窓辺で手紙を読む女(4)
*
どうやってあの新聞記者はブシュラのところに辿り着いたのか?
その疑問はアフメドを不安にさせた。ブシュラが新聞記者に何でも話してしまうとは思えなかったが、その場を離れられず、電話を見つめていた。今までインタビューや、記事を書くために訪れた記者たちは心臓外科医としてのアフメドについて知りたがった。
あの若い新聞記者の目的が見えなかった。ブシュラとの関係をどのように知ることができたのか?どこかで話した覚えはなかった。突然、名前を呼ばれ、アフメドに電話がきていた。
またブシュラが電話してきたのだろうと考えていたが、彼女ではなかった。低い男性の声だった。名前はマルコ、エジプトの政治家だった。テレビの画面に映る彼の冷酷な顔が印象に残っていた。
どうして電話をかけてきたのかすぐには言わなかったが、想像はついていた。手術の相談を電話で受けるのは珍しくなかった。年齢は知らなかったが、決して若くはなかったし、一つ、二つ病気があってもおかしくなかった。ただ、話を聞いていると娘の手術を望んでいるようだった。
詳細は日曜日の夕方に病院で話したいとのことだった。受話器を置いた。特にその日のうちに終えなければならない仕事はなかったが、家に帰る気分にはなれず、カセットプレイヤーから流れる音楽に身を委ねた。
マルコと話すことは簡単ではなかったし、見方によってはチャンスだった。トラックの荷台で過ごしたあの夜が、祖国が、頭から離れることは決してなかった。
サラはいつも何かを探しているように、遠くにある何かを眺めていた。サラの視線は過去に向けられてたのかもしれない。そこに置いてきた何かに思いを馳せているようだった。サラがそのことについて教えてくれることはなく、ただ「自分の力で探したいの」と言って、蝋燭の火を吹き消すように息を吐き出した。
「天使がどこかで私を待っている。彼女も私のことを探している・・・」
言葉の中に含まれる感情は複雑に絡まっているようだった。祈りとか、望みもあったかもしれない。それは手に触れられるようで、決して手の届かないものだった。




