街の美しい場所(2)
「・・・いて俺も少し調べた。この件に関してはお前に任せるしかない。俺のことを嫌いな奴は少なくないし、知っての通りユルマズもその一人だ。長いことここで働いているし、あいつとは同期だ。
アフメド医師について調べる表向きの理由は、お前の記事だ。これについて疑う奴は少ないだろう。とにかくアフメド医師は幼い頃この国に来た。父親の仕事の関係ではなくて、行き先を知ることなく、ここに辿り着いたと言った方が正しい表現になるだろう。
アフメド医師の家族は故郷を離ればければならなかった。戸籍とか、色々見ることができたんだが妻を亡くしてる。アパートには一人で住んでいるらしい。アフメド医師は故郷に戻ることを、奪われたものを取り戻すことを望んでいるようだが、一人の医師に何ができる?その望みか、願いが行き場を失って心の中で彷徨っているんだろう。
そこで、日曜日に誰が来る?ただ手術のことを話して終わるだろうか?それだけじゃない、アフメド医師はこのことについても話すだろうと考えてる。マルコの発言には大きな力がある。ボイスレコーダーの設置と回収だけがお前の仕事ではない、これから記事を書くために病院に行くことになる。
アフメド医師が本当に望んでいることは何か?過去がそれを知るための糸口になるだろう。過去についてという意味では、亡くなった妻について調べてみるのもいいかもしれない。その妻について知ることは、何か大きなことに繋がるんじゃないかと俺は考えている。
全部終わったら、水曜日の朝、お前のデスクの一番下の引き出しにボイスレコーダーを入れておけ。それから、全部聴き終えたらこの録音を消し忘れるなよ・・・」
ここで録音は終わっていた。
フルカンがどうやってこれらを調べ上げたのか気になったが、とりあえず録音を消去した。机に戻ってから仕事に集中できるはずがなかったし、これから何が起こるのか?自分の身に何が起きたとしても、不思議ではなかった。アフメド医師の過去は何があったのか?大学や、病院の名前ではなく、一人の人間の過去として・・・
この問題にマルコがどう関係してくるのかも明確になっていない点だった。彼らは何をするつもりなのか?頭を駆け巡るたくさんの問いがウムトの頭を混乱させた。故郷の重みはウムトが想像できるようなものではなかったし、この問題の深刻さを突きつけていた。
アフメド医師の左手の薬指に指輪が嵌められている写真は一枚もなかった。ウムトは危険を感じながらも真実を知りたいという好奇心が大きくなっていた。翌日、期待とともに市の大きな図書館に向かった。館内は、外の喧騒が嘘のような静けさがあった。座って新聞を読んでいる白髪の男性、ノートを開いて勉強している学生、本棚の前で本を探している白いブラウスの若い女性、様々な人々がそこにいた。
ウムトは受付で新聞の記事を探していることを伝えると、新聞閲覧室にウムトを案内した。広い部屋の中央には大きな机があって、その机を囲むように四方の棚に新聞が日付によって収納されていた。
部屋には新聞の独特な匂いが漂っていた。会社にいるような気もしたが、そこにはフルカンはいなかったし、タバコの匂いもなかった。もしアフメド医師の妻が特別な理由で亡くなっているのなら、記事になっている可能性もあったが、そうだとしても何の手掛かりもなくその記事を見つけることは不可能に近かった。




