなく二十年前の新聞をいくつか手に取った。何かが見つかるとは思っていなかったが、小さな望みと共に、新聞に目を通した。その後に棚から新しく手に取った十年前の新聞を読んでいる時に、最近知り合った人物の名前が目に留まった。珍しい名前ではなかったから同じ名前の別人ではないかと思ったが、そうではなかった。
思った通り、その記事のブシュラはあの調香師だった。記事の小さな写真がウムトに確信を与えた。十年前のその写真は少し若く見えたものの、すぐに分かった。写真を撮られることに慣れていないぎことない表情がそこにはあった。
この不慣れな感じが、ウムトに若さを感じさせたのかもしれない。「街の美しい場所」と題された記事だった。椅子に座って記事を読みはじめた。ほとんど休みを取ることなく働く彼女に、記者は次のような質問をぶつけていた。
「そんなに働いていると休みたくなりませんか?」記事を読みながらウムトも同じようなことを感じた。忙しいのは事実であっても、それだけではなく、意図的に自分自身をそのような状況に置いているようだった。
「何もしない時間が怖いんです。友人の死が私を変えてしまったのかもしれません。時間が経ってもその死を受け入れることができていないように感じます。空いた時間には必ず頭に浮かんでしまうんです。悲しみから逃げるために働いてるのかもしれません」と答えていた。
この文章を読んで、そのブシュラの友人とはアフメド医師の亡くなった妻ではないかとふと思ったが、根拠はなかった、ただの憶測だった。他の箇所は調香師という仕事とそのアトリエについてだった。よくある新聞の記事だったが、ただその箇所だけが調香師ではなく、ブシュラのことを説明していた。
めちゃくちゃに新聞を読んだので日付通りに新聞を棚に戻すのに時間が掛かった。その記事のコピーを取ってから、図書館の外に一歩出ると、通りの喧騒がすぐに聞こえた。ハイヒールが地面を叩く音がウムトの横を通り過ぎ、クラクションの甲高い音がウムトの耳に響いた。日は沈み、夜が近づいていた。会社に戻るとすぐにフルカンが今までどこにいたのかを訊いてきた。
「図書館です。アフメド医師について調べたいことがあったので・・・」「そうか」それから少しして、ウムトの机まで来ると、何も言うことなく積み上げられているファイルの上に一枚のメモを置いた。ファイルの山を崩したいのだろうか?わざわざそこに置く意味が分からなかった。
ウムトは急いでファイルを抑えた。フルカンはメモについて一言も言うことなく重い扉を体で開けて帰ってしまった。




