再会(5)
受付でアフメド医師の名前を口にした途端「ウムトさんですか?」と切り返された。
「そうですけど・・・」
「アフメド医師がお待ちですよ」
部屋の番号を教えてくれたが、番号だけでは分かるはずもなく、そんなウムトの顔を見兼ねた職員が丁寧に病院の案内図を指差してその部屋の場所を説明してくれた。本来なら自分で案内図を見てその部屋まで行くのだろう、よほどウムトの顔が鈍臭かったのかもしれない。
それだけでなく、アフメド医師が待っているというのも今までになかったし、アフメド医師らしくない気がしてならなかった。教えられた番号の部屋まで来てもすぐにはノックせず、扉に耳を近づけて中から何か聞こえないか探った。
そのウムトの姿はあまりにも不審だったし、幸いにも近くを通る看護師や、患者はいなかった。アフメド医師の他に誰かが部屋にいるらしく、女性の小さな笑い声が聞こえた。
部屋を間違えたのだろうか?それでもアフメド医師の声も中から聞こえていた。ノックをすると、はっきりとした「どうぞ」と言うアフメド医師の声がして、間違った部屋ではないことを示していた。
金属の冷たいドアノブを回して中に入ると、そこにはアフメド医師だけでなく、あの日と同じ花柄のワンピースに身を包んだダリヤが座っていた。カセットプレイヤーのある部屋とは違い、白く清潔で明るく、そこはまさしく病院の一室だった。
「久しぶりねウムト、さあ座って」とテーブルに招いてくれたのはダリヤだった。ウムトが空いている椅子に腰掛けると、待ち侘びたような声で「私が言った通りになったでしょ?」と自信に満ちた表情も付け加えて言った。
返事に困っているウムトに助け舟を出すかのようにアフメド医師が背もたれに体を預けながらリラックスした様子で言った。「ダリヤさんに感謝した方がいいんじゃないか?記事を書くのに協力してくれるみたいだぞ」ウムトもすかさず言葉を返した。
「アフメド医師は問題ないんですか?」
「手術室まで入れることはできないが、ダリヤさんが拒まなければ、横で話を聞いていてもらって構わない」
今だに状況を飲み込めていなかったし、上手くいきすぎているような気がして少し不安になり、無意識に身構えていた。「そうですか、ありがとうございます」と感謝していても、素直に喜べているわけではなかった。
「運が良かったな。つまらない記事だけは書かないでくれよ。協力する以上は記事を通して自分の仕事を多くの人に知ってもらいたいと思ってる」
アフメド医師の前に置かれている半透明のクリアファイルにはダリヤの病気について書かれているのだろうか?ウムトが知ったところで何もできることはなかったが、いかにも健康そうなダリヤがどんな病気を抱えているのか気になっているのも事実だった。
そのファイルに書かれていることについてウムトが思っていたよりもずっと早く知ることになり、早速アフメド医師はファイルを開いて、どのような手術をするのか、どのくらいの期間を要するのか、退院までの大まかな流れを説明した。




