再会(6)
ダリヤに理解してもらうために、アフメド医師も必要以上に医学用語を混ぜることなく話していたが、それでもいくつかのことをウムトは分からずにいた。
どうやらダリヤは心臓に問題を抱えているというよりは生まれつきの持病があり、そのために心臓の手術をする必要があるらしかった。
十日から二週間は病院に滞在することになるらしく、手術がどれだけ大掛かりでリスクのあるものなのか、ウムトは聞いているだけで顔が青ざめそうになっていたが、ダリヤは顔色を一つ変えることなく、アフメド医師の説明に耳を傾けていた。
そのダリヤの横顔から諦めにも似た少し悲しい表情を見ながら、今までに何度もそういう体験をしてきたのかもしれないと思い、ウムトは自分がもしその立場だったらと想像した。
しかし、どれだけ当事者の気持ちに近づこうとしても、そこにはいつも計り知れない距離があるような気がしてならなかったし、新聞記者として取材する先々で追い返されることも一度や二度ではなく、記事のネタを見つけたかのようにやってくるマスコミの人々を嫌うのも彼らにすれば当然なのかもしれない。
ダリヤの横顔の悲しみにも似た諦めの正体は、もし手術が最悪の結果に終わったとしても、最善を尽くした上でのことだと納得できるのがアフメド医師だったのかもしれない。
それでも、アフメド医師はウムトが考えている何倍も優秀な医師だということは、病院を訪れながら同僚である他の医師や、看護師の挨拶や態度から肌で感じられることだった。
ダリヤの質問に対しても曖昧な表現は避け、はっきりと答える毅然とした態度に医師としての覚悟を感じ、そうすることでダリヤの不安をできる限り小さくしたかったのかもしれないが、ダリヤの不安が小さくなっているとはどうしても思えなかった。
一通り説明を終えたところで誰かが扉をノックし、アフメド医師がウムトの時のように「どうぞ」と言うと、アフメド医師と比べれば若かったが、それでも三十代半ばくらいの男性の医師が部屋に入ってきた。
スポーツ選手のような引き締まった体型と爽やかな表情が印象的で、アフメド医師の隣に座ると、今まで流れていた重い空気を和らげるように趣味であるマラソンについて話し出した。
最近購入したランニングシューズで靴擦れしてしまい、この間も新しいランニングシューズではなく、古くなったランニングシューズで走ったこと、三年前に出場したマラソン大会で自己新記録を更新したこと。
その体型がランニングによって保たれていることは明らかだったし、ウムトの方がひと回りくらい若かったが、一緒に走ればついていけない気がしてならなかった。アフメド医師がいつも唇を固く閉じて仏頂面をしているのとは違い、柔らかい表情が声を掛けやすい、そんな雰囲気を感じさせていた。
名前はエムレ、歳は三十五、ダリヤはエムレ医師と年齢が近く、三十三歳だと年齢を伝えたが医師である二人はダリヤの年齢をあらかじめ知っていたし、そこで小さな笑いが起きた。




