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サラの祈り  作者: 和正
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恐竜の化石(1)


エムレ医師は研修医としてここに配属され、学生の頃から憧れていたアフメド医師の近くで働けることに興奮しながら初日を迎えたそうだが、緊張からいつもはしないようなミスをしてしまい怒られた瞬間、もう自分は医師になれないと思ったらしく長い時間が過ぎてもその初日のことを忘れていないようだった。


珍しいことではなく、誰もが通る道でありアフメド医師もアメリカの病院で働いていた頃、何度も怒られながら成長し、段々と一人前の医師になっていったことを付け加えた。


今まで何度も研修医だけでなく、同僚にも怒鳴ることはなくても医師としてはっきりと伝えることは伝えてきたアフメド医師にとって初日にエムレ医師を怒ったことなど一週間前に食べら昼ごはんを思い出せないように覚えていなかった。


ただエムレ医師の第一印象は声が小さく、体の線が細い子鹿みたいなやつで、そのうち医師としてではなく、疲労とストレスで倒れて患者として病院にお世話になる日が来るんじゃないかと冗談ながらに思っていたが、意外にも我慢強く息を切らしながらもしっかりと必死についてくる様子に驚かされたことはアフメド医師も忘れずにはっきり覚えていた。


そんな昔話が終わると、アフメド医師はファイルを閉じて「今日はゆっくり休んでください」とダリヤに言いながら立ち上がった。ウムトもダリヤの後ろから部屋を出ようと扉に向かうと、アフメド医師に呼び止められた。


「ダリヤのそばに少しでいいから付き添っていて欲しい。何か話しだしたら、ただ聞いていればいいから。そのくらいは協力してくれるだろ?」


手術に対する不安や、医師に話せないこともウムトになら話せると考えたのだろうか?ウムトは頭を縦に振り頷いた。それからダリヤと部屋を出て、二人で病室に向かった。


振り返ると反対方向に歩き出すアフメド医師とエムレ医師が見え、長い廊下を遠ざかっていく二人の背中は大きく、これから訪れる困難を乗り越えられるような気がした。


ダリヤの病室の窓からは、ウムトが入院した際に横になっていた窓際のベッドよりも中庭を上から見下ろすことができ、ちょうど真ん中から左右対称に眺めることができた。サッカーを観戦するスタジアムで考えれば、そこは一番良い席だったかもしれない。


サポータが集まるゴール裏の席も魅力的だったが、一度くらいはそんな豪華な席でサッカーを観てみたいとウムトは中庭を眺めながら考えていた。


この病院は知らない場所ではなく、記事を書くためにアフメド医師を幾度も訪ね、マルコが来た日にはボイスレコーダーを仕掛けたし、つい最近まではフルカンに殴られ入院までしていた。


受付の職員や、看護師の中にはウムトを覚えている人がいても何ら不思議なことではなかったし、ウムトも受付の職員や、ご飯を運んできてくれた看護師の顔を覚えていた。




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