再会(3)
入院したことで、アフメド医師も新聞記者としてでなく、一人の患者としてウムトに気兼ねなく話しかけてきた。これまで接してきたアフメド医師とは少し違い、少し柔らかい表情が印象的だった。
フルカンもこの謹慎処分を活かして、毎日のように『名のないカフェ』に変装して通いながらユルマズとメルべのことを探っているようだった。
「二人は気がついてないんですか?大胆な方法だと思うんですけど?」
唇の左端を持ち上げながらニヤける顔はあまりにも不気味だった。
「そうだな、それでも不思議と上手くいってるんだよ、なんでだと思う?時には大胆さが必要なのさ。そういった意味では、そのヌルとかいう友達を見習ってみるのもいいかもな。明日、病院に行け、ダリヤを待つんだ。それじゃあな、俺は暇じゃない」
フルカンがダリヤの名前を口にした声には、何度もその名前を呼んできたような親しみと、長い月日が感じられた。記憶の底から浮き上がるようにウムトも初めて病院の中庭でダリヤを見た時の光を集めているような姿を思い出していた。
「もしかしてダリヤがマルコの娘なんですか?」フルカンは立ち上がるのを一度やめて、ウムトのことを目で探った。
「あいつと話したのか?」
「病院の中庭で偶然出会いました。病院の入口を教えただけですけど」
「そうか、お前の言う通りダリヤはマルコの娘だ」
フルカンの言葉を信じたくなかったし、信じられなかった。
「それじゃ、患者はダリヤでアフメド医師が手術をするってことですか?」
「俺よりも先に録音を聞いたんだろ?」
それでもショックだった。健康診断とか定期検診とかそんな理由で病院を訪れたのだと思いたくても、大きな病気を抱えているようには見えなくても、ダリヤは心臓に病気を抱えていることを意味していた。
「アフメドの記事について俺から一つアドバイスをやろう。ダリヤの手術のことも加えてみろ、お前はただ近くにいればいい。アフメド医師は知らんが、ダリヤからは許可をもらってる」
それからフルカンは何も言わずにドアに向かいながら、耳をほじり、その汚い指でドアノブを回して部屋から出て行った。急ぎ足で錆びたボロボロの階段を降りていくフルカンの足音が部屋に響いた。
フルカンとダリヤがどこでいつ知り合ったのかは結局聞き出せなかったが、それでも長い付き合いだとダリヤの名前を呼ぶフルカンの声色から想像することは難しくなかったし、それよりもフルカンがマルコの娘であるダリヤと出会ったのはそもそも偶然なのだろうか?
『ダリヤから許可をもらってる』
ウムトが記事を書いていることも知っているような言い方だった。そう考えるなら、あの日病院の中庭で声を掛けてきたのはウムトを見つけたからだったのかもしれない。病院の入り口なんて、少し歩けば分かるはずだし、今思えば、少し不自然な気もしなくもなかった。
それにユルマズとメルべが『名のないカフェ』で何を話していたのか何一つ教えてくれなかったし、そもそもフルカンにそんなことを期待していたのが間違いかもしれない。




