美しい香水の瓶(5)
アフメド医師がどれだけ優秀な医師であることが分かっても、どんな人間なのか知ることはできなかった。一つくらいそのような記事があってもいいはずなのになかった。
冷蔵庫から牛乳を取り出して、コップに注いだ。喉の渇きを満たすために勢いよく口に含んだが、腐っていたのが一瞬で分かった。シンクに吐き出して口をゆすいだが、不快感が口に残った。パッケージに書かれていた消費期限はとっくに過ぎていた。新しいコップを取り出して、水を注いで飲みながら机に戻った。口に残る不快感は中々消えてくれなかった。
退屈な記事を読んでいると眠気がやってくるのは当然で、そのまま記事を読むのは諦めてウムトはベッドに向かった。何をやっても上手くいかない日だった。
腐った牛乳の匂いが鼻を突き、それ以上眠れなかった。まだ起きるのには早かったし、最悪の目覚めだった。腐った牛乳の匂いはしつこく部屋に残り、なるべく早く家を出た。こんな古いアパートに泥棒など入るわけがないと窓を開けたままにして職場に向かった。
早く家から出たから時間に余裕があり、カフェで朝食を済ませた。目覚めこそ最悪だったが、熱いクロワッサンとコーヒーがそんなことを忘れさせてくれた。電車のガラス窓に反射する自分の顔を見て、昨日のフルカンの言葉が頭に浮かんだ。『犬のような』とはどういう意味だったのか理解できなくても、そのボサボサの髪は確かにひどかった。
牛乳を買った日と同じように、最後に髪を切った日も思い出せなかった。職場の窓から入る光は、まるでウムトを目覚めさせようとしているように強くデスクを照らしていた。まず、書類の山をどうにかしないといけなかった。
「ウムト!」犬を呼ぶようなフルカンの声がむかついた。タバコは吸っていなかったが、ジャケットに、鞄にタバコの匂いが住み着いていた。「何ですか?」不吉な何かを感じた。頼み事があれば、基本的にはデスクから大声でウムトのことを呼んでいた。
「マルコについて調べたくないか?日曜日、イスタンブールに来るらしい」
マルコはエジプトの政治家で、彼については悪い噂しかなかった。嘘か本当か定かではないが、恐ろしい話もあった。不穏な香りがした。他の人に聞かせたくないのも明らかだった。ウムトは足を踏み入れてはいけない場所に迷い込んでいたのかもしれない。




